遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

何の進歩も見られないアメリカの対イラン外交政策、結局アメリカべったりの 「新事務局長」 率いるIAEAの無能

現在田中宇さんの新刊 『日本が「対米従属」を脱する日』 を読み返しています。この本は、誤解無き様申し添えますと、アメリカべったりをヤメろ、と推奨するものではなく、同氏のWebサイト 田中宇の国際ニュース解説 に掲載された記事を以下タイトルに沿う様にまとめたもの;

  • まえがき: 多極化する新世界秩序の中で
  • 第1章:  多極化に対応し始めた日本
  • 第2章:  核廃絶と新世界秩序
  • 第3章:  多極化の中で台頭する中国
  • 第4章:  ドル崩壊と新たな基軸通貨の登場
  • 第5章:  「対米従属」から脱却する世界の国々
  • 第6章:  日本が「対米従属」を脱する日


「ネットジャーナリズム」 なるコトバが存在するのかはよく存じないが、あるとすれば田中宇さんは間違いなくその先駆け的存在です。田中宇さんの記事をネットで読み始めてもう10年以上になる勘定、様々な公開情報を丹念に読んで仮説を立て、それを現実と比較検証して修正して行く手法に学ぶところが多いのですが、それ以上に、自分が海外で経験したことも含めた様々な事象が、提示された 「仮説」 でなら説明が付くと云う実績の積み重ねがあります。勿論読み違えもある筈ですが。金融も含めた国際情勢を理解するに当たって、 「権威」 のあるメディアの報道やら、まして (いまだに) それら欧米メディアの翻訳に過ぎない日本の新聞記事など殆どアテになりません。スポンサーの利益のために動いているだけですし、後者についてはまともな取材活動さえしていないのが大半ですが、横文字より一覧性に優れる私の母国語である日本語で書いてあるので目次としては重宝しています。


詳細な論点の紹介は控えますが、世界が冒頭紹介の書籍題名が示す 『多極化』 に向かう大きな流れの中にあることに異論はないものの、幾つかの現実を見る限り、それに逆らう、即ち英米中心の世界へ引き戻そうとするチカラがまだ相当大きいのではないか、と私には思えます。イランのケースはそのひとつ;

引用中 "" は私のコメント

  • イラン核問題で米国が「緊急対応手段」を作成、米軍司令官
    1月10日17時9分配信 CNN.co.jp


    フロリダ州タンパ(CNN) 核開発問題で欧米と対立するイラン情勢で、中東を管轄する米中央軍のペトレイアス司令官は10日、米国は外交手段、経済制裁に加え、イラン核問題に対処する「緊急対応手段」も作成したことを明らかにした。CNNとの会見で述べた。 (中略)


    イラン核問題ではイスラエル内で核施設への先制空爆論がくすぶっている。ペトレイアス司令官は、イスラエル空爆能力についての質問には直接答えなかったが、イラン核施設の防御性については同国が地下トンネル網を築くなど防衛能力の向上に努めている事実を指摘。その上で、使用する兵器の種類によるとしながらも、「空爆は可能」との考えを示した。  (以下略)


    これは好戦国アメリカの軍事シミュレーションのハナシですから目くじら立てることではありませんが、イスラエルの核については何らお咎め無しなのは相変わらず。
  • 国連総長と初会談=多国間での問題解決で一致−IAEA事務局長
    1月9日5時53分配信 時事通信


    【ニューヨーク時事】国際原子力機関IAEA)の天野之弥事務局長は8日、ニューヨークの国連本部を訪れ、潘基文事務総長と初めて会談した。両者は、北朝鮮やイランの核開発を含む国際的な問題を解決するには多国間での取り組みが重要だとの見解で一致した。 (以下略)


    天野がこんな建前論を確認しただけのことが何故ニュースになるのか?はっきり言って、 NO PLAY, NO ERROR を信条とする二人の役人が話しただけでしょ? 想定済みではあるが、国連もIAEAも結局何も変わっていないことは確認出来るが。
  • 米国:対イラン圧力強化 経済制裁を協議
    毎日新聞 2010年1月4日 11時52分(最終更新 1月4日 12時12分)


     【ワシントン草野和彦】国際社会の懸念を無視して核開発を進めるイランに対し、オバマ米政権が圧力路線の強化に向け、関係国との協議に乗り出した。反政府運動に参加するイラン市民への影響を避けるため、革命防衛隊などに対象を絞った経済制裁を目指す見通しだ。国連安全保障理事会での追加制裁決議のほか、有志国、米単独の3種類の制裁が検討されるとみられる。 (以下略)


    「国際社会」 などと云うコトバを安易に使って欲しくはない。結局国連では基本的に1票の権利しかない筈のアメリカの言い分だけではないか?
  • イラン外相、核開発めぐり西側諸国に逆提案
    2010.01.03 Web posted at: 16:57 JST Updated - CNN


    −−−イラン政府系プレスTVは、原子炉の燃料が近く不足すると伝えた。外務省スポークスマンによると、イランがIAEAの提案を依然受け入れていないのは、低濃縮ウランが戻されるとの「具体的な保証」を求めているためという。


    上掲記事で 「国際社会の懸念を無視して核開発を進める」 と書かれていますが、むしろ交渉に当たって相手のことを意図的に無視しているのは英米ではないか? 英米、特にオバマが言うことは全て真実でイランの言うことは全てウソ、と云うマスコミのプロパガンダには辟易します。
    • Iran mulls over producing research reactor fuel
      Tue, 29 Dec 2009 12:41:47 GMT, PRESS TV


      −−−His remarks echoed those of Parliament Speaker Ali Larijani who recently said that the country would start enriching uranium to the level of 20 percent if the Western side keeps refusing to sell the country's needed fuel.


      The development comes as the research reactor in Tehran, which produces radiomedicine for cancer patients, is soon expected to run out of fuel. Iran has demanded the International Atomic Energy Agency (IAEA) to arrange the fuel to be provided to the country.


      Iran, a signatory to the nuclear Non-Proliferation Treaty (NPT) and member of the IAEA, insists its nuclear program is solely for civilian purposes and rejects Western claims that it intends to pursue a military agenda.


      The nuclear dispute came close to an end in August when Tehran and the West discussed a deal about the fuel, but the West refused to address Iran's concerns over details of the proposal.


      Tehran sought "concrete guarantees" that it would receive the promised fuel in exchange for the low-grade uranium, based on fears that rose from past sabotage in nuclear deals between Iran and the West.


      The draft proposal required Iran to send most of its domestically-enriched low-grade uranium out of the country for further refinement of up to 20 percent.


      これもいつも思うことですが、「国際機関」 に加盟して 「ルール」 に乗っ取って活動しているイランが制裁の対象となって、それを英米公認の下無視し続けるイスラエルを放っておく 「国際社会」 や IAEA って、一体ナンボのものか?


田中宇さんの書籍など読んでいると、パワーゲームと云う観点からはなるほどと思えることも多く 「面白い」 のですが、私が戒めていることは、かならずその陰で犠牲になる多数のひとがいる事実を忘れないこと。『傷つけるな、殺すな』 の大原則からすると何をどう変えるべきなのか明確な答えはまだ持っていませんが、戦争をさせないことがそのひとつでしょうね。アメリカ、イスラエルが殺戮数では際立っていると思います。私やあなたには、その大原則から離れることなく出来ることは何もないのでしょうか?