遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

自動車会社が鉄道を潰した?

昔仕事で 「自動車王国」 アメリカ (加州) に出張した際、 『アメリカでは自動車会社が鉄道を潰してしまった』 と云うハナシを耳にしました。アムトラックやNYの地下鉄など有名な鉄道・地下鉄はあるものの、日常生活は何故こんなにクルマばかりなのか、日本で乗り慣れた近〜中距離鉄道網があれば便利なのに何故? と、誰かに訊ねた時のことであったと記憶します。(他にアメリカ国内のクルマ以外の交通に関して印象に残っているのは、アメリカの貨物列車がやたらと長いことと、例の9−11以前ですが国内線の飛行機に搭乗する際の手軽さでした。山手線の電車に駆け込むノリでしたね。)


そのハナシは尤もらしいこともありあまり深く考えずにおりましたが、最近アメリカ国内での鉄道に関する報道が目に付く様になって思い出した次第;

  • http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091106-00000067-san-bus_all
    大富豪、大ばくち 米鉄道2位に“賭け金”2.4兆円…ルーレットどう回る?
    11月6日7時56分配信 産経新聞


    【ワシントン=渡辺浩生】米国の著名投資家、ウォーレン・バフェット氏(79)が率いる投資会社バークシャー・ハサウェイが4日までに、米大手鉄道会社バーリントン・ノーザン・サンタフェの買収を発表した。投資額は266億ドル(約2兆4千億円)。バフェット氏にとって人生最大の株式投資だ。米経済の回復や石油価格の上昇を追い風に、車社会の米国で衰退を続けた鉄道産業が再び成長軌道に乗る? その投資判断に多くの関心が集まっている。 (中略)


     経済活動が活発化すれば陸上輸送の需要は増す。石油価格の上昇や、地球温暖化対策の進展で、輸送の主役はトラックから鉄道へ回帰する可能性もある。しかも、バフェット氏が支持するオバマ大統領は4月、環境対策と雇用創出を兼ねて、米本土の主要都市を結ぶ高速鉄道整備に巨額の予算を投じる計画を発表。その追い風も無視できない。 (以下略)


で、自動車会社がその利益のために本当に鉄道を 「潰した」 事実があるのかを調べて見ると、 「陰謀説」 レベルに留まる様です;


当時サービスの低下に対応が出来なかった路面電車がクルマに駆逐されてしまった、と云うのが実際に起こったことであり、クルマ会社の政策はクルマの利便性をアピールする以上のものでは無かった、と考えてよさそうです。


個人の利便性よりも環境に焦点が当たっている今、単体では電車のほうがクルマより 「環境に優し」 く見えますが、実際には発電を考えなければなりません。風力にせよ火力にせよ原子力にせよ環境負荷の問題はゼロではないので。また電車、と云うより鉄道や地下鉄と云うシステムは、安全な運行のためにはハードもソフトも非常に広範囲で複雑なものとなる筈ですから、新たに導入するためには大きな資本が必要となります。単体のクルマも電車より 「環境に優し」 いものが開発され市場に投入されておりますから、必ずしも環境面でクルマが劣るとは言い切れません。


しかし私個人的には、公共交通網の整備された首都圏内に住んでおりますから、環境負荷が低減されかつ便利ではあってもまだ 「技術的には不完全な機械」 と云わざるを得ないクルマそのものを否定する、 「脱クルマ」 派です。(決して環境に優しく無く、無秩序な自転車はそれ以上に否定しますけど。)