遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

天災、人災 −−− 食糧危機拡大への序章?

昨年2010年は、ハイチの大地震から始まり例年に増して天災・人災・事故に明け暮れた感があります。で、今年は? 世界中のあちこちで様々なものが発生しており、気にはなるものの扱い切れません。最近のニュースヘッドライン眺めると、洪水に限っても、オーストラリア、ブラジル、スリランカ南アフリカでの発生が報道されていますし。


我々の暮らす地面より下の地殻変動地震、噴火など) には人間の関与する部分は殆ど無いと思われますし、地面より上の気象現象 (大雨やら熱低やら熱波・寒波など) については人間の関与が疑われるところはありますが、いずれの 「天災: natural disaster」 も、発生時・発生後の被害の拡大 (大雨 → 地滑りとか、地震 → 建物崩壊など) は 「人災: man-made disaster」 と呼ばれるべき部分が大きいでしょう。なお紛争・戦争、事故などは完全な 「人災」。

2010年は自然災害が多発、死者26万人に―米メディア
  Record China 2010年12月21日(火)13時53分配信


  −−−09年の世界の自然災害による死亡者数が1万5000人程度であったことと比較すると、今年がいかに突出しているかが分かる。死亡者数は過去約40年で最多を記録し、経済的な被害は香港の経済規模を超える2220億ドルに上るとみられている。 (引用終わり)


   正確な人数はさておき、この数字には天災に端を発する人災を含み、戦争・紛争・事故など完全な人災は除かれている、と解します。過去40年で最多とのこと、そうでしょうね。(でもハイチを除けば前年並みか? この辺り、最新版に基づく検証は行っていません)


  2010年、自然災害で4.3億人が被災=死者・行方不明8千人―中国
    Record China 1月16日(日)10時3分配信


  各地で異常気象、南部では10年連続で干ばつの予測―中国
    Record China 1月14日(金)19時50分配信


    −−−中国気象局国家気候センターの宋連春(ソン・リエンチュン)主任は「2010年の気象状況は特に異常だった。極端な高温と豪雨が頻繁に起こり、その激しさと範囲は歴史的にも稀なレベルだった」と指摘。その原因として、「エルニーニョ現象ラニャーニャ現象の関係」「極地の大気循環の異常」「気象記録上最強の西太平洋の亜熱帯高気圧の発生」「地球温暖化の影響」の四つを挙げた。


    なお、再保険会社大手、ドイツのミュンヘン再保険グループの報告では、2010年は世界全体で、自然災害で29万5000人が死亡し、約1300億ドルの損失が発生したことが明らかにされている。 (記事終わり、引用終わり)


災害リスク軽減 "disaster risk reduction" とは、災害全体の中で 「人災」 に相当する部分を減らしましょう、と云うことであると解します。 『地球温暖化』 と云うコトバに限って言えば極めて政治的なニオイがしますが、異常気象の頻発、より正確には大きな気候変動が起こりつつあるのは厳然たる事実なので、世界中で様々な活動が展開されています。例えば−−−

世界の洪水被害、2050 年までに20 億人に:国連大学(世界)
  NEDO海外レポート NO.940, 2004. 9. 22


   少々古いのですが、洪水に特化したものとしてよくまとまっていると思います。これより新しい版があるかも。


   元レポート、英語、Word


Global Assessment Report 2011
  PreventionWeb.net


   最新版はまだ未発行の様ですが、 Hyogo Framework に基づくもの。 ⇒ 都市防災連携・神戸 AUDRR (Alliance for Urban Disaster Risk Reduction) Kobe 参照。


  災害に強い国・コミュニティの構築に向けて:兵庫行動枠組(HFA: Hyogo Framework for Action 2005–2015 )


−−−ここまでが、天災・人災からいかに身を守るか、を主眼とした活動ですが、一方天災・人災の影響をモロに受ける食糧についても懸念があります。 「発展途上国」 だけのおハナシでは済まなくなって来ているかなぁ、と思います。最近の関連報道をほんの幾つかだけ挙げますと;

German food crisis likely 'criminal act'
  Sat Jan 8, 2011 5:30PM、PRESSTV


Food riots in Algeria; unrest spreads to Tunisia
  Submitted by WW4 Report on Thu, 01/06/2011 - 17:06


ロシアの穀物禁輸措置、延長の可能性=業界団体幹部
  ロイター 2010年 12月 21日 10:56 JST


  −−−2010年の収穫は6050万トンで、干ばつのため過去100年以上で最悪となった。09年は9700万トン、08年は1080万トンだった。 (以下略、引用終わり)


世界の食料輸入、83兆円突破へ=不作で値上がり―FAO
  (2010/11/17-21:46)、時事ドットコム


  −−−報告によると、2011年度の穀物生産は前年度比2.1%減の22億1640万トンの見通し。干ばつによるロシア産小麦の深刻な不作などを受け、6月時点の予想から6300万トン引き下げた。 (記事終わり、引用終わり)


世界の穀物価格はどの様に推移しているか? 私は相場に詳しくありませんが、食糧総合・農産物総合・小麦・とうもろこし・大豆・米の値動きを見ますと;




  
   1980年〜2010年12月


  
   2010年1〜12月
   年後半から全て上昇に転じています。


   External_Data-010711.xls 直
     データ出典も明記してあります。


Riots Coming? Global Food Prices Going Way Up
  Sourced from Food Politics, Posted at January 7, 2011, 12:06 pm @ AlterNet


  World Food Situation FoodPricesIndex / FAO

   


Food Politics » Price of food by Marion Nestle



上掲 FAO / 国際連合食糧農業機関 説明による価格上昇の要因は;

    1. Competition for cropland from the growth in biofuels
    2. Low cereal stocks
    3. High oil prices
    4. Speculation in food markets
    5. Extreme weather events


異常気候 (5) は要素のひとつ、つまり天災・人災により生産量が減少すると云う、供給の問題。また相場商品と云う性格から、投機資金による利ざや稼ぎによって価格がつり上げられる (3) (4) の影響も受けることになります。穀物やら石油のメジャーについては、 『ドル崩壊を背景にした穀物原油の価格高騰に便乗して儲けている』 と云う田中宇さんの観方があります。市場での動きは全て人災ですね。 その結果として食糧暴動が広がり、世界的な政治不安が加速するワケですから−−− あと、ここには挙がっていないが 『食の安全性』 も重要な要素。遺伝子組み換えの問題やら、家畜の疫病・大量 「処分」 など。


禁輸措置イコール保護主義という短絡的な発想が出て来ますが、お門違い。どの国だって自国需要を満たすことがまず先決。食糧ではないが話題のレアアースについて云うなら、資源の管理・採掘に当たっての安全性の確保などの結果、輸出が減るのは当たり前。坑内事故など起きると 『政府は人命を軽視している』 と騒ぎ立てるくせに、いざ自分の取り分が減るとなった途端に 『保護主義』 を持ち出して非難するのは矛盾の極み。


価格・為替変動やら輸出規制などは国外からの資源調達につきもののリスクですから、軽減・分散など外交も含めた長期戦略が必要。日本は先進国とは言いながら、食糧の大半を輸入に頼っています。大量消費・大量廃棄のシステムから抜け出せない某国べったりの日本は今のところ大丈夫、と云えるのか大変疑問。世界中からの借金のうえに成り立ち、覇権維持のために軍事支出を最優先し、肥大化した虚の経済を誇るその某国も先行きがかなり怪しい。親ガメがコケつつある、と云う危機感は、幸いにして? 殆ど無い様ですが。