遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

顔の復元技術: シモン・ボリバルの場合

   ラテンアメリカ解放の英雄 シモン・ボリバルの肖像、デジタルで復活



解放者もさることながら、私個人的には顔の復元技術にもヒジョーに興味があります。シモン・ボリバル関連のニュース・レポートから少し拡げて見ますと;


Recibimos el rostro que vivirá siempre en la lucha de esta Patria
  24.jul.2012 / 07:28 pm, Blog de Hugo Chávez


遺体発掘の目的は大きく2つだった様で、顔の復元および死因の特定。いずれについても政府の公式サイトで、行われた作業の詳細および結果が公開されています。元々は法医学の分野の技術ですかね;


Simón Bolívar, El Libertador y Padre de la Patria Home


   Informe sobre la Reconstrucción Facial 3D

     今回発表された顔の復元。さすがに故人の写真はありませんが肖像画が存在するので、発掘した頭蓋骨と併せスーパーインポーズ法 (下掲) でちょこちょこっとやれば2年もかからないだろうに、と思いましたが−−− 実際には、法人類学をはじめ 法科学 5分野のエキスパートが参加した大がかりなもの。プロセス毎に、使用したソフトまで開示されているみたい。


   Informe Preliminar sobre las Investigaciones de las Causas de la Muerte

     死因に関する中間報告。これは今回パス。

   Archivo del Libertador

     シモン・ボリバル資料集、これも今回パス。



顔の復元3D画像作成に当たったのは、スペインはバルセロナに本拠を置く Visual Forensic 社;


VISUALFORENSIC Web 入口


  Forensic facial reconstruction of Simón Bolívar for Venezuelian Government
    Hot production news

   会社・業務の紹介など。


VISUALFORENSIC Facebook



顔の復元技術は、遺体を焼却してしまう日本の場合、身近なところでは犯罪捜査に使われることが多いでしょう。発見された白骨死体から元の顔を復元するとか;


犯罪関連用語の基礎知識 より抜粋;
 

  • 復顔法は、カービング Carving(彫刻)とも呼ばれる。身元不明死体が発見された場合、それが誰であるのかを特定する方法として、照合するべき写真がある場合は、スーパーインポーズ法で判明する確率が高いが、捜索願いが出されていなかったり、リストに入っているものの写真がなかったりする場合は、復顔法、つまり頭蓋骨の上に粘土で肉付けをして、生前の顔を復元する方法が用いられる。


    人の顔の骨から表面までの皮膚までの厚さは数多くの測定によって平均値が割り出されている。その数値を元に骨に肉付けをしていく。こうして再現された顔は、交番などで貼り出される「この人を知りませんか?」などというポスターに使われることになる。


    ひとつの「顔」を作り上げるのに最低1ヶ月かかるという。現在は科学警察研究所で開発されたコンピューター・グラフィックス(CG)を使った復顔法システムが威力を発揮している。


生物第二研究室 │ 法科学第一部 │ 科学警察研究所


復顔法の現状と今後の展望 / 科学警察研究所
  No.20, Summer, 1995.7.20 / 日本機械学会 バイオエンジニアリング部門報


スーパーインポーズ法 / 遺骨鑑定の新たな可能性を探る
  橋本正次さん講演記録 / 第一回人骨問題研究会報告、東京歯科大学法人類学研究室

  人骨 (ホネ) は告発する


法医学講義 個人識別 (白骨)

    法医学講座 講義ノート 目次



なお元々復顔法は、埋葬された頭蓋骨から著名人の実際の顔を復元するために発展、それが犯罪鑑定に流用され確立した様です。歴史の教科書などで、ネアンデルタール人やらクロマニヨン人の絵を見ましたが、単なる想像図では無いのですね。解放者以外の最近の例では;


取材現場から:古生物アーティスト ジョン・ガーチー / 猿人か ヒトの祖先か
  2011年8月号 / ナショナル ジオグラフィック(NATIONAL GEOGRAPHIC) 日本版公式サイト


ついでに、シモン・ボリバルの死因の特定は犯罪性の有無確認ではありませんが、最近の例では サルバドール・アジェンデ の遺体発掘調査から自殺説が裏付けられたり、近々 ヤセル・アラファト の遺体が発掘され、毒殺の疑いがあるため死因の特定が行われる筈。後者については、飛行機の墜落でさえ生き延びた鉄人があっけなく逝きましたからね。