遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

翻訳家 山岡朋子さん その54  『ルス、闇を照らす者』 : コロンビア バージョン その3

本年5月25日付け 『翻訳家 山岡朋子さん その43  『ルス、闇を照らす者』 : コロンビア バージョン その2 』 で予告の通り、コロンビアの作家 Evelio José Rosero さん著の原題 "Los Ejércitos" をようやく入手しましたので早速読もうとしていたところへ以下ニュースが飛び込んで来ましたので、少しだけ考察を;


コロンビアと外交断絶の用意、ベネズエラ大統領が表明
8月26日18時42分配信 CNN.co.jp


現地サイト Agencia Bolivariana de Noticias から関連記事拾いますと;

Presidente Chávez
Acusaciones de expansionismo son el colmo del cinismo del Gobierno colombiano
Caracas, 26 Ago. ABN.-


Durante un encuentro con un grupo de intelectuales japoneses (誰か日本から訪問しているのですね) , el presidente Chávez indicó que estas acusaciones sólo tienen la intención de desviar la atención sobre el peligro que representa para Suramérica la instalación de bases militares estadounidenses en ese país.

Veinte bases militares estadounidenses buscarán aislar a Venezuela del mundo
Caracas, 17 Ago. ABN (Manuel Alexis Rodríguez).-


Un total de trece (13) bases militares estadounidenses, ubicadas estratégicamente en países aliados de Washington, rodean actualmente a Venezuela. Con el acuerdo en materia de “cooperación y asistencia técnica en defensa y seguridad”, que suscribirá en las próximas semanas Colombia con Estados Unidos, y que permitirá a soldados norteamericanos usar siete nuevas bases militares en Colombia, la cifra se incrementará a veinte (20).

Pueblo de Argentina rechaza instalación de bases militares de EEUU en Colombia
San Carlos de Bariloche, Argentina, 26 Ago. ABN (Carolina Pérez/enviada especial).-


El pueblo de Argentina rechaza de manera contundente la instalación de bases militares estadounidenses en Colombia, porque atentan contra la soberanía de los países de Suramérica.



自身が何度か暗殺されかけたチャベス大統領が、オバマになってからは多少控えている様ですがアメリカを公然と批判し、アメリカによる南米の主権侵害・内政干渉を警戒するのは当然のこと。過去この 「北の帝国」 がその 「裏庭 (なんと傲慢な呼び方か)」 であったカリブ・中南米でなかば公然と行った犯罪行為を忘れていませんからね;



コロンビアおよびラ米におけるUS基地所在
http://www.telesurtv.net/noticias/afondo/especiales/bases_militares_latinoamerica/
(なかなか凝ったページですよ。)


一方隣国コロンビアは、現大統領 Álvaro Uribe が極端な親米路線を突っ走っているため、過去のものとなった筈の人権侵害・蹂躙が正に現在進行中であることは様々なサイトで見る限り事実と判断せざるを得ません。山岡朋子さん (横山朋子さん名) 翻訳の 『ルス、闇を照らす者』 に描かれ、Nunca Mas と宣言され、いまだに行方不明者の捜索が続くおぞましい犯罪行為が、麻薬撲滅と云う茶番劇およびゲリラ対策と云う内政干渉の下行われています。蛇足ながら、のりピーのケースではからずも露見した様に薬物使用者に対して非常に寛容な日本も、いわばこの共同正犯;大きな、魅力的な 「市場」 を提供しているのですから。これは卵と鶏の関係ではありません。需要があるから供給があるのです。薬物使用の撲滅は、あくまでもアメリカや日本の国内問題です。従って、アメリカは麻薬撲滅の目的で軍をコロンビアに派遣しているので無いことは明白、と私は考えます。

http://www.jca.apc.org/~kmasuoka/places/colombia.html
益岡賢さんのページ − 場所別記事  コロンビア


時事分析(主にコロンビア・ジャーナルより) より抜粋します;


オバマ政権の対コロンビア政策(2009年7月30日)

      • コロンビア軍の残虐な人権記録を考えるならば、オバマ政権の対コロンビア政策はとりわけ大きな問題である。例えば最近、対ゲリラ作戦に参加していたとされる兵士達が超法規的処刑を1100件も行っていたことが明らかになっている。結局のところ、オバマ政権と民主党主導の議会による対コロンビア政策は、ブッシュ政権共和党時代からわずかにしか変わっていない。しかも、悲しいことに、そのわずかな変化は、軍事主義を強化する方向に向いているのである。


コロンビア政治囚へのインタビュー(2009年7月17日)

      • 特に、アレバロ・ウリベ政権にはファシズムの要素が多くあることです。ウリベ政府は反対派と貧しい人々を憎悪しています。本質的に寡頭制の政府で、上流階級と多国籍企業に奉仕する政権です。コロンビアの主権を放棄して米国に譲り渡し、コロンビアの資源も提供してしまいました。社会投資をせず、人道的な捕虜交換を拒否しました。和平プロセスに参加することも拒否しました。戦争政府であり、嘘つきの政府なのです。この政府は国際社会に向けて、コロンビアは民主的な国で、人権を尊重し、人々のニーズを満たす政策を採っていると宣伝していますが、現実は違うのです。この政府は、不正義に対して何十年にもわたり闘いを続けてきた社会運動に対して戦争を仕掛けている政府なのです。私たちを黙らせたがっています。私たちを殺したあとで、死者の記憶を侮辱するのです。公正で誰もが社会参加できるコロンビアを望む私たちを投獄する政府です。実際のところ、ウリベ政府に、民主主義を実現する力はありません。 *1


人権侵害に対するコロンビア政府の関与(2009年5月12日)

      • ほとんど毎週のように、人権侵害に対するコロンビア政府の関与が新たに暴露されている。この数週間の間に、次のようなことが伝えられている。コロンビア政府と軍の高官が右派準軍組織と共謀して、虐殺犠牲者の遺体を焼き払い、準軍組織に殺された人々の数を隠蔽しようとしたこと、コロンビア最大の準軍組織が2002年の大統領選挙でアレバロ・ウリベ大統領に資金を提供していたこと、軍の対ゲリラ戦略が人道危機の悪化を引き起こしていること。こうした問題の発覚の直前には、コロンビア軍がこの数年、対ゲリラ戦略の一貫としてますます多くの超法規的処刑を実行していることの証拠が秋らかにされ、また、選挙で選ばれた政府関係者が準軍組織に関係していたという準軍組織政治スキャンダルも発覚していた。コロンビア軍がますます深く人権侵害に関与していることに対し、英国政府は最近、コロンビアに対する軍事援助を停止すると発表した。対照的に、米国政府とカナダ政府は人権危機を無視して、コロンビアとの間で二国間自由貿易協定を推し進めようとしている。

プラン・コロンビア:アフガニスタンでの新たな軍事戦略?(2009年4月29日)

      • 国境なき医師団によると、コロンビアはこの数十年、世界でももっとも報道の少ない人道危機を経験してきた。この人道危機の中心にあるのは、強制追放の問題だった。国内避難民を400万人近く抱えるコロンビアは、スーダンに次ぎ世界第二の国内避難民数である。プラン・コロンビアを支持する人々はいつも都市部の「治安」が改善されたことを指摘するが、批判的な人々は、特にここ数年、コロンビア軍が農村部で進める強引な対ゲリラ戦略のためもあって、国内避難民危機は悪化したことを指摘する。2008年の上半期6カ月間で、27万人以上が暴力的に自宅から追放された。2007年の同時期と比べて41パーセントの増加である。人権と追放のコンサルタンシー(CODHES)の代表ホルヘ・ロハスは、「毎日、平均1503人が家を追われています」と述べる。下半期にも同様のペースで強制追放が続いたならば、2008年は過去20年以上の中で、最悪の強制追放数を記録する年となる。


        コロンビア政府の治安戦略に見られるもう一つの問題は、失踪の劇的な増加である。とりわけ、政府の政策に批判的な市民社会のメンバーの間で失踪者が増えている。コロンビア検察は、現在、2008年に失踪した1015人のケースを調査中であるが、この失踪者数は2007年の4倍、2005年と比べると1300パーセントの増加である。コロンビア検察庁によると、調査中のケースのうち90パーセント以上で、コロンビア政府軍のメンバーが容疑者となっている。


        オブザーバの多くが憂慮しているのは、軍が関与した失踪だけではない。ここ数年で、コロンビア政府軍による超法規的処刑の数も激増している。「超法規的処刑と不処罰を監視する国際使節団」によると、2002年から2007年の間にコロンビア軍が犯した超法規的処刑のうち少なくとも955ケースで誰も処罰を受けていないという。その前の5年間における577ケースから2倍近い増加である。多くの場合、殺されるのは民間人で、軍事作戦の際に敵の死者数を水増しするために、軍は民間人の遺体をゲリラの死者として示すのである。


        さらに、対麻薬作戦としてのプラン・コロンビアの「成功」について言うと、2000年にプラン・コロンビアが始まったときに宣言された目標は、5年間でコカ—この植物の葉にコカインの原料が含まれる—栽培の半減だった。しかしながら、昨年、政府説明責任局(GAO)が昨年発表した報告書は、プラン・コロンビアはその目標に近づきさえしていないと述べている。実際、GAO報告書によると、プラン・コロンビアが実施された最初の6年間で、コロンビアでのコカ栽培は15パーセント、コカイン生産は4パーセント増加している。


        プラン・コロンビアのこうした記録を考えるならば、ミューレンが示唆するようにアフガニスタンで同じモデルが適用されるならば、人口の多い都市部で治安が改善され暴力が減るだけでなく、大規模な人権侵害と大規模な難民危機、記録的なケシ栽培ももたらされる可能性がある。

強制退去、失踪、超法規的処刑がウリベ政権下で増加(2008年10月19日)

      • 主流派メディアのほとんどは、ウリベがこの6年間に行ってきた治安対策を、とりわけ殺人と誘拐の減少という点で賞賛しているが、農村部の貧しい人々が直面している苦しみは無視されてきた。紛争は地方部で依然として続いているだけでなく、人権侵害における政府の直接的な役割は劇的に増加している。ウリベ支持者とコロンビアと米国・カナダ間の自由貿易合意の提唱者たちは、戦略的都合から、政府が失踪、超法規的処刑、強制追放にますます大きく関与している事実に目をつぶっている。しかしながら、何百万人というコロンビア人にとって、ウリベ政権下での人権状況は、コロンビアで過去数十年続いてきた紛争期間のどの時期よりもひどいのである。

益岡さんのページ内で紹介されている、 「コロンビアに平和と正義を」 サイトの、リリアニ・オバンドのケースとリリアニの解放を求める国際キャンペーン ページを見れば、今回何故チャベス大統領が国交断絶と云う最悪の選択肢を考えるほど危機感抱いているのかがわかります。また同ページ内にて紹介されている、二人の政治囚からのレターも紹介しておきます;

Letter from Political Prisoner Miguel Ángel Beltrán
Letter from Liliany Obando, August 8, 2009


これらのサイト・政治囚が必死に訴えようとしていることは何か? 冒頭で紹介しました Evelio José Rosero さん著の原題 "Los Ejércitos" は、周辺事情も含め俯瞰的にそれを提示してくれるものと思います。その意味では、山岡朋子さん (横山朋子さん名) 翻訳の 『ルス、闇を照らす者』 のコロンビア版と云えそう。まずは一読。


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*1:Interview with a Colombian Political Prisoner By Garry Leech · July 13, 2009 よりこの部分抜粋しますと(注:英語のサイトです) In particular, the government of Alvaro Uribe has many facets of fascism. It hates the opposition and the poor. It is a government that is fundamentally oligarchic, that serves the upper class and multinationals.

私は、これこそがコロンビアが50年に渡り実質内戦状態にある原因と推測しています。