遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

続報: 中国炭鉱でのガス爆発事故 −−− また、何故中国で頻発しているのか?

偏見やら中国への憎悪を煽る意図やら現体制への不満もあってか、 『アカの政府は人民の命など何とも思っていないから頻発して当たり前だ』、 との言い分が中国国内外で多い様です。 でも本当にそうでしょうか? このブログでは 『アカではない民主政府』 による国民・他国民に対する暴力行為を散々採り上げていますから、ここでは 【石炭】 に私なりに焦点を当ててみます。なおいつも通り、情報源はネットで比較的容易にアクセス可のものに限ります。お手軽だなぁとの後ろめたさは少しありますが、リキ入れて取材なんて始めると論文になってしまいますし、大体そんな時間をとれるほど生活に余裕がありませんからご勘弁;



【情報源】

 ★ 石炭 - Wikipedia

 ★ 炭鉱 - Wikipedia

 ★ 世界と日本の石炭事情(PDF)
   日本のお役人作成、秀逸。

 ★ エネルギー経済を支える石炭(PDF)
   JCOAL 財団法人 石炭エネルギーセンター 作成

 ★ 世界の石炭可採埋蔵量(PDF)

 ★ 5.国別石炭事情 / 5.1.中国
   【Vol1_No3】ワールド・コール・レポート JCOAL 財団法人 石炭エネルギーセンター

 ★ DJUSCL Historical Prices Dow Jones U.S. Coal Index Stock - Yahoo! Finance
   読み方はよくわかりませんが、趨勢を見ようかと。

 中国で深刻化する電力不足、石炭価格上昇で構造問題に発展
   2008年7月29日, asahi.com



で、作成したちゃちなExcelは  石炭.xls 直


ウィキペディアによる石炭関連データ

  


この10年間の石炭価格 (DJUSCL) ・取引量推移

  


ぱっと気付いたことを幾つか順不同で挙げますと;


石炭なんて過去の産物だろうと思ったら大間違い。豪州の露天掘りなど採掘条件の良い海外鉱山で機械化採炭された安価な海外炭に切替わり日本の炭鉱は皆閉山、現在稼働しているのは 釧路コールマイン 社の運営する 釧路炭田 1箇所のみですが、 製鉄や蒸気ボイラー用燃料、セメント工業の燃料には欠かせないため、日本は輸入による消費量で世界第4位! 昔石炭は 「黒いダイヤ」 と呼ばれていたのを鮮明に覚えていますが、今でも世界的には非常に重要なエネルギー源なのですね。


他の化石燃料である石油や天然ガスに比べて燃焼した際の二酸化炭素排出量が多いなどデメリットはあるものの、石炭は150年以上の埋蔵量があるそうです。また価格も石油と比べれば安定しており、有事の場合に自給可能な唯一の燃料、との観方もあります。 (でも日本は今更自給出来るのだろうか?)


一方中国では、埋蔵量はアメリカの約半分ですが全世界の生産量の約3割を産出して世界一、また1次エネルギーの7割を石炭に依存、消費国としても世界一。石炭は特に発電の要であり、石炭価格の上昇傾向は、インフレ・社会不安を抑えるため電力の価格が統制されている状況下電力会社の採算を悪化させるし、石炭の価格が統制されているなら石炭会社の投資意欲をそぐと云う、構造的な問題を抱えている様です。


ところが中国は地質条件が複雑で、深度は炭田毎に異なるものの最深部が1,500mに達するところがあるなど深いため、坑内採掘が95%を占めるとのこと。約16,000坑ある中国の炭鉱の9割は中小炭鉱と言われており、石炭企業上位100社 (その従業員数は計314万人) でも生産量全体の半分以下を占めるに過ぎないそうです。そんな中、小規模で設備管理の行き届かない鉱山を閉鎖することで安全性は高まるものの、需要に追い付かない供給・物流の問題が残るみたい。なお中国では、90年代以降経済の発展と共にエネルギー需要が逼迫し、小規模な炭鉱開発が無数に行われるようになったそうです。政府は法令を整え安全対策などの充実を図るものの、貧弱な施設で操業する中・小企業及び無届け業者が非常に多いため大事故の発生が絶えず、また無届け業者は事故が発生すると救助を行う前に逃げ出すとのこと。



−−−して見ると、今回の事故と云うか事件の根本原因は、急激な経済成長にインフラが追い付いていないことに思えます。勿論違法操業であろうが自国民が犠牲となっていますから、 『アカ』 であろうが何色であろうが政府は管理責任から逃れられません。 何を言おうと 「自由」 ですが、でも日本にそれを責める資格はあるのでしょうかね? 経済成長の過程で、環境汚染による公害病など日本だって多くの国民が犠牲となりましたね? 原爆同様、今でも苦しんでおられる方がいらっしゃる筈です。 炭鉱事故にしたって、1963年三池炭鉱で死者・行方不明者458人を出すと云う不名誉な記録をはじめとして、多くの殉職者を出した筈です。日本にとっては 「いつか来た道」 です。俺もヒドイ目にあったのだからお前もあえ、ざまあ見ろ、と言うのか、こうすればいいよ、と言うのか。残念ながら、今の日本は前者ですね。


観方を変えれば、今回の事故に関して日本に出来ることは多い筈。過去炭鉱を経営していた頃のノウハウが蓄積されている筈だし、その頃のベテランだってまだ動ける (失礼!) 筈。安全管理やそれを実現させるための工程の創り込みなど、日本の得意分野。 また、ビジネスチャンスとも云えませんか? あんな危ない敵国にとんでもない、と云うなら別ですが、現在国内で唯一稼働している上掲釧路炭田を運営する釧路コールマイン社 (釧路コールマイン株式会社) では石炭技術の継承も目指している様ですし。立派な資源外交も展開出来ますよね。 (そういや某国の圧力に依り、最近某アブラ会社がイランから撤退を余儀なくされましたよね? 宗主国様のお申し付けとは云え、日本の資源戦略上問題無いのかしら?)


最後にニュースを2つ;



【中国】炭鉱幹部は坑内に行け…政府命令は「危険だから」実行困難
  サーチナ 7月23日(金)11時8分配信

そんな危険な場所で毎日働いている人がいるのに、呆れてしまう。でもこの手合いも、アメリカを筆頭に世界中にいますよ。ただ、中国の場合それがケタはずれに多いのかも。


中国炭鉱でガス爆発、少なくとも20人死亡
  読売新聞 10月16日(土)14時15分配信

別の坑内事故で、政府が情報操作 (犠牲者数を少なく発表) しているのではないか、と騒がれている様子。これも世界中で行われていますが、正直がイチバン。事故そのものより、嘘をついてバレることで問題が更に大きくなるのは世界共通の事象。



閉じ込められている方々には助かって欲しい。でもチリのケースは、色々な意味で真の奇跡としか言い様がありません。やはり炭鉱・鉱山・地中での事故は、起こってしまうと人的被害は避けられない。従って発生防止および発生時の被害の最小化がキーですね。経済効率とどう折り合いを付けるか、どの国にとってもアタマの痛い問題である筈。人命優先に決まってるだろう、馬鹿野郎、と皆思う筈ですが、実際には−−−