遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

翻訳家 山岡朋子さん その61  『ルス、闇を照らす者』 : 拷問の正当化、国家犯罪の隠ぺい

山岡朋子さん (横山朋子さん名) 翻訳の 『ルス、闇を照らす者』 の訳者あとがき (株式会社ソニー・マガジンズ 2001年6月30日発行 初版第1刷 451ページ) に;

−−−本書に出てくる 「命令服従法」 *1違憲・無効とする下級審判決もくだされた。非人道的な拷問を行っていた軍人に対する告発は、今後さらに活発に行われることだろう。(改行)その他の中南米諸国でも、チリでピノチェトの免責特権が剥奪されるなど、人権弾圧を行っていた軍部の責任を追及する動きが進みつつある。

とあります。その後然るべき審判を受けずに死亡したピノチェットなどを除いて実際に上述の通り進行中と言えるでしょう。(ナチの残党など、今でも追及が続いていますよね?)


ところがその当然の流れに逆行している国が、残念なことに米州には少なくとも2つあります; 度々取り上げていますが、1つはコロンビア、もうひとつはアメリカ。


本年8月28日付け 【オバマ新政権の軍事政策 Watch: その15 アメリカの考える 『人権』】 にて紹介しました 「CIAの“拷問”捜査へ 米司法長官が検察官を指名」 に関して、何とCIA歴代長官が捜査の中止を求めるコメントを出したことが報道されました;

  • http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090919-00000028-jij-int
    CIA歴代長官、虐待捜査中止を要請=「対テロ戦」への悪影響警告−米
    9月19日8時10分配信 時事通信


    −−−「捜査は対テロ戦の仕事に取り組む職員の意欲をそぐ」と指摘するとともに、「同時多発テロ後のCIAの行動をあらわにすれば、今後外国政府から協力を得られなくなる」と警告している。


     また、ブッシュ前政権時代に既に虐待問題の調査が行われ、解決済みだとも主張している。当時、容疑者を殴打した1人が起訴され、有罪判決を受けている。


一方CIAが、昔から特に中南米を中心に展開してきた 『人権蹂躙』 を 「テロとの戦い」 の詭弁のもと世界規模に拡げて正当化した張本人である子ブッシュの発言、および機密文書の公開に踏み切った (←これは立派!) オバマのコメントは以下の通り;

  • http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/america/260203/
    「テロ容疑者への過酷な尋問必要」 ブッシュ前米大統領が講演
    配信元: 産経新聞 2009/05/30 13:45更新


     退任後、公の場での発言を控えてきたブッシュ前米大統領が28日、中西部ミシガン州で講演し、テロ容疑者に対する「水責め」などの過酷な尋問方法を現職時に容認したことを「米国民を守るために必要なことをした。法の枠内で決断した」と述べ、正当な措置だったと主張した。29日付のデトロイト・フリープレス紙が報じた。


     オバマ政権は「水責め」などは拷問として、発足直後に中止を決定し、過酷な尋問を容認した司法省の覚書も公表。チェイニー前副大統領が「無謀で無計画」と批判してきたが、ブッシュ氏もこの日「得られた情報は(発生したかもしれないテロから)命を救った」と、当時の自らの判断を正当化した。(共同)
  • http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/america/243776/
    「水責め」実行者訴追せず 米大統領、拷問には決別
    配信元: 産経新聞 2009/04/17 08:35更新 より抜粋


    【ワシントン=有元隆志】米司法省は16日、テロ容疑者に対する「水責め」などの過酷な尋問を正当化したブッシュ前政権時代の機密文書を公開した。オバマ大統領は声明で、こうした尋問を二度と行わず法を順守することを示すためにも文書の公表に踏み切ったとして、前政権時代からの変化を強調した。その一方で、尋問にあたった米中央情報局(CIA)当局者の刑事責任を免除する方針も明らかにした。


     オバマ大統領は声明のなかで、「こうした尋問方法はすでに過去のものとなった」と強調した。そのうえで尋問を実施したCIA当局者らについては「彼らは任務を果たしただけだ」として擁護した。


ブッシュの発言は、本年9月4日付けチリの911紹介の際引用しましたピノチェットの発言 【−−−国家元首として、チリ国民全体に責任を負っている。共産主義の疫病が国民の中に入り込んだのだ。だから、私は共産主義を根絶しなければならない。(中略)彼らは拷問にかけられなければならない。そうしない限り、彼らは自白しない。解ってもらえるかな。拷問は共産主義を根絶するために必要なのだ。祖国の幸福のために必要なのだ。】 と本質的に全く同じ、また尋問実施のCIA当局者について免責とすることは、上述 「命令服従法」 と全く同じ (ある意味オバマは、軍政時代の負の遺産を引き継いで処理しなければならなかったアルフォンシンと同じ様な立場にあります。この点同情はしますが) であることに気付かれてます?


なおここで問題として取り上げられているのは拷問だけですが、実際には超法規的処刑やら拉致などもセットとなっている筈。さすがに公開出来ないでしょうが。


おぞましいハナシではありますが、以下 『拷問』 とは何か、 『水責め』 とは何か、ついでに昨日書いた、私のライスに対する嫌悪感の理由など追加で紹介します;

拷問 (ウィキペディア) 中の以下記事参照;


国際法での拷問


国際法上は、拷問等禁止条約(拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約)により次のように定義される。

  • この条約の適用上、「拷問」とは、身体的なものであるか精神的なものであるかを問わず人に重い苦痛を故意に与える行為であって、本人若しくは第三者から情報若しくは自白を得ること、本人若しくは第三者が行ったか若しくはその疑いがある行為について本人を罰すること、本人若しくは第三者を脅迫し若しくは強要することその他これらに類することを目的として又は何らかの差別に基づく理由によって、かつ、公務員その他の公的資格で行動する者により又はその扇動により若しくはその同意若しくは黙認の下に行われるものをいう。「拷問」には、合法的な制裁の限りで苦痛が生ずること又は合法的な制裁に固有の若しくは付随する苦痛を与えることを含まない(第1条)。

しかし、実際には現代でも拷問の実行が噂される事例もある、例えばアメリカ軍がベトナム戦争時に行ったベトナム人への拷問や虐待が暴露され、国内外から批判が起こり、アメリカ軍がベトナムから撤退する要因のひとつともなった。


またアフガニスタン侵攻やイラク戦争における中東系の人々への拷問も暴露され内外から批判され、イラク国内ではテロリストを増やす要因ともなった。キューバにある米軍のグァンタナモ米軍基地ではアメリカの法律もキューバの法律も適用されず、テロリストと見なされた人が人権無視で拷問を受けているとされ、濡れ衣を着せられて収監されたパキスタン系イギリス人の青年3人の体験をもとに、映画『グアンタナモ、僕達が見た真実』が制作された。また先進国においても数こそ少ないながら報告されている。


アメリカは覇権の強化で必死、歴史を学ばないから何度も同じ過ちを平気で繰り返す、と云う観方もあるだろうし、アメリカは何をやっても許される = 全ての法律からの免責特権があると考えており、かつ 「国際社会」 もそれを黙認している、と云う観方も出来そう。


なお悪名高きCIAが作成したとされる 『拷問マニュアル』 は、幾つかのサイトで見られます。例えば−−−


水責めについては;


上掲ウィキペディアから以下引用します;


アメリ


1968年1月21日、ヴェトナム戦争で米国の将軍によってウォーターボーディングは違法であると示された、ワシントンポストは、ダナンの近くで北ベトナムの捕虜をウォーターボーディングしている写真を掲載して、その兵士は軍法会議にかけられた。


近年ではCIAがアルカーイダの容疑者を尋問するために使用したことで話題になった。2008年2月5日にはCIAのマイケル・へイデン(Michael Hayden)長官が、上院情報特別委員会でアルカイーダの容疑者三名に対してウォーターボーディングを行っていることを認めた。 アメリカでは短期的な適用は身体的は損傷を起こさないため拷問ではなく尋問であると主張され、水責め尋問禁止法案が民主党主導で上下両院を通過したがブッシュ大統領が拒否権を発動して廃案となった。

ライスについては、昨日の記事の脚注で紹介した様に 『支持者からはアメリカ屈指の戦略家であり、オフェンシブ・リアリスト(攻撃的現実主義者)と評される。バランス・オブ・パワーを破壊しようとする勢力には当然に武力行使も選択肢に入れた対応をしなければならないとする立場であり、−−−(ウィキペディアよりの抜粋)』 、つまりアメリカを中心とする現在の権力構造を破壊するものは武力で叩き潰して構わない、との立場。(本心・本音はわかりませんが)



出典: http://en.wikipedia.org/wiki/Waterboarding
2008年5月にアイスランドコンドリーザ・ライス長官の訪問期間に行われた路上での抗議活動


こんなのがアメリカの国連大使なのだから、お先真っ暗、と私は思っています。


更に言うなら、アメリカ国内でさえ拷問あるいはそれに近いことが行われていそう。(特にラテン系・アラブ系。ましてそれが不法移民であったら−−−)

上掲 ウィキペディア 『拷問』 より抜粋:


アメリ


アメリカでは警察が行う取調べの第三段階(Third degree)と呼ばれるものは拷問の代名詞として現代でも通用している。


コロンビアについては、別途。(なかなか進まない−−−)

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*1:スペイン語では http://es.wikipedia.org/wiki/Ley_de_Obediencia_Debida:TITLE="Ley de Obediencia Debida"、民政移管されたアルフォンシン大統領が1987年に制定したが、最終的に2003年無効とされた。なお http://es.wikipedia.org/wiki/Obediencia_debida:TITLE="Obediencia debida" も参照。