遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

Child Marriage 〜 児童婚 かつ Arranged Marriage 〜 強制婚; イエメンの11歳女の子のケース

   不完全 あるいは 悪意のある報道 〜 イスラム侮蔑
   世界最年少の出産、 世界最高齢の出産 −−− 産まれた以上、おめでとう !


上掲過去記事 内で除外した、年少の女の子が強制結婚させられるケースに関して。イエメンの11歳の女の子が、自分の両親も含め、子どもに結婚を強制する親をYouTubeで批判。英語の字幕が付けられて世界中で閲覧されています (マララ効果?);


 
   7月21日アップ以来の累計閲覧数既に760万超え!
  記事: Yemeni girl's speech against child marriage goes viral
      Jul 23, 2013 on The Stream - Al Jazeera English


   ◆ 参考
    
     The Stream : Married at 11
     AlJazeeraEnglish, 公開日: 2013/06/03


Nada escapes child marriage
  July 18, 2013, NOW News


Seyaj Organization for Childhood Protection

   仲介しているイエメンの人権団体である弁護士事務所。


報道が正しければ、この8人兄弟のひとり Nada al-Ahdal さんは3歳の時から両親とは別居しておじに育てられています。ところが10歳と3ヶ月の時両親から彼女を結婚させる旨伝えられておじはびっくり仰天。イエメン出身の相手は新婦の年齢には頓着ないものの、サウジで稼いでいるため両親はハッピー。おじは新郎に電話し、彼女の意向を伝えた結果婚約は取り下げることに。その後、ラマダンを彼女と一緒に過ごしたいとの両親の意向で彼女を実家へ連れて行ったものの、間もなく彼女がいなくなった旨連絡が。母親がまた彼女を結婚させようとしていることを知り、おじは逃げ帰った彼女を伴って当局に駆け込んだ次第。調査の結果事実が確認されましたが、彼女の父親は告訴されることを恐れて謝罪したらしい。


幸いなことにこのおじが引き続き彼女の扶養義務を引き受けることになっており、既に弁護士も仲介に入っているし、これだけ事情が世界中に知れ渡りましたから、彼女は安全でしょう。ただ、家族は壊れてしまいましたが。時間はかかるでしょうが、いつか修復出来るとよいのですが。


同じ境遇に置かれている子は多い筈、確かに理不尽・可哀想とは思うし、他イスラム圏での類似例の報道 やら世界中の例から弊害も容易に想像は出来る。日本の法律から判断すると間違い無く犯罪。しかしこれは最終的にはイスラム・イエメンの中でしか解決出来ない問題と思います。イスラムを知らない非ムスリムや、イエメンの社会慣習などを知らないよそ者が無責任に口を出すことは反発を誘い、まして手を出すと最悪は尊厳殺人など思わぬ結果を招きかねませんから −−−


以下あまり深入りせぬ様、ウィキペディアの記載が正しいものとして上っ面だけ周辺事情を整理すると−−−



【年齢: Child Marriage 〜 児童婚】


イスラム教 / 結婚

  • 古典イスラーム法では、ムハンマドの妻アーイシャが9歳でムハンマドと結婚し初夜の性行為を行ったというハディースに基づき、女性の結婚最低年齢は9歳である。男性の結婚最低年齢は13歳程度である。しかし中東のイスラム教国を除く多くのイスラーム諸国では現在では15 - 18歳が結婚最低年齢である。 サウジアラビアイエメンオマーンなど人間は生まれたときから結婚する権利があると認める国もあり法制度上の下限が無い国もある。ただし結婚しても性行為は9歳になるまで不可としている。 (以下略、引用終わり)


イエメンの場合11歳なら理論的には結婚も性行為も可能の様ですね。まずこの部分を変えられるのか変えられないのか。


Middle East / Child marriage

  • Roughly half of Yemeni girls are married before 18, some by the age eight, even though Yemeni law set the minimum age for marriage at 15; but tribal customs have often flouted the law. In 1999 the minimum marriage age of fifteen for women was abolished; the onset of puberty, interpreted by conservatives to be at the age of nine, was set as a requirement for consummation of marriage. In practice "Yemeni law allows girls of any age to wed, but it forbids sex with them until the indefinite time they’re 'suitable for sexual intercourse'"/puberty. (以下略、引用終わり)


Marriageable age

  • Yemen: In practice, "Yemeni law allows girls of any age to wed, but it forbids sex with them until the indefinite time they are 'suitable for sexual intercourse'." Following the widely publicised divorce of a 10 year-old girl in 2008, and a 6 year old married, there have been public and parliamentary efforts to raise the age to 17 or 18. (以下略、引用終わり)


結婚適齢期

  • 前近代イスラーム法(シャリーア)では、女子は9歳から結婚・セックスが可能であり、男子も13歳程度で結婚可能である。現在でもイラン・サウジアラビア・イエメンなどイスラーム教世界の一部の国ではシャリーアが有効である。こうした制度や慣行が女子の意に反した結婚の強制の要因とならないよう、1956年に国際連合が採択した奴隷制度廃止補足条約 (引用者注; 後述) は、第2条にて、この廃絶のために必要に応じて適切な婚姻の最低年齢について定めることを明記している。 (以下略、引用終わり)

【自由意思: Arranged Marriage 〜 強制婚】


"Bridal Slave" と云う呼称もある様子。(年齢に関係無く)


『結婚する権利』 をうたっているのであれば、保護者あるいは親族が本人の意思を無視してまで結婚を強制出来るのか出来ないのかも問題。経済的な事情が絡めば、児童・人身売買となりかねない;


See also / Arranged marriage

   日本語訳は一般的に 『見合結婚』 となっていますが、実際には当事者の意思によらない強制婚ってのが実態に即しているかも。この記事からは他記事へのリンクが多数貼られています。そのうち日本のケースとして紹介されているのは;

   Arranged marriages in Japan / Miai
    見合い

     日本語版では 『結婚を希望する男性と女性が、第三者の仲介によって対面すること』 と定義されており、それは現代的には正しくても、 "Arranged marriage" の記事の主旨からは明らかにはずれています。自由意思による結婚の相手を探す手段に過ぎませんから。


でも実際には日本だって、両親が決めた相手と強制的に結婚させられるケースが少なくは無かったのはそんなに大昔のことではありませんよね。政略結婚なんてその典型。男女とも、今でもあるのでは? 年齢の問題は無い筈ですから、割り切れば快適かも。



【比較: 日本の場合】


現代日本の場合婚姻の成立要件として当件と関連する部分は;


婚姻意思の合致 / 結婚

  • 婚姻には、まず実質的要件として婚姻意思の合致が必要である。日本国憲法第24条1項は「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」と規定する。「婚姻意思」とは何かという点については、婚姻という身分行為に必要な届出をなす意思であるとする形式的意思説もあるが、通説は婚姻届出を出す意思を有するとともに社会通念に従って夫婦と認められる生活共同体を創設しようとする意思をいうとしている(実質的意思説、実体的意思説)。婚姻意思が存在しない場合(婚姻意思の欠缺)の婚姻は無効である(742条1号)。 / なお、成年被後見人が婚姻をするには、その成年後見人の同意を要しない(738条)。 (以下略、引用終わり)

   日本国憲法第24条 ‐ 通信用語の基礎知識
   民法・第4編


婚姻障害事由の不存在 / 結婚

  • 日本における婚姻適齢は男性は18歳以上、女性は16歳以上である(731条)。心身共に未熟な女性が早期に出産して育児ストレスや経済的な理由で子供を殺す事件が後を絶たない事と、男女平等の時代において不平等だという論議もあり、また女性を道具としての扱いだった時代の名残を残すもので、男女共18以上に変更しなければならないと言われる。 (以下略、引用終わり)

   民法 第七百三十一条  男は、十八歳に、女は、十六歳にならなければ、婚姻をすることができない。



【国際機関による対応の試み】


欧米の価値観を押し付けている様に感じられる 「鼻に付く」 対応も多そうですが、実際に活動して見ればすぐに壁にぶちあたる筈。それを乗り越えて活動しているであろう機関や関連報道を、目に付いた範囲で幾つか紹介;


条約の要点 / 奴隷制度廃止補足条約

  • 1956年9月7日の国際連合経済社会理事会に関する全権会議にて採択され、第13条の規定により1957年4月30日に発効した。2013年現在の加盟国は123カ国であるが、日本は現在も署名も批准もしていない。
  • 第1条は、債務奴隷制度、農奴制度、(c)項では「(i)女子が、その父母、後見人、家族またはいずれかの他の者或いは集団による金銭または現物による対価の支払いによる、婚姻を約束されられ又は婚姻させられ、それを拒む権利を有していない場合を(ii)女子の夫、夫の家族又はその一族が、受け取る価値と交換に、又は他の方法で、他のものに女子を引き渡す権利を有する場合を(iii)女子が、夫の死により他の者に相続される場合を、それぞれ禁止する必要なあらゆる立法措置とその他の措置をとる」ことを明記している。 / 第2条は、(c)項の実現に必要な婚姻の最低年齢の制定を求めている。 (以下略、引用終わり)

   Supplementary Convention on the Abolition of Slavery(英語正文)

    • SECTION I. - INSTITUTIONS AND PRACTICES SIMILAR TO SLAVERY / Article 1 / (c) Any institution or practice whereby: / Article 2 / With a view to bringing to an end the institutions and practices mentioned in article I (c) of this Convention, the States Parties undertake to prescribe, where appropriate, suitable minimum ages of marriage, to encourage the use of facilities whereby the consent of both parties to a marriage may be freely expressed in the presence of a competent civil or religious authority, and to encourage the registration of marriages. (以下略、引用終わり)


結婚を強要される少女たち
  March 15, 2013、ナショナルジオグラフィック ニュース

  若すぎる花嫁、ベスト報道写真2011
    February 16, 2012


Girls Not Brides (NGO)

  Lubna’s story, Yemen
    Published: Wednesday 3rd Apr 2013


子どもに結婚の選択権を—インドにおける児童婚
  翻訳掲載 2013/04/27、Global Voices


児童婚 ユニセフの主な活動分野 日本ユニセフ協会



ついでに、当件と何らかの関わりがあるのかは別として、興味本位で語られることの多いイスラムの一夫多妻制について;


イスラームにおける一夫多妻制

  • イスラームにおける一夫多妻制は法源コーランとするイスラーム法的制度である。男性は4人まで妻を娶ることができる。しかしコーランの規定上、夫は妻を保護し扶助を与える義務があり、またそれぞれの妻のあいだに差異を設けることは決して許されない。これらの条件を満たせないときは一夫一妻が奨励され、夫が義務を怠ったりそれぞれの妻の扱いに差異を設けた場合は離婚申し立てと賠償の根拠となりうる。ただし、この妻を平等に扱う規定に対しては、実際のイスラームの歴史において特に強調されるようになったのは、近代に入り女性の人権を擁護する動きが強まってからである。近代以前は、(イスラームに限ったことではないが)やはり女性の権利は制限されていた。 なお、東京イスラミックセンターWebSiteの「イスラム教入門」では、「人間の男性の性の能力は一夫一妻制を遥かに超えており、不自然な姿である」としている。 / 4人までと明言されているが正当な理由があれば5人以上の妻を持ってもよいとされている。実際にイスラム教国の王侯貴族には5人以上の妻が公式にいることはめずらしくなく、5人目以降の妻の子であっても継承権などにおいて差別されることはない。 正当な理由かどうかの判断はウラマーによって行われ、5人目以降の妻を持つ場合にはウラマーに申し出て正当な理由であることを証明するファトワーを発行してもらう必要がある。 (以下略、引用終わり)

   イスラミックセンタージャパン あるいは 東京ジャーミイ ではなく 『東京イスラミックセンター』 なるサイトは見付けられませんでしたが、以下参照;

  なぜイスラームは一夫多妻制を認めるのか
    イスラームという宗教


イスラム教 / 結婚

  • イスラム法における結婚では一夫多妻制が特徴として挙げられるが、経済的な事情もあり実際に複数の妻を持っている人物は少ない。 サウジアラビアの初代国王であるイブン・サウードは国を平定するために100以上ある国内の主要部族の全てから妻をもらっているため百数十人の妻が居たといわれている。このため初代国王の王妃が何人いたのか国王本人やサウジ王室自身も含めて把握できていないがイスラム社会における結婚の最多事例と言われている。サウード王家は一夫多妻結婚を繰り返しているため、初代国王の子孫は鼠算式に増えて5世代で2万人以上にまで増えた。 (以下略、引用終わり)




これらはほんの一部でしかありませんが、 『みんなちがって、みんないい』 と云う響きの良いコトバ、実際には大変重いものです。どこまで 『ちがって』 も 『みんな』 と認めるのか。周辺事情を考えると 『西側』 の規範だけが正しいとは言い切れないし、『みんな』 にならって 『ちがい』 を直すにしても、各国上下院で採決してハイ解決、ってワケにも行かないレベルのハナシも多いし。国やその構成Gr.の主権にも関わる問題ゆえ、地域単位・宗教単位などで差や違いが出るのは致し方ないのでは? 助言やら圧力はかけるにしても、最終的に決めるのは当事者。

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