遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

伊藤和也さん1周忌: 用水路が全通した様です!!

8月22日15時26分配信 時事通信の短い記事 アフガンの用水路全通=ペシャワール会 で、アフガニスタンの用水路が全面開通したことが紹介されました。同記事内で、用水路完成前と後の比較写真が見られます。


アフガニスタン東部ジャララバード近郊で農業支援に取り組んでいた非政府組織(NGO)ペシャワール会 スタッフの伊藤和也さん=当時(31)=がアフガン人運転手と共に拉致され殺害されてから本日26日で丁度1年になります。本年6月13日当ブログ 『オバマ新大統領発表の アフガン政策新包括戦略 Watch: その7 仏さんは怒っているのかな?』 の続きとして、また伊藤さん1周忌として以下紹介・考察したく;


2008年9月9日付けペシャワール会HP内の 『ペシャワール会現地代表中村哲 弔辞』 で中村さんは、伊藤さんを殺したのはアフガニスタンを蝕む暴力であること、その暴力はアフガニスタンの文化を知ろうとしない面々による武力干渉によって招かれたものであることを述べられたうえで、第二次大戦でのアジア・日本の加害・被害両惨禍を踏まえ、逃げ場の無いアフガン人とともに(同会の)事業 *1 を継続することが伊藤さんへの追悼であり、過去の戦争で死んだ人々の鎮魂であることを宣言されています。


従い冒頭に紹介の記事は、伊藤さんも関わられた水路事業が完成したと云うことになりますから、嬉しい限りです。活動が優先ですから当然まだ最新の状況にアップデートはされてはいない様ですが、活動の報告については同会HP内 水利事業活動報告 参照。


なお伊藤さんの一周忌法要は8月23日ご出身地の掛川市内で営まれた様です。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090824-00000099-mailo-l22
伊藤和也さん:一周忌 アフガンの子ども活写、写真集出版へ−−手記も収録 /静岡
8月24日13時2分配信 毎日新聞


−−−写真集は、活動していたアフガニスタン東部の地名をとった「ダラエヌールの子供たち」石風社、税抜き2500円)。伊藤さんが人々の暮らしぶりを撮影した数千点の写真から会が選んだ95点のほか、伊藤さんの活動手記なども収録している。今月末から全国の書店で注文を受け付ける。

記事内で紹介されている書籍は本日時点ではAmazonに掲載されておりませんので、以下伊藤さん名での既刊書籍を紹介しておきます。ペシャワール会書籍案内 内にも紹介アリ;


出典: Amazon
ペシャワール会 (編集) 単行本: 261ページ
出版社: 石風社 (2009/04) 発売日: 2009/04
ISBN-10: 4883441725 ISBN-13: 978-4883441723


以下単なる頭でっかちの優等生の作文に過ぎず、はっきり言って胸糞の悪くなる記事ですが 「敢えて」 引用します;

http://www.news.janjan.jp/world/0808/0808285727/1.php
もういい加減、海外NGO活動はやめませんか?―「ペシャワール会伊藤和也さんの悲劇をくりかえさないために
難波和郎  2008/08/29


−−− 海外だけでなく、日本にも問題は山積みだ。農業問題だけをとっても、荒れた土地は多いし、食料自給率は先進国の中では壊滅的である(関連サイト)。亡くなった伊藤さんはまず日本で活動するべきだったのではないか。今の日本でなら、少なくとも銃弾に倒れることはなかっただろうし、ご両親を悲しませることもなかった。世論には今回のできごとを美談にする動きもあるが、「命を粗末にした」と私はあえて批判したい。


 だが、日本には彼の熱意と野心に応えられるだけの仕組みがなかったのかもしれない。


 NGOの中には、そのあふれんばかりの熱意と善意に支えられた行動力のために、独り善がりな考え方に陥る団体も多い。そして彼らは普通、他者からの批判を許さないのである。だがアフガニスタンのことはまずアフガニスタンの人に任せるしかないのではないか? あるいはそれが出来ない事情も国際社会にはあるのだろうが、面倒でも私たち日本人は選挙を通じてしかその事態を変えることは出来ないのではないか。それよりも大事なのは、今ある自分たちの日常をいとおしむ気持ちだろう。

 マザー・テレサが初来日の時に述べたと言われる言葉を思い出す。

 「日本人はインドのことよりも、日本のなかで貧しい人々への配慮を優先して考えるべきです。愛はまず手近なところから始まります(1981.4)」


これもひとつの意見でありその一断面は正論かも知れないが、マザー・テレサの言葉をこの様なケースで引き合いに出すのは卑怯極まりない; 自分は安全な物陰に隠れて、丸裸で奮闘しているひとに石を投げる様な行為には我慢なりません。どこにでもいますよね、この手合いは。自分達さえよければそれでよし、マザーテレサも言ってるじゃないか、っていうね。有名人の言葉の一部を利用して、何もしないことへの免罪符としているだけ。投票だけしていればよいワケで。結果としてマザーテレサをも否定していることに気付いていない。


私は、伊藤さんの死を栄誉あるものとか、英雄的なものとはおもいません。伊藤さんの活動は評価しますが、亡くなられたことを称賛はしない。美談とはおもいますが。戦争もそうですが、伊藤さん本人はあの様な事件に巻き込まれて何より悲しかったろうし、お身内を亡くされたご親族の悲しみ・痛みはいかばかりか。しかし、伊藤さんが命を粗末にした、との 「敢えての」 批判はいかなる意味でも当たらない。与えられた命を大事にしたかったからこそ、志願してアフガニスタンへ行き、彼にとって『身近』となったひとたちに愛を注いだのでしょう。射殺されたことは、運が悪かったとしか言いようがない。別にNGOで無くとも海外で仕事をしていればその様なことはいつでも起こりえますし、この頃は日本でだって起こっています。


ある行為が偽善かどうは誰にもわかりません。しかし、その行為で実際に助かっているひとがいれば、つまり結果が出ているならそれは評価するべき、と考えます。難波さんの様に何もしないうえに、亡くなられた伊藤さんを批判する権利はありません。言論の自由を履き違えてはいけない。加えて、職業選択の自由の意味を理解すべき。


伊藤和也さんワーカー志望動機の文章のリンク先 (ペシャワール会サイト) を紹介しますね;

http://www1a.biglobe.ne.jp/peshawar/topics/inochi-r-itodouki.htm

これって、伊藤さんの 「ひとりよがり」 でしょうか???


なおペシャワール会代表の 中村哲(医師) さんの行動力も称賛に値します。誰にでも出来る筈ですが、やろうとしない。中村さんの生き方は、私自身への戒めにもなっています。読んではおりませんが、幾つかの著作の中に 『医者よ、信念はいらない まず命を救え!』 があります。日本を代表する某起業家のコトバ 『理念なき行動は狂気である。だが、行動無き理念は無意味である』 と通ずるところがありそう。


日本国憲法に関して中村さんの依って立つところは以下書籍で概観出来そうなので読んでみるつもりです;


カラー版 アフガニスタンで考える―国際貢献憲法九条 (岩波ブックレット) (単行本)
中村 哲 (著)
出版社: 岩波書店 (2006/04) 発売日: 2006/04
ISBN-10: 4000093738 ISBN-13: 978-4000093736


憲法そのものではなく平和精神を活かすのであれば、日本に出来る真の意味での国際貢献を考えるに当たって、ひょっとすると中村哲さん・ペシャワール会の行っている事業が一つの基準になるのではないか、と推測・期待しています。


伊藤さんのご冥福を祈りつつ。
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*1:同会HPによると、医療事業(ペシャワール病院/パキスタン、ダラエヌール診療所/アフガニスタン) および緑の大地計画(農業・井戸事業、水路事業/アベ・マルワリード)