遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

メキシコの麻薬戦争激化 ⇒ アメリカによるラテンアメリカの軍事支配の格好の機会

本年01月15日に少し触れましたが、メキシコの麻薬戦争はエスカレートする一方の様子。アメリカが絡むところ必ず麻薬トラブルあり、多数の無関係の市民を巻き込む人権蹂躙ありです。アメリカはトラブルがあるから介入するのではなく、むしろ介入することでトラブルを惹き起こし、状況を悪化させていると云えます。サダム・フセインタリバンがどれほどの残虐行為・殺戮を行ったとしても、アメリカが介入してからの残虐さ・犠牲者の多さの前にはひれ伏す筈。表向きとはいえ勝手な大義名分をふりかざして介入した結果、介入前より多くの罪の無い他国民が犠牲になる −−− これがアメリカの考える正義ですか??


これもいつも言うことですが、その性格からして当然違法である麻薬取引を無くしたいなら、力の行使が無意味であることは世界中で立証済み; 取引の旨みを消すしかないでしょう。本来アメリカは国内消費を徹底的に取り締まるべき。土地は余ってるでしょ、アリゾナの砂漠あたりに巨大収容所でもこさえてヤクが抜けるまで放りこんでおくとか。ところが現実は、アメリカは移民では無くかつ有色ではなくかつ裕福な自国民が自国内で行う違法な麻薬使用に関して寛容ですから自国民がヤク中になろうが構わない筈、いっそのこと全て合法化してしまうのも有効かも。違法だろうが脱法だろうがヤクをやりたい連中はやりますし、合法でもやらない人はやりませんから、合法化して需要が急増するとは思えない。アメリカが輸出でもしない限り供給も増えないだろうし、合法化することでアメリカの大好きな 「市場原理」 が働いて価格は大幅に下がるでしょう。加えて、マリワナは不勉強でよく知りませんが、一般論として麻薬はどう考えてもタバコよりも害が大きいですから、既に充分悪者とされるタバコよりも早く消費は減衰する筈。それは供給過剰および流通関係者の利益減を意味しますから、命を張る価値は無くなります。くどいとは思うが、供給があるから需要があるのではない; 需要があるから供給するのです。 『おいしい市場』 だから参入者が増えるのです、場合によっては警察やら政治家まで。儲かるから武器を調達して命を張ります。下手をすると一時期のコロンビアの様に、麻薬カルテルの軍事力が正規軍のそれを上回ることだってある。アメリカ国内問題に対する無策のツケを罪の無いメキシコ人やコロンビア人までが払わされている状況は異常。世界中に押し付けるのは、ジャンクフードと償還するつもりのない紙くずだけで勘弁して欲しいものです。


メキシコ麻薬戦争に改善の兆しさえ見えないのは、手に負えないのではなくて利害関係者が妨害しているからだろう、と勘繰りたくなります。以下、最近の状況を紹介しますと;

  • Cain, Kyl want troops on U.S.-Mexico border
    Tuesday, April 20, 2010, Washington Times


    不法移民をせき止める目的らしいのですが、麻薬も絡んでいる様子。上述の如く、国内無策のツケが回って来ているのでしょう。
  • To Reduce Violence, End the Drug War
    by David R. Henderson, March 31, 2009, Antiwar.com


    こんな観方もある、と云う例。確かに現在米墨国境で起こっている 「戦争」 は、禁酒法時代のものと似ているかも知れません。
  • México culmina el mes de marzo con 958 asesinatos
    MÉXICO DF, 2 Abr. (EUROPA PRESS)


    1月15日に引用した記事を参考まで掲載しますが、3月のペースを年に引き直すと11,500人ですよ。この5年間で最悪の月とのこと。(ちなみに1月計は937人)


以下、参考サイトの紹介;


Mexican Drug War - Wikipedia


World – Los Angeles Times - Los Angeles Times


CRS Report for Congtress: Mexico's Drug Cartels (PDF)
October 16, 2007, Colleen W. Cook - Analyst in Latin American Affairs, Foreign Affairs, Defense, and Trade Division


北の国から猫と二人で想う事


Mexico Theater | CounterVortex


Drugs and the Nation – Alternet.org

メキシコはラテンアメリカか、と云う議論は別として、実はこの状況下一番の懸念は、アメリカがラテンアメリカでの軍事プレゼンスを増やす絶好のチャンスとなり兼ねないこと。チャベスが神経尖らせる理由がよくわかります;

ラテンアメリカを軍事化する / ノーム・チョムスキー
最終更新:2010-04-19 19:05:11, みんなの翻訳


当ブログの主目的のひとつであるがこのところ自然災害やら何やらに埋もれ気味? の山岡朋子さん (横山朋子さん名) 翻訳 『ルス、闇を照らす者』 中に描かれている人権侵害は、アルゼンチン史実に基づくフィクションに止まらず、ラテンアメリカでのアメリカの国益のみを目指した軍事活動の結果として認識されるべきと確信します。それが過去のこととして終了しているならまだしもコロンビアでは現在進行中であるし、また新たに露骨な展開が始まっていますから、 『ルス』 は忘れ去られてはならない翻訳と思います。上掲チョムスキー教授記事の翻訳から抜粋しますと−−−

−−− アメリカ帝国の拡大を通じて、ラテンアメリカにグローバル戦略の第一義的重要性が置かれてきた。米国政府がチリのアジェンデ政権の転覆を画策していた1971年、ニクソン政権の国家安全保障会議は、米国は、ラテンアメリカを支配できなくて「世界の他地域で米国が画策する体制を樹立する」ことができるのか、との意見を述べた。南アメリカが自立に向けた前提である統合への動きを見せ、多方面の国際的な連携を確立し、国内の深刻な無秩序状態----とりわけ、巨大な悲惨と苦しみの中に暮らす人々を欧米化した裕福な少数派が支配する伝統的支配体制----に取り組み始める中で、米国は従来のラテンアメリカ支配政策をますます強化している。 −−−