遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

チョムスキー教授の記事 「戦争、平和、そしてオバマのノーベル賞受賞」 その2: イランのこと、アメリカの戦争のこと

先日紹介の 翻訳:チョムスキー091105 「戦争、平和、そしてオバマのノーベル賞受賞」 公開091118 (PDF) 、原文 War, Peace, and Obama's Nobel 記事中、およそノーベル平和賞の賛美する 「平和」 とは程遠いオバマ政権の欺瞞をチョムスキー教授らしい観点から批判しており、特にイランを取り巻く情勢に相当の力点を置いています;

  • 「イランの二枚舌」に熱狂している最中に、IAEAは、イスラエルが核不拡散条約に加盟し、核施設の査察を認めるよう要求する決議を可決した。(中略) IAEAに詳しい関係者によると、米国はイスラエルの決議拒否を支持する旨、イスラエルに確約した。つまりイスラエル核兵器備蓄の国際査察を許さないというイスラエルの姿勢に暗黙の了解を与えた (中略)


    7月の軍事演習で、イスラエルはドルフィン級の潜水艦を送り出した。核弾頭ミサイルが搭載可能で、スエズ運河を通過し、紅海に入り、ときには軍艦に伴走され、イランを攻撃可能な地点まで航行した。米国副大統領ジョー・バイデンによれば、イスラエルにはそうする「国家主権」がある、というのである。 (中略)
  • インド・パキスタン両国は、核兵器計画を拡張しつつある。この二国は2度もあわや核戦争というところまで至ったことがある。この大惨事を引き起こしそうになった問題は未だに現存したままである。 (中略)
  • −−−オバマが平和への公約を鼓舞したとしてノーベル賞を与えられたその前日に、ペンタゴンは兵器庫の中の最も破壊的な非核兵器の配備を加速するぞ、と発表していた。それはB-2とB-52のステルス爆撃機に搭載する13トン爆弾のことであり、1万ポンドの鉄筋コンクリートの防壁で保護され、地下深くに隠された地下施設(バンカー)ですら破壊するよう設計されたものだった。

    このバンカー・バスターが、イランを攻撃対象として配備された可能性があることは、誰でも知っていることだ。

    これらの「超強力貫通兵器」計画は、ブッシュ政権時代に始まったものだが、次第に先細りとなっていた。ところが、オバマは就任後に再び急速な開発要求をしたのだった。 (中略)
  • −−−満場一致で通過した決議1887号は、武力による脅威の終焉とすべての国がNPT核不拡散条約に加盟することを求めている。だが、これはイランがずっと以前から実行してきていることだった。他方、インド、イスラエルパキスタンはNPTに署名せず、しかもそのすべてが米支援の下で、NPTに違反して核兵器開発をしてきた国であった。 (中略)

    しかもイランは数百年間、他国を侵略したことがない。これまでに他国を侵略してきた米国やイスラエルやインド(カシミールを残虐に占領している)とは異なるのだ。 (中略)
  • いつものことながら、沈黙で覆い隠されていることこそ、新聞第一面を飾るに相応しい。自由を重んじ、世界の運命に関わってきた社会[米国]ではなおさらのことである。 (中略)
  • もちろんノーベル平和賞は、最終的な核戦争の脅威を減らすことだけに関心があるわけではない。むしろ、戦争一般の脅威を、また戦争準備の脅威を減らしたいのである。この点に関していえば、オバマを選んだのは全くの驚きであった。 特にイランにとっては驚きだった。イランは米国占領軍に取り囲まれているだから。

    たとえば、イランと国境を接した隣のアフガニスタンパキスタンで、オバマはブッシュの戦争をエスカレートさせてきた。それどころか、それをさらに継続させ、先鋭化させる可能性がある。

    さらにオバマは、中東で大規模な駐留軍を長期的に持すると明言している。世界の他の大使館と比べて桁外れに巨大な巨大都市にも匹敵する大使館(その名も「バグダッド大使館」)に、それは如実に現れている。 (中略)
  • 無党派の予算及び安全保障に関する監視委員は行政府ビルにおいて次のように報告した。「政府は2010年度の国防総省予算5340億ドルを要求し、今後数年間もそのような高水準の予算を維持したいと明言している。そんなことをすれば、第2次世界大戦以来の、どの大統領も任期一期で使ったことがないほど多くの予算を現なま金で使うことになる。しかもそれは、政府が要求しているイラクアフガニスタンの戦争に要求している追加予算1300億ドルを含んでいない額だ。将来もっと戦費が嵩むこともあろう」と。 (以下略)


日本での主な報道もアメリカ同様、『善の代表アメリカ vs 悪の代表イラン』 の構図となっています。ここまで継続して徹底した情報操作によって西側に堅固な 「バカの壁」 を造ったと云う意味では、アメリカは偉大な国です。実際には逆ですが、『王様は裸だぞ!!』 の声は無視されていますから;

  • 掲載終了
    IAEA報告書、イランが核兵器製造情報を入手と 米紙報道
    10月5日16時39分配信 CNN.co.jp


教授が 『テヘラン・タイムズ』 紙によるインタビューを受けた際の2009年4月15日付け同紙掲載の記事も、寺島さんが訳されています。


冒頭紹介のチョムスキー教授記事中でも紹介されている膨大な戦費については、以下報道されています。なおこの戦争を支える軍事技術の研究開発 (シミュレーションでは多分スパコンが大活躍している筈) にかかるカネが戦費としてカウントされているかは不明;

http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2009112500672
アフガン増派にらみ戦争税案=国民全員が負担を−米有力議員
。(2009/11/25-15:58) 時事ドットコム


−−− 議会調査局によると、2001年以降の対テロ戦費の累計は10会計年度(09年10月〜10年9月)の予算要求分を含めると、約1兆800億ドル(約95兆円)。うち約7500億ドル(約66兆円)をイラク戦費が、約3000億ドル(約26兆円)をアフガン戦費が占めている。 (以下略)


これだけのカネを自国の国益のためだけの戦争と殺戮と環境破壊に使う Obama malo が、世界のリーダー?? 「ノーベル賞軍団」って、一体−−−


イラク関連の記事は ----英語を通して日本から「イラク」を見る。 あたりが充実していると思います。