遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

核廃絶を最終的に目指す核削減と云うが−−−

いっぺんに世界中の核兵器を廃棄するのは理想ではあっても現実的では無い、従って拡散を防ぎながら核保有国が削減して行こう、と云うのは非常に聞こえのいいコトバです。しかし 「現実的ではない」 理由と事情を考えると、欺瞞以外何物でもない。世界中に存在する何万発 (色々な統計があります。例えば http://www.fas.org/programs/ssp/nukes/nuclearweapons/nukestatus.html) かを安全に処理・解体するのに時間がかかるからと云うこともあるでしょうが、そんなことより実際には自国の軍事優位性を保ちたいからだの、核抑止力 (これまた無意味なコトバ) が必要だからだの、およそ 「核廃絶」 を最終の絶対目標にするのなら有り得ない事情ばかり。挙句の果てには、核抑止力保持のためには旧い在庫を 「信頼出来る」 核兵器と入れ替える必要があるから、開発も生産も必要と云う屁理屈までまかり通る。


「核抑止力」 とか 「核の傘」 とは何か? 核兵器をちらつかせながら何かを抑え込むと云うことですよね? その 「何か」 が何であるのかも大問題ですがそれは脇に置いて、ちらつかせる核兵器が抑止力を持つためには、その殺傷能力が絶大でありかつ使用の可能性があることが必要。(使用実績まであればなお可?) 水鉄砲やモデルガンとわかっていて手を上げる間抜けな 「悪者」 はいないし、例えば警察官の携行する銃の場合、警官はそう簡単に発砲出来ないことは皆知っていますが、いざとなれば撃たれて痛い思いをしたり死ぬことも認識しているから抑止力になるのでしょう。つまり「核抑止力」 とは、核兵器の使用を前提にしていることになる。 「核の無い世界」 を目指して核の使用を認めるって、どこか論理が破たんしていませんか? イランがそうだとは思えませんが、非保有国の中には自分達の 「国防」 のための核兵器開発を推進する格好の口実になり兼ねない。何故 「核兵器」 を廃絶したいのか、出発点から間違っているのでしょう。

  • http://mainichi.jp/select/world/news/20100204k0000e030042000c.html
    毎日新聞 2010年2月4日 11時51分(最終更新 2月4日 12時57分)


    −−−米国のキッシンジャー、シュルツ両元国務長官、ペリー元国防長官、ナン元上院議員のいわゆる「4賢人」 (馬鹿馬鹿しいので中略)


     会談の終了後、シュルツ元長官は報道陣に「私たちは神々の火を盗んでしまった。私たちを焼き尽くす前にその火を制御できるかどうかだ」と問いかけた。一方、ワイツゼッカー元大統領は「核廃絶のためには徐々に核兵器を削減していくことが必要だ」と強調した。米の4人は米国の核抑止力保持が当面必要だと主張しており、この立場に一定の理解を示したものとみられる。
  • White House to boost nuclear weapons funding | CounterVortex
    Submitted by WW4 Report on Tue, 02/02/2010 - 19:34.


    −−−The new White House budget request seeks more than $7 billion for the Energy Department's National Nuclear Security Administration (NNSA), an increase of $624 million from FY 2010.


    NNSA administrator Thomas D'Agostino defended the request, saying the US needs the best nuclear weapons facilities and engineers as it moves toward eventual disarmament. "This budget is implementing the president's nuclear vision," he said. The new funding is needed as the US transitions "from a Cold War nuclear weapons complex...into a 21st century nuclear security enterprise."  (以下略)
  • Obama Seeks Massive Increase in Nuke Spending - News From Antiwar.com
    by Jason Ditz, January 30, 2010, Antiwar.com


    −−−Though this funding will not actually be used to produce additional nuclear weapons, opponents caution that it will give the administration, and future administrations, the capacity to greatly increase the number of warheads in America’s arsenal, at a time when the administration claims to be trying to complete comprehensive warhead reduction agreements. (以下略)
  • http://mainichi.jp/select/world/america/news/20100122k0000m030062000c.html
    毎日新聞 2010年1月21日 20時07分(最終更新 1月22日 0時07分)


     【ワシントン草野和彦】米国のシュルツ、キッシンジャー両元国務長官、ペリー元国防長官、ナン元上院議員の4人が連名で、20日付米紙ウォールストリート・ジャーナルに「米国の核抑止力の守り方」と題する論文を寄稿した。4人は核兵器廃絶を求める論文を07、08年に同紙に発表、「4賢人」と呼ばれオバマ大統領の核政策に強い影響を与えたとされる。今回は「核軍縮が進むに従い、米国の核兵器の高い信頼性を維持することが重要」と強調する現実的な内容になっている。 (以下略)


    この頭でっかちの 「4賢人」 の発表した一連の論文は以下の通り;
  • http://www.jiji.com/jc/zc?k=201001/2010010400599
    (2010/01/04-15:45) 時事ドットコム


     【ワシントン時事】米国防総省は今月末から2月にかけて、4年ごとの国防計画見直し(QDR)と、今後5〜10年の核政策の指針となる「核戦略体制の見直し」(NPR)をまとめ、議会に提出する。オバマ大統領の安全保障と核政策の中核を担うとともに、在日米軍再編や米国の核の傘による抑止力など、日本の安全保障にも大きな影響を与える。いずれも同盟重視の姿勢が盛り込まれる見通しだ。 (中略)


     一方、核戦略体制見直しは8年ぶり。オバマ大統領が目指す「核兵器なき世界」の実現と同盟国を守る抑止力維持のバランスが焦点となる。核戦力への依存を減らす一方で、老朽化した核弾頭の信頼性の維持が課題だ。


     ゲーツ国防長官は核戦力の中枢を担う潜水艦発射弾道ミサイルの代替核弾頭開発を主張しているが、民主党を中心に核軍縮に逆行するとの声も強い。ホワイトハウスが最終的にNPRに盛り込むか判断が注目される。


殺傷能力が絶大だとか、環境破壊の度合いが大きとかその影響が長年続くとか、ヒトのDNAを傷付ける等と云うなら核兵器だけに限らず化学兵器生物兵器だって同じ。「非人道的」 と云うなら、手段である兵器が何であるかを問わず戦争そのものが非人道的です。ですから究極的に廃絶すべきなのは戦争でしょう、人道的では有り得ない兵器はその手段に過ぎませんから。


以下、不謹慎かも知れませんが面白い記事を紹介。ヒロシマナガサキの名前は世界中で知られていますが、その被害の実態は、日本が加爆国従属を長年続けた結果と思うがあまり認識されていません。今回のハイチ大地震のエネルギーがヒロシマに投下された原爆38個分相当であることを利用した啓蒙記事です;


http://www.alternet.org/world/145462/imagine_haiti_with_radiation_sickness_and_burns%3A_why_we_must_disarm
January 27, 2010 AlterNet / By Linda Gunter


細かいことを言えば、 リトルボーイ - Wikipedia が38個もハイチに投下されたら、ハイチどころか隣国ドミニカ共和国キューバ、ジャマイカなど周辺まで根こそぎ消滅してしまうヨ、とか、核兵器被爆) の恐ろしさは人的被害がその場だけではなく何十年も続くところにあることを理解していないな、などあるのでしょうが、時宜を得た着眼点はおもしろいと思います。