遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

翻訳家 山岡朋子さん その48: 南米ベネズエラのこと その1

去る7月9日(木)、セルバンテス文化センター東京B1Fオーディトリアムにて、在日ベネズエラ大使館主催による講演会「ベネズエラ文学を語る: ベネズエラの現代小説と詩の傾向、20世紀に偉大な功績を残した作家達とその作品についての対談」 が開催されました。ベネズエラと山岡朋子さんとの関係は薄いのですが、先日コロンビアについて紹介したので隣国のよしみ(?)でここで紹介します。


当日の講演の構成は;

司会者: 駐日ベネズエラ大使館 Maurice Reyna 氏

第1部: ベネズエラの詩人 Gregory Zambrano 氏 *1 による詩の動向の概観、当然西語。

第2部: 寺尾隆吉 教授 *2 による小説の動向の概観、西語。

第3部: 質疑応答 (司会者⇔講演者、聴衆⇔講演者)、前駐ベネズエラ日本大使の発言および客席の女性の方の質問も全て西語でした。


講演の内容については 「その2」 以降でコメント予定ですが、講演中、 "monticulebra" ( = monte y culebra、要は首都カラカス以外のいなかを十把一絡げにして呼ぶコトバ。私は "interior" と呼んでいましたが ) と云う懐かしい言葉を聞きました。その中でも特に Los Llanos (ジャノス --- サバンナ気候 *3 の大草原。アルゼンチンの大草原はパンパと呼ばれますが、違いは−−−多分気候と思いますが、不勉強なのでもう少し調べてみます) が話題にのぼりました。都市の利便性とはほど遠いものの、創作活動にインスピレーションを与える、と云うコンテクストで。


ベネズエラと云う国、日本で一般的に知られているのは恐らく石油、野球、ボクシング *4、 ミスコン、Oscar D'León (オスカル・デ・レオン) に代表されるサルサテーブルマウンテンで有名なギアナ高地、エンジェルの滝と、反米の旗頭チャベス大統領 *5 くらいのものでしょうか。−−−いや、遠い国なのでこんなに知られていれば十分かも。


ラ米の解放者シモン・ボリバル出生の地であるベネズエラも、自然のバリエーションが非常に豊かな国です。国土は大きく (1)マラカイボ湖周辺のマラカイボ低地、 (2)西部から北部に広がる、アンデス山脈を含むベネズエラ高原、 (3)オリノコ川流域平原のジャノス、そして(4)ギアナ高地 の四つの主要な部分に分けられます。前回コロンビアの国土を紹介したのと同じ地形図を示せば;



私は、上述の(4)ギアナ高地マルガリータ島および現在隣国ガイアナ領のグアジャナ・エセキバを除く主要なまちはほぼ全て、プロペラ機を含む飛行機および "por puesto" と呼ばれる乗合タクシーを含むクルマで何度も訪問しましたが、自然だけではなくそこに住む人たち、生活様式、言葉(方言)のバリエーションも加わり、どこへ行っても実に豊かな表情があるこの国は大好きです。例えば東京がそうである様に、首都カラカスやマラカイボの様な大都市の中にだって様々な表情がありますが、詩的なインスピレーションを与えてくれるのはやはり "monticulebra" ですね。


講演会で話題にのぼったジャノスの音楽であるホロポの有名な曲を紹介しますね。気候や風景のみならず、土の香りやら人のあり様まで想い出されます;



Alma Llanera *6

確か邦題が 『大平原児』 であるこの曲は、記憶に間違いが無ければ、私が高校生のころ聴いていた日曜日のラジオ番組のテーマ曲でした。司会者は誰だっけな? Wikipediaからその歌詞を以下抜粋します;

Yo nací en esta ribera
del Arauca vibrador
Soy hermano de la espuma,
de las garzas, de las rosas y del sol
Me arrulló la viva diana
de la brisa en el palmar
Y por eso tengo el alma
como el alma primorosa del cristal
Amo, lloro, canto, sueño
con claveles de pasión
Amo, lloro, canto, sueño
para ornar las rubias crines del potro de mi amador
Yo nací en esta ribera
del Arauca vibrador
Soy hermano de la espuma
de las garzas, de las rosas y del sol



日本語訳:


おいらはアラウカの轟の
河岸から生まれたのさ
おいらは泡の兄弟
サギの兄弟、バラの兄弟、そして太陽の兄弟なんだ
松のそよ風の
鮮やかなラッパに鎮められたんだ
それで水晶のように繊細な
魂を手に入れたんだ。水晶みたいなね
愛し、泣き、歌い、夢見る
カーネーションの情熱と一緒にね
愛し、泣き、歌い、夢見る
金のたてがみの愛する子馬を飾るために
おいらはアラウカの轟の
河岸から生まれたのさ
おいらは泡の兄弟
サギの兄弟、バラの兄弟、そして太陽の兄弟なんだ


でも;ジャノスだけではなく、アンデス山脈中のメリダギアナ高地の南西−コロンビア・ブラジル両国と国境を接するアマゾナス州の州都でありアマゾンへの入口であるプエルト・アヤクチョも大好き。


ミスコンとアマゾナス州について前述しましたからついでに紹介すると、2008年のミス・ユニバースである Dayana Mendoza さん *7 は、その前年の2007年にミス・アマゾナス (お生まれは86年カラカスですが) からミス・ベネズエラに選ばれました。きれいでしょう!


出典: http://www.camer.be/index1.php?art=2623


なおミスコンについてひとこと; これって別に人格や教養を競うコンクールでも何でもなく、単なるお遊び、あるいはビジネスです。私は女性蔑視とは思いません。モデルさんも多数参加していますし。ミスター・ユニバースがあったって構わないと思いますよ、私は興味ありませんけど。


脱線しそうですから、続く−−−

※ 09年11月04日: 一部リンク貼り直し


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*1:著作集は http://worldcat.org/identities/lccn-n98-25116 参照

*2:フェリス女学院大学国際交流学部准教授、現代ラテンアメリカ文学専攻。教員プロフィールは; http://www.ferris.ac.jp/kokusai/introduction/r_terao.html 参照。『翻訳家の密かな楽しみ』 url = http://www.ferris.ac.jp/kokusai/invitation/09.html は一読の価値アリ。実践派ですね、西語による講演も、ベネズエラスペイン語っぽくはありませんでしたが見事なものでした。『フィクションと証言の間で―現代ラテンアメリカにおける政治・社会動乱と小説創作 (単行本)』 出版社: 松籟社 (2007/01) ISBN-13: 978-4879842473 は、山岡朋子ファンクラブ会長としては当然読まなければならない著作。時間的な余裕は出来ましたから、久しぶりに丸一日図書館にこもって読んでみますか。その後改めて取り上げたい。

*3:Yahoo百科事典によると;

熱帯雨林気候と熱帯季節風気候の周辺にみられ、雨期(赤道低圧帯下)と乾期(中緯度高圧帯下)が明瞭(めいりょう)に区分される熱帯気候の一つ。熱帯草原気候ともいう。気温の年較差は8℃以下で小さく、雨期直前に最高気温となる。赤道無風帯および亜熱帯高気圧帯の影響もあり、年間通して風が弱い。赤道を挟む南北回帰線(南北とも緯度23.5度)の間に分布し、ブラジル高原(カンポが茂る)、オリノコ川流域(リャノ平原)、中央アメリカ西岸、オーストラリア北部、インドシナ半島デカン高原(レグール土が分布)、コンゴ盆地などがおもなサバンナ地域として知られる。乾期は地面がからからになり、樹木は落葉し乾眠し、草は枯れるのに対し、雨期には植物もふたたび活動を開始する。[執筆者:福岡義隆]

http://100.yahoo.co.jp/detail/%E3%82%B5%E3%83%90%E3%83%B3%E3%83%8A%E6%B0%97%E5%80%99/ より抜粋

*4:肝心なこのスポーツを忘れておりました。7月20日追記

*5:2009年5月8日付け 『チャベスからオバマへのプレゼント : 「収奪された大地 ラテンアメリカ五百年」』 参照。なおこの記事内で 「 --- その時代に南米の某国で暮らした経験 ---」 の南米の某国とは、ベネズエラのことです

*6:日本語版Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%8D%E3%83%BC%E3%83%A9 参照

*7:http://es.wikipedia.org/wiki/Dayana_Mendoza 参照