遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

アンデスの悪魔 『 ピシュタコ / Pishtaco 』 の名を借りた犯罪行為: ペルー

南米 ペルー (ウィキペディア) でのおぞましい犯罪が摘発されました。スクワランならぬ人間の脂肪採取の犠牲になったのは 「上質の脂肪を持つ」 先住民の方々;

  • http://www.jiji.co.jp/jc/c?g=int_30&k=2009112000188
    殺害後の脂肪で化粧品?=「悪魔の再来」、被害者200人とも−ペルー
    (2009/11/20-11:17) 時事ドットコム


     【サンパウロ時事】南米ペルーの報道によると、同国警察当局は19日までに、先住民らをだまして無差別に殺害後、遺体から脂肪を取り出して外国業者に売り渡していたとして、密売組織メンバー4人を逮捕した。摘出された脂肪は欧州で化粧品製造などに使われたとされ、警察は関与が疑われるイタリア人2人の行方も追っている。 (以下略)
  • http://www.asahi.com/international/update/1121/TKY200911210160.html?ref=rss
    遺体から脂肪取り出し化粧品に? ペルーで大量殺人か
    2009年11月21日11時27分 asahi.com


    −−− 事件が起きたのは、首都リマから北東に約250キロのワヌコ県。警察当局は19日、4人を殺人容疑で逮捕したと発表。容疑者は旅人などを誘拐して殺害し、胴体から脂肪を取っていたと自供しているという。メンバーの自宅からは約17リットルの人間の脂肪が発見された。被害者は60人にのぼるとみられている。 (以下略)
    • この記事を掲載している World War 4 Report とは;
      http://www.ww4report.com/mission より抜粋;


      Mission Statement


      World War 4 Report has been monitoring the Global War on Terrorism and its implications for human rights, democracy and ecology since the immediate aftermath of 9-11. (中略)


       Why World War 4?


      The "World War III" envisioned in the Cold War was a devastating conflict between two monolithic superpowers. The Cold War, thankfully, never reached this climax. But now we are faced with its chilling sequel: the age of "asymmetrical" or "molecularized" warfare, in which a single globalized superpower faces an invisible, hydra-headed enemy which is everywhere and nowhere; in which the expansion of "free markets" is an explicit aim of military campaigns; and in which indigenous peoples, stateless ethnicities and localist/autonomist poltical models—the "Fourth World"—are increasingly targeted and conflated with the "terrorist" threat. The leaders of this new global crusade acknowledge openly that it will last generations. To emphasize that this new world situation requires a new kind of thinking, we have joined with those on the left and right alike that call this global conflict World War 4.
    • http://www.andina.com.pe/espanol/Noticia.aspx?id=xDD97aIb/Mo=
      Ministerio Público denuncia a integrantes de banda de "pishtacos" que comercializaba grasa humana
      (AND265084) Fecha: 19/11/2009 12:44 andina / agencia peruana de noticias


      Lima, nov. 19 (ANDINA).- Cuatro integrantes de una banda dedicada a la comercialización de grasa humana, conocidos como "pishtacos", y que habrían provocado la desaparición de al menos 60 personas en los departamentos de Pasco y Huánuco,  (以下略)


記事中紹介されている、判明しているだけでも60人 (=両州で届け出済みの行方不明者数) が犠牲となったと思われる犯罪の現場は以下の通り;


出典: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Peru_Topography.png
および http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Peru_Blue_Administrative_Map.png


この 『Pishtaco (Wikipedia ES) : ピシュタコ』 については様々な資料が確認出来ます。よくまとまっている研究資料としては例えば;

http://www.intcul.tohoku.ac.jp/~syoshida/LACS/Vol15/15suzuki.pdf
新世界の悪魔―植民地ペルーにおける「偶像崇拝」の宗教学的考察―
『新世界の悪魔―カトリック・ミッションとアンデス先住民宗教―』
ISBN-10: 4887308043
ISBN-13: 978-4887308046
発売日: 2007/12/20
大学教育出版、2007年)愛知県立大学谷口智子さん


目次より;

第三節 ピシュタコ─植民地主義批判の神話的象徴としての悪魔─..........125
1.「ピシュタコ」前史...............................................125
2.神話的イメージとしての「ピシュタコ」.............................126
3.供犠の象徴的意味.................................................130
4.脂肪と脂肪をとることの意味.......................................133
5.異人、すなわちコスモスを破壊する者...............................135
6.問われる研究者の位置づけ.........................................138
小結.................................................................142


以下、PDF126ページからの抜粋


−−−ピシュタコは、人の首を斬り、その血や脂肪をとって殺すと考えられているアンデス特有の悪魔である。地域によってさまざまな名称で呼ばれる (以下略)

人類学者加藤隆弘の分類によれば、

  1. ナカク(Nakaq)とは南方ケチュア語の動詞、ナカイ(nakay=首を斬る)に由来し、ペルー南部で主に使われている名称である。
  2. ピシュタコ(Pishtaco)とは北部ケチュア語の動詞、ピシュタイ(pishtay=首を斬る)に由来し、ペルー北中部で使われる。
  3. カリシリ(Carisiri)、カリカリ(Kjari-kari)は、ボリビアアイマラ語圏で使われるが、アイマラ語の動詞カリシニャ(carisiña=切る)に由来する。カリシリ(Carisiri)はカリシリ(Kharisiri)と表記されることもある。また、アイマラ語圏ではリキチリ(Likíchiri)と呼ばれることもある。リキチリ(Likíchiri)の語源になる動詞リキチャニャ(likíchaña)は脂肪を取り出すもの、肉をバラバラに切るものという意味がある。

加藤隆浩「ピシュタコ─アンデス世界における村落と都市の媒介者─」、杉本良男編、『伝統宗教と知識』、南山大学人類学研究室叢書第Ⅳ巻、1991年、121頁。


歴史的・文化的にどんな意味があるにせよ、今回の事件は、容疑者によると1リッターあたり US$15,000 ! のカネ目当ての犯罪の様です。ただしまだ不明な点が多い --- 欧州に販売した形跡が確認出来ない、そもそも人間の脂肪の 「闇市場」 の存在の有無は?、もう20年以上に渡って行われているとの情報がある、最近同地域で増えている誘拐との関係など --- ので、調査の結果を待たないと全容は見えません。お肌のすべすべしっとりを保つのに良いと言われているスクワランを作る原料となる深海鮫の肝油 (鮫も可哀そう) より更に希少価値が高い、などと云う馬鹿な迷信のためだとしたら、やりきれないハナシですね。そうだとしたら麻薬同様、需要を断たないと。