遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

翻訳家 山岡朋子さん その6

http://shuppan.sunflare.com/essays/yamaoka_01.htm

上記は、WEBマガジン出版翻訳 エッセー:翻訳の現場から−『フリア・アルバレスと闇の時代』(多分08年2月掲載)。

カリブ海の小国ドミニカ共和国独裁政権下粛清の犠牲となった3姉妹を、唯一アメリカに亡命して生き延びられた三女フリアが小説として描いた ”In the Time of the Butterflies”(1994) を中心とした、中南米の闇の歴史についての考察です。

このエッセイの中で、『 --- アルゼンチンで秘密警察に連れ去られた〝行方不明者〟は2万人とも3万人とも言われている。当時の様子については、アルゼンチンの作家エルサ・オソリオが『ルス、闇を照らす者』(拙訳、ソニーマガジンズにて詳しく描き』と、アルゼンチンのケースの紹介もなされています。

山岡朋子さんの素晴らしいところは、メキシコにお住まいだった頃関心を持たれる様になった中南米の女性およびその社会運動について能動的に更に掘り下げ、発展させようとなさっているところ。この熱意こそが翻訳者に求められるプラスαのひとつですよね。で、その熱意が、『ルス、闇を照らす者』の翻訳の4年前に横山朋子さん名で共訳で参加されたと思われる『ペリー艦隊日本遠征記(全3巻)、1997年栄光教育文化研究所刊』の2・3巻の翻訳をアレンジされたオフィス宮崎をして山岡朋子さんに『ルス、闇を照らす者』の翻訳を強く勧めさせたのでしょう。

この重いテーマを扱った作品の日本への紹介が山岡朋子さんのライフワークのひとつになるかどうかはわかりませんが、大変価値のあることと思います。

  • 北に帝国をかかえる中南米には現代社会の歪の全てがあります。レゲエやサルサや明るいラテン、だけではないのです。日本であまり知られていないのが不思議。(ハナシがそれましたが)


一方、先日紹介の別のエッセイ

http://shuppan.sunflare.com/essays/yamaoka_2.htm 『新訳ブームに思う』

の中で、山岡朋子さんはこんなことも書かれています;

  • 『 --- 訳の質について、日本語の質について、みなの意識が高まっていったらと思う。他人の訳のあら探しをするのではなく、あくまでも、より良い翻訳を目指すという意味で。訳文のよしあしについては個人の好みが大きいのだが、良い訳は良いと認められるような状況になれば、翻訳者にも励みとなり、さらに精進を重ねていこうという気持ちになると思う。読み手にしても、せっかく本を買ったのに、訳がまずくて残念だったという思いはなるべく味わいたくない。』


実はこのブログを立ち上げた理由が全てここにあります。『良い訳は良いと認められるような状況』とは何か明確な基準が無いこと、『読み手にしても、せっかく本を買ったのに、訳がまずくて残念だったという思いはなるべく味わいたくない』という購読者からの観点が今まであまり無かったから。

では何故山岡朋子さんに特化しているのか?きちんと問題提起されているからです。(私の調査不足で他にもいらっしゃるかも知れませんが)

コトバは生きています。翻訳は需要があるからこそ存在します。その意味で、流動する市場の中での品質やサービスはいかにあるべきか?を考えることも必要ですよね。