遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

マチュピチュ遺跡のこと・世界遺産との付き合い方のこと

ユネスコ世界遺産 - Wikipedia に指定されたインカの マチュ・ピチュ - Wikipedia 遺跡での救出劇が報じられています;


結局ヘリで運ばれた約4000人のうち旅行者は約1300人、上掲は日本人観光客をメインとした報道ですが、実際には地元クスコ県で人的・物的に大きな被害が発生しています;

  • BBC News - Machu Picchu tourist airlift ends with 1,300 flown out
    Page last updated at 03:01 GMT, Saturday, 30 January 2010, BBC


    −−−Nearly 1,300 travellers were flown out by helicopters on Friday, a local policeman told the Associated Press.


    A total of nearly 4,000 tourists and local residents have now left the area following last Sunday's heavy flooding.  (以下略)


    • 出典: 同記事


TV報道観ていて非常に気になったのが、旅行者の救出が後回しになっている・ロクな食い物しか供給されなかった・疲れたなどの馬鹿な苦情、アクセスの不便さを解消しない現地政府の怠慢の批判。大枚はたいて観光に来たのだから、家を失いいのちの危険にさらされた地元住民より先に助けろ、ってんでしょうか? 高い山の尾根にある遺跡へ観光客が安全に快適に行きやすいようにコンクリートで護岸工事をしろ、別ルートを造れ、高速道路でも通せ、と云うのか?? 一方で、TV報道ではなく記事を読んでいて感心したのが、残念ながら日本人では無い様ですが、地元の人たちの土嚢積みなど防災活動に参加された旅行者がいらっしゃったこと。


『空中都市』 として有名なマチュピチュを訪れる観光客は年間40万人程度ですから、日平均約1100人が訪問する勘定。観光収入は馬鹿にならない金額でしょう。それをアテにする以上、迎えるペルーにはそれなりの対応が求めらるのは当然ですが、世界遺産のある周りの環境を損ねないことは絶対条件である筈。恐らくインカは、太陽に出来るだけ近い宗教的な儀礼の場・観測所としてこんな山の上に都市を造ったのでしょう。ウィキペディアによるとユネスコマチュピチュ複合遺産文化遺産 + 自然遺産) として登録したのは;

文化:(1) 人類の創造的才能を表現する傑作。


文化:(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。


自然:(7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。


自然:(9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。

の基準を満たしているから。観光のために上掲 (7) と (9) を損ねるのは本末転倒。過度に観光収入に頼るのも問題なら、大勢が押し掛けるのも問題と思います。昨年も、確かモアイのあるイースター島で地元住民が数多くの観光客にたまりかねて空港を占拠したことがありましたし、ガラパゴス諸島では多くの観光客対応のために自然が破壊されていると云う事実があります。


また、遺跡の所在する場所・構造からして地滑りの危険性やら遺跡の損壊の問題も指摘され調査も行われている様です。以下、ネットで拾ったもの列挙しますと;

  • ペルーにおけるインカ道遺構の損壊に関する事例研究(PDF)


    −−−マチュピチュへ続くインカ道は、世界中から訪れるトレッキングツアーの観光客で賑わってもいる。だが注目を集め、保存や損壊について云々されるのは、4 万Kmとも言われる全体のほんの一部に過ぎない。エル・ニーニョによる豪雨での流出や地震による崩壊といった自然災害だけではなく、インカ道が文化遺産であるという認識を持ち合わせていない人々による悪意の無い損壊が目立って増えているように思える。 (以下略)


文化遺産の維持・保存と利用の共生バランスを保つことが必要なのでしょうが、まずアクセスを制限すべきでしょうね。カネさえ払えば当然行ける権利がある、好きに行動する自由がある、という現在の風潮はいかがなものか? 日本でもあちこちで世界遺産への登録に執念燃やしている様ですが、カネ目当てなら寂しいハナシです。


以下、参考資料;