翻訳家 山岡朋子さん その30 『フリア・アルバレスと闇の時代』 その1: ドミニカ共和国の場合
ドミニカ共和国 (同じカリブ海にあるドミニカ国と区別するため、わざわざ共和国を付して呼ばれることが多い) は、野球と音楽のメレンゲそして葉巻 (いや、これは私を含む少数派?) 以外では日本ではあまり知られていないかも。
コロンブスが1492年12月6日に上陸し、スペイン初の新大陸植民地となったヒスパニオラ島の東側2/3を統治(残り西側1/3はハイチ)する国ですが、
先住民は皆殺しにされ、その後アフリカから黒人奴隷が連れてこられこき使われた。植民地時代はサント・ドミンゴ、その後スペイン人ハイチ共和国など様々な名前の変遷を経て、1844年のハイチからの独立後、最終的に1865年スペインから独立したと云う、非常に複雑な経緯があります。(余談ですが、欧州の旧宗主国はこの責任をどう取るのですかね?)
独立後も、1882年から99年に暗殺されるまで独裁政治を行った黒人大統領ウリセス・ウーローの失政による借金返済のためアメリカに主権を握られ、また第一次大戦時1916年から1924年までは米軍の支配下強力で統一された警察や国軍を作ることで、後の軍事独裁のお膳立てが整った訳で。隣国ハイチも同様。
その当然の結果として、1930年2月にクーデターを起こしてから1961年に27発の銃弾を撃ち込まれて暗殺されるまでの31年間に渡り、ラファエル・トルヒージョ将軍が長期独裁体制をしき、半端ではない虐殺行為さえ行うことが出来た、と私は考えています。ラテン・アメリカでも稀に見る安定し ? かつ徹底した独裁者ですが、反共の砦である 『帝国』 の直接・間接のバックアップ無しには成り立たなかった筈。これはアルゼンチンや他中南米諸国の類似ケース全てに云えることですが。
写真含めここまでの出典: ウィキペディア
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%9F%E3%83%8B%E3%82%AB%E5%85%B1%E5%92%8C%E5%9B%BD
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%88%E3%83%AB%E3%83%92%E3%83%BC%E3%83%A8
そこで、先日紹介した以下山岡朋子さんエッセイへ繋がります;
http://shuppan.sunflare.com/essays/yamaoka_01.htm
WEBマガジン出版翻訳 エッセー:翻訳の現場から−『フリア・アルバレスと闇の時代』
作者フリア・アルバレスさんは1950年NY市生まれではあるものの、生後3ヶ月でご家族と共にドミニカ共和国へ引っ越され、父親が参加した上記トルヒージョ政権転覆の企てが失敗しかろうじて国外脱出する1960年までの10年を過ごされます。馴染んだ祖国を捨て合衆国へ亡命して多感な少女時代を過ごすこととなった訳で、この時のことは、1991年 "How the Garcia Girls Lost Their Accents" *1 の小説に描かれている様ですね。
例によって、YouTube 紹介しておきます。(書籍のプロモーション・ビデオ?)
題名 = how the garcia girls lost their accents promo vid 2
(何故かビデオの1番が見当たりません−−−)
次回は、山岡朋子さんのエッセイ中で紹介されている小説およびそのモデルとなったミラバル姉妹のことを。
しかし合衆国と中南米の関係って、フクザツですね。仕事のため、あるいは政治的な理由で合衆国に住んでおられるいわゆるヒスパニックの方々は、どんな気持ちで祖国を、また合衆国をご覧になっておられるのか?私は非常に興味があります。ちなみにフリアさんの国籍は、ドミニカ共和国−合衆国となっているみたい。
(以上、3月15日一部改)