被爆国から初めて事務局長を迎えた国際原子力機関: IAEA
日本の核軍縮決議案が国連総会で採択された、と云うニュースと同時に、日本人が事務局長に就任したIAEA提案をイランが拒否したニュースも流れています;
- http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091204-00000004-indonews-int
日本の核軍縮決議案、国連総会で採択:インドは引き続き反対
12月4日8時0分配信 インド新聞
−−−賛成171、反対2(インド、北朝鮮)、棄権8(中国、フランス、イラン、イスラエル、ミャンマー、パキスタン、キューバ、ブータン) (中略)昨年 賛成173、反対4(米国、インド、北朝鮮、イスラエル)、棄権6(中国、イラン、ミャンマー、パキスタン、キューバ、ブータン) (以下略)
※ 変化は、米国(反対⇒賛成)、イスラエル(反対⇒棄権)、フランス(賛成⇒棄権)。
- http://mainichi.jp/select/science/news/20091203k0000m030132000c.html
イラン:IAEA提案、大統領が拒否 核交渉白紙に
毎日新聞 2009年12月2日 23時43分(最終更新 12月3日 0時46分)
- http://mainichi.jp/select/world/asia/news/20091202k0000m030107000c.html
IAEA:天野体制、嵐の船出 待ち受ける難問
毎日新聞 2009年12月1日 22時44分(最終更新 12月2日 0時08分)
−−− 被爆国から初めて事務局長に就任した天野氏は「核不拡散、核セキュリティー(核防護)、エネルギー危機など、地球規模の課題に取り組む。何より中立で信頼される事務局長を目指したい」とも語った。
オバマ米政権の登場で「核兵器なき世界」への期待が高まるなか、退任したエルバラダイ前事務局長が「国際社会の安全保障に特別な役割を果たす機関になった」と誇る通り、IAEAの役割はますます大きくなっている。世界的なエネルギー危機を前に、原子力エネルギーへの回帰は顕著で、平和利用の促進も重要だ。 (以下略)
- http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20091201k0000m030076000c.html
イラン:核施設増設計画を発表…IAEA決議や米欧に不満
毎日新聞 2009年11月30日 20時50分(最終更新 12月1日 0時03分)
−−−決議が核開発自体の後退を求めたため、ラリジャニ国会議長は30日、「NPTの加盟国であっても、脱退しても(得られるものに)違いはない」と述べた。 (以下略)
核拡散防止条約: Nuclear Non-Proliferation Treaty 略称:NPT (ウィキペディア) によると核兵器保有国であるインドとパキスタンは、条約が制定時の核兵器保有5か国にのみ核兵器保有の特権を認め、それ以外の国には保有を禁止する差別条約であるとの考えで未加盟であり、核兵器を保有していると疑われているイスラエルも未加盟である(なおイスラエル政府は核兵器の保有を肯定も否定もせず、疑惑への指摘に沈黙を続けている)。DPRKは加盟国(特にアメリカ)と国際原子力機関(IAEA)からの核兵器開発疑惑の指摘と査察要求に反発して1993年3月12日に脱退した事情があり、外務省:わかる!国際情勢>Vol.42 核兵器のない世界へ によると核の“憲法”とも位置づけられる核兵器不拡散条約(NPT)から更にイランが脱退するとしたら大変な事態の筈;
出典: 外務省:わかる!国際情勢>Vol.12 IAEA(国際原子力機関)〜核不拡散と原子力の平和的利用のために ※ 2008年10月29日最終更新の資料
一方日本政府が擁立した天野之弥(あまのゆきや)がその事務局長として12月1日就任した 国際原子力機関:International Atomic Energy Agency 略称IAEA (ウィキペディア) は、上掲外務省資料によると;
「IAEAは核の憲法たるNPTの核不拡散体制にとって不可欠な存在」 とのことですが、先日も紹介した通り、新事務局長の手腕は大変疑問。外務省:国際原子力機関(IAEA)の概要 ではキレイごとが並べてあるが実態は、 国際原子力機関(IAEA)概要 で確認出来る通り通常予算・技術協力基金共に最大の分担をしているアメリカのゴリ押しが当然の様に通る組織ですから、少なくとも今まで被爆国として何ら実効性のある行動をして来なかった (=口だけ。実際やってることは加爆国の言いなりであることは世界中が認識済み) お役人が対抗出来るか?と云うこと。
NPTの主旨に賛同して1968年に調印した最初の62カ国に含まれその義務を果たしてきた加盟国イランがアメリカの言いがかりによって脱退し、核兵器保有疑惑に頬かむりを続ける未加盟国イスラエルにはアメリカの意向により何ら要求しない仕組みはどう考えてもおかしい。天敵?イスラエルに対して相対的に不利な状況に追い込まれかねない要求なんて、呑める訳ないでしょうが。本当にNPTが 「核の憲法」 だと考えるなら、未加盟国を加盟させることは勿論、加盟国を脱退させてはならないでしょ? それとも憲法改正するか。サラリーマン的な 「調整」 能力がどこまで通用するのか見もの。中立で信頼されるのは大事なことですが、その評価は結果をもってしかなされませんから。
またIAEAの活動および上掲報道の中で気になるもうひとつの点は、「世界的なエネルギー危機を前に、原子力エネルギーへの回帰は顕著で、平和利用の促進も重要だ」 との認識があるが、私の理解では、原子力発電所って世界中で、大変キケンでやっかいなお荷物となってやしないか? と云うこと。2006年の実績で8割もの電気エネルギーを原子炉から得ているフランスではどうなのだろう? 現代社会は電気に支えられていますし、その需要も多分右肩上がりでしょう。電気が足りなくなって文句を言うのは他ならぬ我々自身ですから、これ以上原子力発電所を増やさないためには需要を抑える必要があるし、新興国での需要対応に関しては代替えを提供する必要がありますね。原子力発電 (ウィキペディア) に詳細な説明や論点がまとめられていますが、被爆国 (核爆弾に限らないのであれば原発事故も含む) イコール放射性物質が人体と環境に与える影響を身をもって体験した国、と云うことですから、その観点から考えることも意義があると思います。情緒的議論? とんでもない、簡単に言うなら、自分は (あるいは、あなたは) 原発の隣に住めますか? ってことに尽きると思います。それだけの安全を確保出来、場所も確保出来て環境にもヤサしくかつペイするなら結構なおハナシですよ。