遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

翻訳家 山岡朋子さん その60  『ルス、闇を照らす者』 :  グアテマラのケース --- 本当の親を奪われた子どもたち

今日現在、中米の グアテマラ(ウィキペディア参照) が直面する最優先の問題は、日本ではその関心と認識の低さから殆ど報道されていませんが 干ばつによる飢餓 です。本年に入ってからだけでも既に460人が死亡し、今日現在約41万家族が飢餓にさらされている状況のため、グアテマラ政府は正式に "Estado de Calamidad Pública (public calamity)"--- 非常事態宣言 (激甚災害指定) の様なもの? --- を宣言、対外的にも発表されています;

http://news.yahoo.com/s/afp/20090911/sc_afp/guatemalapovertydrought_20090911233028
Drought-stricken Guatemala pleads for aid
AFP/File .Fri Sep 11, 7:30 pm ET–


GUATEMALA CITY (AFP) – Guatemala on Friday called on the international community to stump up 110 million dollars to help battle a famine and drought that has struck the Central American nation.


9月8日付けコロン大統領が行った正式な宣言は Mensaje del Presidente Álvaro Colom Declaratoria de Estado de Calamidad Pública で見られます;


この問題の背景などは、国際連合世界食糧計画HP内 WFPの活動 » 国別活動概要 » グアテマラ で確認可。以下、同機関の作成したハンガーマップを参考掲載します;


山岡朋子さん(横山朋子さん名)翻訳の 『ルス、闇を照らす者』 で --- 「本当の親を奪われた子どもたち」 --- として描かれた主人公ルスの物語は史実に基づくフィクションですが、出版後それを地で行く実例がアルゼンチンでは多数確認されています。以前からその存在は確認されていましたが、今回グアテマラでも以下正式報告がなされました;

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090912-00000012-cnn-int
軍が児童拉致、養子として売りさばくと グアテマラ内戦時代
9月12日17時51分配信 CNN.co.jp


(CNN) 中米グアテマラの政府調査委員会は11日、同国で1960年から96年まで続いた左翼ゲリラと右派政権の内戦時代、軍が少なくとも333人の児童を拉致し、外国に養子として売り飛ばしていた事実が明らかになったと報告した。被害を受けた児童の数はより多い可能性もある。


コロン大統領が設置した調査委がまとめた報告書で、昨年5月に1977年─89年の期間を対象に調査を開始していた。調べたのは計672件で、うち333人は明らかに拉致の被害者と判明した。多くは米国、スウェーデン、イタリア、フランスなどに養子となって渡っていた。拉致された児童が大人に成長した後、家族と再会出来た例もあった。 (中略)


グアテマラ政府によると、内戦時代には約4万5000人が行方不明となった。このうち、約5000人が子供とされる。死亡者は約20万人と推定されている。 (以下略)


ざぁ〜っとネットで検索してみると、上掲記事の直接の元は

http://edition.cnn.com/2009/WORLD/americas/09/12/guatemala.child.abduction/index.html?iref=mpstoryview
Guatemalan army stole children for adoption, report says

Story Highlights

  • Children stolen for adoption in the U.S., Sweden, Italy and France, report says
  • Some parents were killed, others were unharmed when soldiers came calling
  • Investigators examined period between 1977 and 1989, 'peak' adoption period
  • Reports says many more could have been taken, investigation underway

更に、地元紙に9月10日掲載された Sepaz / Suponen que mitad de adopciones fueron ilegales / Ligia Flores あたりがおおもとの記事の様です。なおレポートを作成したのは SEPAZ ( SEcretaría de la PAZ ) 、レポート本体は そのHP からダウンロード可;



ダウンロードのリンク: el Informe de Las Adopciones y Los Derechos Humanos de la Niñez guatemalteca, 1977 - 1989.、200ページ強、PDF


さてグアテマラの暗い歴史の舞台にも例によってアメリカが登場します。 Nunca faltaba esa vaina en America Latina --- ウィキペディアから一部抜粋しますと;

グアテマラの春


1944年から1954年まではグアテマラの春と呼ばれ、かつてないほど自由な空気の下に、各種の民主的な社会改革が進められた。


ハコボ・アルベンスはポプリスモ的政治家として土地改革などの政策を行ったが、これは次第に合衆国がグアテマラ共産主義化とのネガティブキャンペーンを張らせることになり、土地改革がユナイテッド・フルーツ (当記事末尾参照) の社有地に適用されることになると、合衆国の怒りは頂点に達した。反アルベンス派傭兵軍がエル・サルバドルから侵攻すると、軍の上層部はアルベンスを見捨てアルベンスは亡命。グアテマラの春は終わりを告げた(PBSUCCESS作戦)[3]。


グアテマラ内戦


CIAはグアテマラ社会の広い支援を得て、1954年、PBSUCCESS作戦と呼ばれる政府転覆を実行し独裁的な親米政権が生まれたが、これはグアテマラ国家に社会不安の時代をもたらした。1960年からグアテマラ内戦が始まり、36年間にわたるゲリラとグアテマラ政府の戦争は、1996年に平和条約の調印によって終わった。グアテマラの政治的暴力は1983年に終わり、それに続いて1985年以降は民主的な選挙が現在に至るまで行われ続けている。


アメリカの前科;うんざりさせられる介入についての詳細は、益岡賢さんHPより、2003年5月12日付け グアテマラ 一九六二年から一九八〇年代 あまり知られていない「最終解決」 (ウィリアム・ブルム著 キリング・ホープ 第37章より) および2003年5月5日付け 対ゲリラ作戦・クーデター・強制 ラテンアメリカにおける帝国の歴史 (ダグ・ストークス、2003年4月2日、ZNet原文) を紹介しておきます。


そうそう、グアテマラの国土は;


出典: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Guatemala_Topography.png


ついでにもうひとつ; 上掲ウィキペディアに登場するアメリカ企業 ユナイテッド・フルーツ (ウィキペディア参照) は元々鉄道会社であったのが何故かバナナで大成功した、中米・カリブで悪名高き会社です。United Fruit Company (西語版 Wikipedia) では相当辛辣に紹介されています;

Tenía muchísimo poder en los países centroamericanos ya que, con la colaboración del gobierno estadounidense, ayudaba al derrocamiento de sistemas democráticos y a la implantación de dictaduras represoras en aquellos países que presentaban hostilidades a su actuación empresarial. Es lo que dio lugar a que esos países o sus gobiernos fueran llamados "república bananera", ya que la empresa estableció líderes locales para poder favorecer sus intereses económicos.


蛇足ですが、このユニフル社の活動から 『バナナ共和国』 なるコトバが生まれました。侮蔑的な意味合いで使われることが多いのは、ウィキペディアによると 【最初に「バナナ共和国」と呼ばれ、実際にそれらの企業の影響が最も大きかったホンジュラスでは、ユナイテッド・フルーツ社の経理部長から大統領になった人物もいる。】 ってことですから。さて日本は何共和国ですかね?


さらに蛇足ながら、ユニフル社はM&Aを繰り返し、シンシナティの投資会社に吸収され、現在 "Chiquita Brands International, Inc." に社名変更され、日本にも法人 「株式会社ユニフルーティージャパン」 を置いて事業を展開しています。私個人的には、本年9月変更された日本法人社名に ユニフル の4文字が入っていることには嫌悪感おぼえます。そりゃぁ仕方が無い、80年代初頭中南米との関わりが出来た頃から黒いハナシばかり耳にして来ましたから、この会社の扱い品は徹底的にボイコットしてやりたいところ。バナナを買うときにも探すのはまず大好きな台湾産 (でもなかなかないんだよね、これが) で、無意識にチキータブランドのものを避けています。ただ、調達先 (自社農園) に中南米諸国が入っていますから、現地でまともな運営行っているのだったら応援したいのですが、アメリカの投資会社のものだから望み薄でしょうね。