遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

コロンビア: イングリッド・ベタンクール さんのこと

炭鉱・鉱山事故関連のニュースをコロンビアのサイトで探していましたら、 イングリッド・ベタンクール さんがアルゼンチン訪問時同国の LA NACION 紙の取材を受けた記事が目に留まりましたので、新書籍の披露も兼ねて以下イングリッドさんを紹介;


【インタビュー記事】


"En Colombia me trataron peor que a una criminal"
  Jueves 11 de noviembre de 2010, lanacion.com (Argentina)

  "En Colombia me trataron como a una criminal": Íngrid Betancourt
    Publicado el 11 de noviembre de 2010 (El Colombiano 紙掲載)


  −−−-¿Y va a volver a Colombia?

  −No, ya no tengo ganas de volver. No me dan ganas. Obviamente es un dolor muy fuerte porque yo amo a mi país y a los colombianos [se emociona].


   イングリッドさんはフランス国籍もお持ちですが祖国はあくまでコロンビア。引用した言葉は、 「自由」 だの 「人権」 だの 「民主主義」 だの標榜する現コロンビア政権にとって恥ずべきことと思いますがね。



【Íngrid Betancourt Pulecio さん】


Íngrid Betancourt - Wikipedia
Íngrid Betancourt — Wikipédia


イングリッド・ベタンクール - Wikipedia

  −−−コロンビア衆議院議員参議院議員を経て、コロンビア大統領の候補者となっていた2002年2月23日、コロンビア革命軍(FARC)に誘拐されたまま、6年半の捕虜生活の後、2008年7月2日にコロンビア国軍によって解放された。 (中略)


Íngrid Betancourt - Wikipedia, la enciclopedia libre

   なお記事中の Gestiones para su liberación に "  −−−El gobierno colombiano permitió que la senadora Piedad Córdoba y el presidente de Venezuela Hugo Chávez, participaran como facilitadores para el acuerdo humanitario en agosto de 2007." の記載があります。人質解放交渉に携わって来たこの Piedad Córdoba さんは最近、 FARC (コロンビア革命軍) *1 に協力したとして罷免されています。イングリッドさん同様、親米現政権にとって 「煙たい」 存在なのでしょう。事情をよく知るフィデルなどは即座に抗議していますね;


   
  出典: ウィキペディア(西語版)
  右端がピエダさん、その隣が先日他界されたネストル・キルチネルさん、その隣は−−−


  Piedad Córdoba y su lucha por la paz
    30 Septiembre 2010, Reflexiones de Fidel @Cubadebate

  La senadora Piedad Córdoba, destituida por haber colaborado con las FARC
    BOGOTÁ, 27 Sep. (EUROPA PRESS)



【新刊:No hay silencio que no termine / Even Silence Has an End】


ペーパーバック: 712ページ、出版社: Aguilar (2010/9/21)、言語 スペイン語
ISBN-10: 1616052430 / ISBN-13: 978-1616052430、発売日: 2010/9/21
  
  出典: Amazon.co.jp


  Ingrid Betancourt's Six Years In The Jungle
    November 12, 2010, NPR (NPR - Wikipedia)



  Ingrid Betancourt: "Even Silence Has an End: My Six Years of Captivity in the Colombian Jungle"
    September 27, 2010, DEMOCRACY NOW !

  We continued the interview after the live broadcast. Watch Part II of the interview

  Part II...Ingrid Betancourt: "Even Silence Has an End: My Six Years of Captivity in the Colombian Jungle"
    September 27, 2010, DEMOCRACY NOW !



【誘拐〜解放までの6年半】


Ingrid Betancourt Libre


誘拐されている間にも、ご家族に宛てた手紙やら、先に解放された方々からの情報などが報道されていました;

  "Aquí vivimos muertos"
  ELPAIS.com - Madrid - 01/12/2007

  Estoy cansada de sufrir
  Sábado 1 Diciembre 2007 @ Semana.com

  Se apaga Ingrid
  Sábado 29 Marzo 2008 @ Semana.com


http://www.betancourt.info/indexFr.htm
   日本語表示可!

  ジャングルでの苦しみの三年間 / 2005年4月2日

     この記事は誘拐されてから3年目のもの。 「私は社会のために殉死した英雄になどなるつもりは無い。人々が平穏に年老いていくことの出来る社会を作りたいだけ。」 の言葉には大きな共感を覚えます。



最近、コロンビアで2度誘拐され無事解放された元山梨県議でいらっしゃる志村昭郎さんの著書 『私はコロンビア・ゲリラに二度誘拐された』 (株式会社ランダムハウス講談社、2004年12月15日第1刷発行) を読み直したところ。志村さんの誘拐は、1回目がFARCによるもので1998年9月22日〜99年2月25日、2回目がゲリラ集団によるもの (最終的にはFARCへ転売? された) で2001年8月31日〜同年10月18日 *2 ですから、その後イングリッドさんは誘拐されたことになります。志村さん誘拐は営利目的/イングリッドさん誘拐は政治目的の違い、囚われていた場所・期間の違いはありますが、FARCの人質になったのであれば、厳重な監視下とは云え志村さん同様、野蛮な扱いは受けなかったのではないか、と想像します。


ただし誘拐そのものが卑劣な犯罪であり大きなストレスを生むことに変わりはありませんから、6年半の人質生活は、コロンビアの問題を熟知したイングリッドさんをも疲労困憊させ、無力感を味わわせるに充分過ぎるものであったでしょう。おまけに解放後のコロンビアでの扱いには大きな失望を感じられた様ですし。非常に極端な観方をするなら、イングリッドさんは、厄介払いのためFARCに 「売られた」 のではないか、とも思えます。生還出来ないことを想定して−−−


志村さんもイングリッドさんも、その経歴や目指すところは違ってもコロンビアを愛する気持ちは同じと思います。志村さんの著作を読んでそれを特に感じましたね。一度ターゲットにされたら24時間SPでも張り付かせない限り逃れられませんから、誘拐されたのは不注意だったから、とは言えません。避けるためには国外へ出るしか方策が無い。何故コロンビアでそんなことが頻発するのか、何故FARCの様な組織が50年近くも存在し続けることが出来るのか、何故内戦状態が50年近くも続いているのか。解決のヒントをお二人なりにお持ちの筈。正義のコロンビア政府 対 テロリストFARC、の単純な図式で捉えている限り、コロンビアの問題は解決しないでしょう。FARCの犯罪を正当化などしませんよ、それを問題にするなら、政府のやっていることはどうなのだ?も問わざるを得ない。


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*1:*細かい検証は行っていませんが、日本語版は上っ面を撫でただけの要約記事の様です。西語版 Fuerzas Armadas Revolucionarias de Colombia - Wikipedia, la enciclopedia libre の分量とは比較になりませんし。

*2:海外における誘拐対策Q&A / 外務省領事局 も参照