遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

日本がまだ世界に誇れるもの: ものづくりの技術 (の根底にある考え方)

どうも違和感を覚える経済記事を紹介;

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091206-00000016-san-pol
【デフレの恐怖】(中)市場発 鳩山政権への警告 為替介入 試される覚悟
12月6日7時56分配信 産経新聞


 ■変動リスク

 「海外不進出宣言」を掲げたメーカーがある。 (中略)

−−−「不進出宣言を守りきれるか自問自答している」とつぶやいた。情勢の急激な変化の中、為替変動リスクを負い切れるのか再検討が必要になったのだ。 (中略)


 ■姿勢不透明

 日本経済の回復の足取りはシンガポールなどに比べて重い。日本総合研究所主任研究員の松村秀樹は「どちらも輸出依存型の経済構造なのに、日本だけが急激な円高を認めてしまった」と指摘する。 


 昨年の世界的な金融危機以降、各国政府は折に触れ、自国に好都合な通貨安を容認する姿勢を見せてきた。それに対して日本だけは為替介入に否定的な姿勢を示し、格好の円買い材料を与えてしまっていた。


 行き過ぎた円高は、日本企業が保有する海外の株式や債券の運用利益を減少させる。輸出企業の業績悪化懸念から国内株式も影響を受ける。財務相藤井裕久も急ピッチで進む円高に「無秩序な動きには適切に対応を取る」と、為替介入の可能性を示唆せざるを得なかった。(以下略)

為替は相対的な問題ではありますが、このところの傾向は円高と云うよりドル安。ドル以外の通貨との関係では円高では無いかも。それらの原因は必ずしもファンダメンタルズ (経済の基礎的な条件) だけではなく投機的な動きにもある筈ですから為替を人為的な操作によって 「是正」 することのリスクもあるし、メーカーは100%進出先で調達出来るのでもない限り、海外に進出することで為替リスクを回避出来るとは限らない。「市場発」 とはいいますが、市場の声は天の声とは云えない状況もある。


xxxx研究所やらxxx銀行のアナリストなどのコメントが引き合いに出されますが、彼らは常にその所属する組織の利益になる方向しか示さない。短期的な景気刺激レベルのハナシであれば何でもアリかも知れませんが、「試される覚悟」 って何のことなのかいまひとつわかりません。「民主党さんの思うとおりにはさせないぜ」 と明言して憚らない親米保守のメディアらしい書き方なのでしょう。


短期的な政策や虚の経済 (と云うより金融経済) は別として、まだ日本が世界に誇れるのはものづくりかも知れません。実際にはそんな単純な動機ではありませんが、たとえ割安な労働力や物流だけ求めて調達・生産拠点を海外に移したとしても、コアとなる技術やそれを支える考え方は日本から持っていかざるを得ないことが多いのでは? 巨額の研究開発費を計上するメーカー (final assembler, 最終組み立て者) のブランドを支えるのは先見の明のあった創業者のこだわりであることが多いし、そのブランドを付した製品の総合品質を支えるのは、過酷なコストダウン要求や技術的な無理難題に応える数多くの協力メーカーさんの技術と職人魂でしょう。

  • http://www.wowkorea.jp/news/Korea/2009/1117/10064495.html
    日本「ものづくり」の原点を紹介、KOTRAが書籍発刊
    2009/11/17 9:31:11 入力
    Copyright 2009(C)YONHAPNEWS. All rights reserved.


    −−−KOTRAの韓定鉉(ハン・ジョンヒョン)日本事業団長は、高い技術力と職人魂で知られる日本の製造名家は、目先の利益追求より従業員と顧客、社会全体の利益を考える経営哲学から出発したと説明した。
  • http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091027-00000043-scn-cn
    感謝される年配の日本人技術者〜中国の製造業における多大な貢献
    10月27日15時12分配信 サーチナ


    誰も知らない中国調達の現実(83)−岩城真


     中国にある日系工場には多くの技術者の方が駐在されていると思う。しかし、最近は日系でなくとも日本向け、日系向けを手掛けるサプライヤーに日本人の技術者が駐在されているケースを多く見る。駐在と表現したが、実際は日本からの派遣でなく、現地企業と直接雇用契約を結び、根を下ろして仕事されている方も少なくない。日本からの派遣、現地雇用に限らず、比較的年配の方が多い。 (以下略)


金融無くして現代の経済は成り立ちませんが、少なくとも中期的に日本が貢献出来る、従ってその収入の源泉となり得るのは、それだけではありませんがものづくりの技術と思います。その技術を伝えられるのは書類や設計図だけではありません、職人さんそのものです。上掲最後の記事中気になるのは、その様な技術者に年配の方が多いこと。育てられた若い技術者は現場で、年配の方は指導で活躍と云う様な棲み分け? となっているなら良いのですが、技術者の退職と共に技術も無くなる、あるいは職業として魅力的では無いが故に若い技術者を育て様がないのなら大問題ですね。先細りどころではない、先が無い訳ですから。既にその兆候はあるみたいだし−−−


今でこそ世界中で知られた某大メーカーが、その昔銀行に育ててもらったことがあると聞きます。その銀行は今でも勿論ありますが、今そんなことは出来ないでしょう。マネーゲームにうつつを抜かし、「銀行は強盗、外資はハイエナ」 なんて呼ばれる有様ですから。為替レートをいじくって輸出の便宜を図ることがものづくり屋さんを助けることでしょうか?? あるいは投資の運用益を確保することが目的? 政治が関わるべき部分はもっと違ったところにあるのではありませんかね?