遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

オバマ新政権の軍事政策 Watch: その15  アメリカの考える 『人権』

今になってと云うか今更、子ブッシュ政権時代にアメリカが世界中に押し付け、日本は喜々として応援した 「テロとの戦い」 の実態が少しだけ掘り返されています;

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090827-00000789-yom-int
ブッシュ氏有利に…「テロ警戒度」引き上げ圧力
8月27日18時50分配信 読売新聞  より抜粋


−−− 米メディアが報じた自伝「我らが時代の試練」の抜粋によると、リッジ氏は04年大統領選の投票日直前、ラムズフェルド国防長官やアシュクロフト司法長官(いずれも当時)らから、警戒レベルを5段階で3番目に当たる「黄色」から「オレンジ」に1段階引き上げるよう要求された。

 同氏は、「テロ計画の存在を示す具体的情報がない」としてこれを拒否。これまでも警戒レベルが引き上げられると、テロとの戦い」を主導した前大統領の支持率が上昇したことから、同氏は、選挙に向けた世論操作の一環だと確信し、長官を辞任する決意を固めた、としている。


ただしこんなことは、子ブッシュの無能さ・異常性と 9−11 以降の米マスコミの変化に気付き、少し注意深いひとなら当時からわかっていたことなので、恐らく上っ面だけ取り繕ってうやむやになるでしょうね。おまけに問題となっているのは悪名高きCIAの独走が無かったか −−− 司法省が覚書で容認した範囲内であったかどうか −−− だけで、 「司法省が覚書で容認した範囲」 の正当性は問われておりませんので;

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090826-00000003-cnn-int
チェイニー氏、CIA尋問捜査でオバマ氏批判
8月26日12時30分配信 CNN.co.jp  より抜粋


チェイニー氏は、オバマ政権が捜査担当の検察官指名を決めたことで、国土安全保障に関する政権の責任能力に疑念が高まっていると述べ、「(尋問に)関与した人々は感謝に値する。政治色を帯びた捜査や訴追の対象となるには値しない」と明言した。

チェイニー氏はまた、24日に公表された調査報告書の尋問手法で得た有力情報が、国際テロ組織アルカイダに関する莫大な情報の入手につながったことが証明されたと指摘。こうした情報がアルカイダの攻撃を阻止し、人命を救ったとしたうえで、容疑者らが2002年以来、アルカイダ構成員や協力者の拘束でほぼ毎回役割を担っていることが文書で指摘されている、とコメントした。

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/america/293681/
CIAの“拷問”捜査へ 米司法長官が検察官を指名
配信元: 産経新聞  2009/08/25 08:49更新  より抜粋


ホルダー米司法長官は24日、ブッシュ前政権下で中央情報局(CIA)の請負業者らがテロ容疑者に対して行い、“拷問”との国際的な批判を浴びた過酷な尋問について、刑事事件として捜査を開始すると発表、担当の検察官を指名した。


 前政権の対テロ政策に対する捜査が保守派の反発を招くのは必至で、米政局の新たな焦点となりそうだ。ただ長官は、司法省が覚書で容認した範囲内の行為なら訴追しないとの姿勢を表明、組織的な刑事責任追及には発展しない公算が大きい。


アメリカ外交の本質を見せてくれるきっかけとなった アメリカ同時多発テロ事件 についても、真相は永遠に闇の中ですね。ウィキペディアより一部抜粋しますと;

ブッシュ大統領の支持率


事件直前、ジョージ・W・ブッシュ大統領の支持率は、50%を切っていた。そもそも、前年の大統領選挙は僅差での勝利であるために、また大統領選における大規模な混乱は選挙の正当性への議論を招いたことから、選挙直後から政権支持率は高くなかった。大統領就任後の初めての大きな事件としてその指導力が国民の注目を浴びることとなり、それがテロとの戦争として位置づけられたことから、事件直後には国民の支持率は9割に到達、いみじくも政権最初の年から国民の支持を得た形となった。


遡って調べるのは面倒なので裏付けは割愛しますが、子ブッシュ就任当時の米マスコミは、子ブッシュを酷評していたと記憶します。それが9−11以降、実質戦時体制下 「愛国心」 が鼓舞されるに従って --- 1億火の玉、どこかで聞いた様な --- 批判など許されない状況に。無能大統領が、いつの間にか戦う名大統領に。私はこの時の報道 「自主」 規制やら 「愛国心」 やらはまだ生きているのだろうと考えています。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090825-00000112-mai-int
<米司法省>「少年テロ容疑者」を釈放 アフガンに送還
8月25日20時22分配信 毎日新聞  より抜粋


 米国防総省によると、ジャワド氏は02年12月、米軍の車列に手投げ弾を投げ、米兵ら3人に重軽傷を負わせたとして逮捕され、殺人未遂容疑で収容された。人権団体によると、家族の証言などから、当時の年齢は12〜14歳だったという。

 同氏は取り調べで拷問を受け、人権団体が人身保護を請求。先月30日、米連邦地裁が釈放を命じていた。米司法省は米国内法で起訴する可能性も探っていたが、断念。オバマ政権の判断の行方が注目されていた。

 同収容所 (グアンタナモ) には未成年で拘束された「少年テロ容疑者」が多数いる。


米軍が民間人を殺害するのは 「やむを得ない行為」 で、民間人が米軍に手榴弾を投げるのは 「殺人未遂/テロ行為」 なのですね。またグアンタナモでは、未成年容疑者に対しても拷問がなされているのですね。過去中南米で展開した手法がそのまま生き残っている訳で。一体、 「テロ行為」 の定義は何でしょうか? アメリカに盾突く者は全てテロリスト、と云うのがアメリカによる定義の様です。カストロチャベスアラファトも全てテロリスト。でも実際には、世界中のテロリスト界に君臨する親玉は他ならぬアメリカなのですがね。


益岡賢さんのページにて紹介されている WILLIAM BLUM さん記事を参照;

http://www.jca.apc.org/~kmasuoka/places/blum0908.html
CounterPunch原文
暗殺とクーデター:帝国の犯罪を追う
2009年8月6日 ウィリアム・ブルム  より抜粋


−−− この何カ月か、9月11日のテロ攻撃以来ディック・チェイニー元副大統領に鼓吹されて議会からは隠されたまま進められるCIAの秘密作戦について数多くのニュース報道があった。アルカーイダ工作員をはじめとする帝国を信じない者たちを、現地政府の知らぬままに海外で暗殺する作戦についてである。CIAは何らかの作戦が存在したことは認めたが、それは撤回されたと主張している。その作戦が暗殺作戦だったとすると、実際に誰かが暗殺される前に撤回されたのだろう。別の報道ではCIAではなく米軍がその作戦計画----あるいは別の計画だったのだろうか?----を実行し、複数の暗殺を行ったという。その一つはケニアでの暗殺で、大きな問題を引き起こし、計画の撤回につながったという(ガーディアン紙、2009年7月13日)。


 これらはいずれも、ニュースを追っている人々にとって紛らわしい。また、的を外している。アメリカ合衆国が不信心者や不信心者の疑いがある者たちを定期的に殺害し、罰を受けていないことは我々皆が知っている。最近では、少なくともイエメン、アフガニスタンパキスタンソマリアで、無人飛行機(ドローン)からミサイルを発射することで(たまたま不信心者と同じ家にいたり、その車に同乗していたり、不信心者の結婚式に出席していた人々の中からさらなる犠牲者さえ生まれている)。これらの殺人はどうやら「暗殺」に該当しないらしい。というのも、何故かはわからないが、2000フィート遠くから「テロリスト」を殺すことは、2フィート離れたところからテロリストを殺すよりも、どうやら道徳的にも法的にも勝った行為らしいから。


 最近流行りの推測ごっこの背後で実際にはどんなことが起きているとしても、私たちは、CIAが何度も日常的に行ってきた暗殺の企てをショッキングだとかあるいは少なくとも非常に例外的なものだと折にふれ暗示するメディアの振舞いに騙されないようにしよう。


 私は1949年から2003年の間にCIAが著名な外国の政治家に対して試みた暗殺 ----成功したものも失敗したものもある----のリストを作成した。それらは、どう数えるかにもよるが、数百にのぼる(キューバの諜報部によるとフィデル・カストロを標的とした暗殺未遂は634回にのぼるという)。このリストに、アルカーイダの指導者と言われる人々が最近、ドローンによる攻撃の犠牲者の中にいたことを加えることができる。暗殺と拷問は政府がもっとも認めたがらない二つのことなので、隠蔽しようと全力を尽くす。そのため、誰かを暗殺する計画に言及した政府文書や発言記録を見つけることは滅多にない。一方、説得力のある情況証拠は大量にある。以下のリストには、CIAが雇い入れ米国を拠点としてカストロに反対するキューバ人たちが世界の各地で行った複数の暗殺については含めていない。


(以下、 「1949年、金九、朝鮮の野党指導者 」 から 「2003年、サダム・フセインと二人の息子 」 まで列挙)


第二次世界大戦後に米国が見せた素晴らしき外交政策のリストを集めている人々のために、以下にさらにもう少し集めたものをあげよう----これ以上の方法はないようだから。米国は50以上の外国政府を転覆しようとした。そのほとんどは民主的に選出された政府だった(*は政府転覆に成功したもの)


(以下、 「アルバニア 1949年から53年 」 から 「イラク 2003年* 」 まで列挙)


最後に、度々紹介しておりますノーム・チョムスキーさんへのインタビュー集である 【9.11 アメリカに報復する資格はない!】 (株式会社文芸春秋 2001年11月30日発行 第一刷、山崎淳さん翻訳) 23・24ページから以下引用します。当該インタビューは2001年9月20日あるいは21日に行われたもの;

−−− 一九八〇年代のニカラグアは米国による暴力的な攻撃を蒙った。何万という人々が死んだ。国は実質的に破壊され、回復することはもうないかもしれない。この国が受けた被害は、先日 (9/11のこと) ニューヨークで起きた悲劇よりはるかにひどいものだった。彼らは、ワシントンで爆弾を破裂させることで応えなかった。国際司法裁判所に提訴し、判決は彼らに有利に出た。裁判所は米国に行動を中止し、相当な賠償金を支払うよう命じた。しかし、米国は、判決を侮りとともに斥け、直ちに攻撃をエスカレートさせることで応じた。そこでニカラグア安全保障理事会に訴えた。理事会は、すべての国家が国際法を遵守するという決議を検討した。米国一国がそれに拒否権を発動した。ニカラグアは国連総会に訴え、そこでも同様の決議を獲得したが、二年続けて、米国とイスラエルの二国 (一度だけエルサルバドルも加わった) が反対した。しかし、これが国家の取るべき手段である。もしニカラグアが強国であったなら、もう一度司法裁判を行えたはずである。米国ならそういう手法が取れるし、誰も阻止はしない。それが同盟国を含め、中東全域の人々が求めていることである。 −−−


(原文以下の通り)

Nicaragua in the 1980's was subjected to violent assault by the U.S. Tens of thousands of people died. The country was substantially destroyed, it may never recover. The international terrorist attack was accompanied by a devastating economic war, which a small country isolated by a vengeful and cruel superpower could scarcely sustain, as the leading historians of Nicaragua, Thomas Walker for one, have reviewed in detail. The effects on their country are much more severe even than the tragedies in New York the other day. They didn't respond by setting of bombs in Washington. They went to the World Court, which ruled in their favor, ordering the U.S. to desist and pay substantial reparations. The U.S. dismissed the court judgment with contempt, responding with an immediate escalation of the attack. So Nicaragua then went to the Security Council, which considered a resolution calling on states to observe international law. The U.S. alone vetoed it. They went to the General Assembly, where they got a similar resolution that passed with the U.S. and Israel opposed two years in a row (joined once by El Salvador). That's the way a state could have set up another criminal court. Those are the measures the U.S. could pursue, and nobody's going to block it. That's what they're being asked to do by people throughout the region, including their allies.


ニカラグア は、メキシコを除く中米では最大の国土を持つ、緑豊かな国です:



出典: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Nicaragua_Topography.png


80年代アメリカがこの国に与えた計り知れない損害はその後も尾を引いている筈。80年代から中南米に関わっていると、嫌でもアメリカの裏の顔ばかりが見えてしまいます。これがオバマになって変わるとは到底思えない。


山岡朋子さん (横山朋子さん名) 翻訳の 『ルス、闇を照らす者』 の舞台となった軍政当時のアルゼンチンに直接アメリカが関与していたかは疑問ですが、SOA (School of the Americas 、後日紹介予定) での訓練を通じて伝授された尋問やら拷問のノウハウは間違いなく使われていた筈。SOAは名前も組織も変わっている様ですが、 「xxマニュアル」 は引き継がれて、イラクアフガニスタンで今でも使われているのでしょう。「卒業生」 も世界中に散らばっているでしょうし。「何も学ばない」 のではなく、 「学ぶ必要性を認識していない」 のですから、始末に負えませんね。マニュアルに示された尋問のおかげで数多くのアメリカ国民の命が救われた、ってんですから−−−