遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

チャベスからオバマへのプレゼント : 「収奪された大地 ラテンアメリカ五百年」

09年02月02日付け 【ノーム・チョムスキー教授のこと: 言語学者+外交評論家】 の中で、ベネズエラチャベス大統領 *1 が国連での演説の中でチョムスキー教授の "Hegemony or Survival: America's Quest for Global Dominance (November 2003)" 、邦題 『覇権か、生存か』 を紹介したところ、次の日この本がアマゾンでトップセラーになったことを紹介しましたが、


今度は2009年4月18日の第5回米州サミットの中でチャベス大統領が 「オバマへ、愛情とともに」 とサインしてオバマ米大統領にプレゼントした書籍 "The Open Veins of Latin America: Five Centuries of the Pillage of a Continent " *2 が、アマゾンの売り上げ順位で一気に5万4295位から2位に躍り出たことが報道されておりました。 (ただし元々進呈する予定はなかったため、実際に手渡したのはたまたま手元にあったスペイン語版だった様です。)


The Open Veins of Latin America: Five Centuries of the Pillage of a Continent (ペーパーバック、予約受付中 --- 大慌てで新版を印刷中の様子)
www.amazon.co.jp 洋書にて入手可



写真は http://www.nydailynews.com/latino/2009/04/24/2009-04-24_chvez_obama_opening_new_veins.html より

http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20090420k0000e030065000c.html?inb=yt
ベネズエラ:大統領の贈呈本、アマゾンで売り上げ急上昇」 より抜粋;


 【ポートオブスペイン庭田学】ベネズエラの急進左派、チャベス大統領がオバマ米大統領にプレゼントした本が、米国のインターネット書籍販売大手アマゾン・ドット・コムの売り上げ順位で、5万4295位から一気に2位に躍り出た。AP通信が19日伝えた。


 この本は、ウルグアイの作家エドゥアルド・ガレアーノ氏の代表作「収奪された大地 ラテンアメリカ五百年」(邦題、藤原書店)。米州首脳会議で18日、チャベス大統領が「オバマへ、愛情とともに」と同書に書いて手渡した。


 「収奪された大地」は1971年に出版された。中南米が欧米諸国に富を収奪されてきた歴史を記述している。左翼的な作品とされ、軍政下のアルゼンチンやウルグアイなどでは発禁処分となった。


よくまあこの様な旧い、しかしながらパンチのきいた本を持っていたものだと感心します。植民地じゃあるまいし日本の政治家も少しは見習って欲しいものです。日本では、特にベネズエラに進出している企業に大変評判のよろしくない大統領ですが、世界一の核保有国でありかつ世界で唯一原子爆弾を人間に対して使用した汚点を持つアメリカに関して;

--- 2009年4月5日にオバマ核廃絶を表明したことを評価する一方、「アメリカは過去の原爆投下についてきちんと日本に謝罪すべきだ」と指摘している[18]。

ウィキペディア 「ウゴ・チャベス」 (脚注参照) より抜粋

と発言されています。日本訪問中の発言とは云え、ここまで明言出来る国家元首は現在おそらくこのひとだけでしょう。スマートさとは縁遠い直情闘士型の根っからの軍人、と云うのが失礼ながら私がチャベス大統領に抱いているイメージです。ただしベネズエラ国内の取り巻き連中はどうも問題が多そうですが。実質軍事独裁だ、との批判は多いのですが、では過去の 「親米民主政権」 はどうだったか? その時代に南米の某国で暮らした経験から率直に言うと、国を食い物にしただけ。チャベスはカネをばらまいて人気取りをしているだけ、との批判に対しては、政治家や一部特権層がネコババするよりゃマシでしょ、と言いたいですね。


話題の書籍については、ウィキペディアでも紹介されています;

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%8E%E5%A5%AA%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%9F%E5%A4%A7%E5%9C%B0_%E3%83%A9%E3%83%86%E3%83%B3%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E4%BA%94%E7%99%BE%E5%B9%B4

Amazonで確認する限り、最初の翻訳は 『収奪された大地―ラテンアメリカ五百年』 として1986年9月新評論より出版 (ISBN 978-4794822345 ) され、その5年後藤原書店より1991年11月新版版 『新版 収奪された大地―ラテンアメリカ500年』 (ISBN 978-4938661380 ) 、更に6年を経た1997年3月に現在の 『収奪された大地―ラテンアメリカ500年』 (ISBN 978-4894340640 ) として同書店から再版された様ですね。初出から23年経った現在でもこの翻訳本は新品で入手可と云うのは素晴らしい!! ジャンルは異なるにしろ山岡朋子(横山朋子)さん翻訳の 『ルス、闇を照らす者』 にもその様な価値があるとおもうのですが。


なお翻訳者 大久保光夫 さんはこれ以外にもチリの歴史やラ米文学の翻訳をなさっておられますが、どう見ても翻訳者ではなくお医者さんとして輸血関係の書籍も出版なさっている様子。医師兼翻訳者でいらっしゃるのか、同姓同名の全くの別人であるのか不明。


(2009年5月8日23時過ぎに作成、ただし公開は5月10日)
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*1:ウィキペディア参照:

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%B4%E3%83%BB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%99%E3%82%B9

このサイトには既に4月18日の書籍寄贈のことが記載されています

*2:邦題 「収奪された大地―ラテンアメリカ500年」 (単行本)

日本の www.amazon.co.jp 和書にて入手可、


オリジナル(西語) "Venas Abiertas De America Latina" (ペーパーバック)

同じく www.amazon.co.jp 洋書にて入手可