遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

原爆投下は本当に必要であったのか?

2010年7月9日付け 「原爆の功績」 問う論争 ?? 速報 - 翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記 および7月24日付け ドイツ ポツダムの 「ヒロシマ広場」 に被爆者追悼碑: 明日2010年7月25日除幕式 - 翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記 にて紹介しました、当時のトルーマン大統領による原爆投下決断の是非について幾つかの考察記事を紹介。アメリカを筆頭に日本まで含めた 「国際社会」 のなかでそれが 「止むを得ないものだった」 として認識されている限り、核廃絶なんて達成出来ないと考えるので;

ハリー・S・トルーマン - Wikipedia

  • −−−1945年4月の時点で原子爆弾の完成予定を知っていたトルーマンは、核の力でソ連を抑止できるという考えがあった。日本への原爆投下命令はポツダム宣言発表の一日前、7月25日に行われていた。共和党の大物の面々が日本への原爆使用に反対していたこともあって、トルーマンは投下決定を共和党側には伏せたまま、先にスターリンに知らせた。共和党共和党系と見なされていた将軍たちに原爆投下決定が伝えられたのは投下の二日前であり、これは「反対を怖れるあまり自国の議員よりも先にソ連に知らせた」と共和党側をさらに激怒させた。この原爆の日本への使用については、後に共和党大統領となるアイゼンハワーなどが猛反対しており、共和党支持者の米陸海軍の将軍たち(マッカーサーも含む)は全員が反対意見を具申している。アイゼンハワーに至ってはスティムソン陸軍長官に対し「米国が世界で最初にそんなにも恐ろしく破壊的な新兵器を使用する国になるのを、私は見たくない」(1963年の回想録)と何度も激しく抗議していた。


    トルーマンが原爆投下を決定した背景として、アメリカ軍の損失を最小限に止めること、実戦での評価、戦後の覇権争いでソ連に対して優位に立つという目的があったとするほか、人種的偏見があったとする説もある。トルーマンは二発目の長崎投下後「さらに10万人も抹殺するのは、あまりにも恐ろしい」として、3発目以降の使用停止命令を出した。


    トルーマンは公式的な場でも原爆投下を正当化し続けていた。またトルーマンが日本へ計18発もの原爆投下を承認していた事実がワシントン.ポスト紙にスクープされている。陸軍の完全な機密保持下に行われた原爆開発は戦後見直しを計られ、トルーマンは1945年10月に議会に対し原子力に関する教書を送った。それは原子力開発に関する管理体制についての物であった。翌年の8月には原子力法案が成立し、原子力委員会(AEC, United States Atomic Energy Commission)が作られた。1953年1月7日にトルーマンは、水素爆弾の開発を発表した。こうしてトルーマン自身は生涯、原爆投下を正当化してみせたが、この行為は人類史上、ヒトラーによるアウシュヴィッツユダヤ人大虐殺に匹敵する人類史上最大の犯罪として記憶されるが、アメリカでは未だに「戦争を早期終結に導き兵士の命を救った大統領」という評価が定着している。 トルーマンは原爆投下について1958年のCBSのインタビューで「まったく心が痛まなかった」と語っている。 (以下略)

Hiroshima & Nagasaki: The inside story — again
L. Reichard White, August 06, 2010, ANTIWAR.BLOG

  • −−−Its leaders had to justify the $2 billion ($26 billion in today’s dollars) expense to Congress and the public. (中略) "One bomb justified Oak Ridge, the second justified Hanford." Hiroshima was hit with the uranium bomb, nicknamed "Little Boy"; the plutonium bomb, "Fat Man," was used against Nagasaki. ("Why We Dropped The Bomb" By William Lanouette, CIVILIZATION, The Magazine of the Library of Congress, January/February 1995 からの抜粋)
  • −−−Here’s what Vietnam era U.S. Defense Secretary Robert S. McNamara – who was part of Gen. Curtis LeMay’s command when the bombs were dropped – thought about it:


    McNamara: "He, and I’d say I, were behaving as war criminals."
    • 補足説明:2009年7月11日付け オバマ新政権の軍事政策 Watch: その11 ロバート・マクナマラさん死去 - 翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記 で紹介した、故マクナマラ元国防長官のビデオは:





      これは多分、 Was Jane Right? - Antiwar.com Original に記載されているビデオクリップ6番と殆ど同じ、字幕が付いていますからこれを紹介。マクナマラさんは結局 「ベトナム戦争の泥沼化」 をもたらしたとの汚名をそそぐことは出来ませんでしたし、自己弁護に過ぎないとの批判もありますが、過去の過ちを認められたと云う意味で私は評価します。ただこのビデオで原爆投下が必要無かったと云う理由は、それまでに東京や横浜などへの空襲で国土の相当部分を焼き尽くし市民何十万人も殺したのだから、 propotion (つり合いとか規模の意味) からして無意味、と云うこと。原爆の非人道性と云った観点ではなく、戦略的に考えたとしても更なる殺戮は不要であった、と云う意味ですね。また記事中引用されているコトバ "He, and I’d say I, were behaving as war criminals." の部分は前提があって、それは 「もしこの戦争に負ける様な事があれば」 と云うこと。当時その可能性はゼロだった訳ですから、勝てば戦争犯罪にはならないと云う認識があった訳です。

他記事

  • 65 Years After Hiroshima: Truman’s Choices
    By Stanley Kutler, Posted on Aug 6, 2010 / Truthdig


    −−− , it is common wisdom that Truman had only two simple, stark choices: to use the (atomic) bomb or invade and suffer a “million” casualties. The options of naval blockade and “conventional” bombing quickly dissolved, and over time they have disappeared. (以下略)


    トルーマンはこの2つの選択肢しか無いと思い込んでいた訳で、それなら、いずれにせよ敵国 (日本) 側の犠牲のことは眼中に無かった訳ですから原爆投下を選んで当然。では問題は、何故もうひとつの選択肢 −−− 恐らく軍のエキスパートの主張は、今まで通り兵糧攻めと通常兵器での爆撃を続ければ日本の降伏は時間の問題、と云うものだった筈 −−− が除外されたのか、と云うことでしょう。ロシアへの威嚇とか、核開発続行の予算を正当化するために兵器の威力を実証したかったから、など様々考えられます。


以上は過去の事実に関する考察ですが、以下現在進行中であり、私が大変気にしていることを扱った記事を紹介;

Nuke U / How the University of California is helping to blow up the world
by Norman Solomon, August 07, 2010, ANTIWAR.COM

  • −−−Since the early 1940s, UC has managed the nation’s top laboratories for designing nuclear bombs. Today, California’s public university system is still immersed in the nuclear weapons business.


    Sixty-five years after the atomic bombings of Hiroshima and Nagasaki on Aug. 6 and 9, 1945, the University of California imprimatur is an air freshener for the stench of preparations for global annihilation. Nuclear war planners have been pleased to exploit UC’s vast technical expertise and its image of high-minded academic purpose.


    During most of WWII, scientists labored in strict secrecy at the isolated Los Alamos lab in the New Mexico desert, making possible the first nuclear weaponry. After the atomic bombings of Japan, UC continued to manage Los Alamos. And in 1952, when the government opened a second nuclear bomb generator, the Lawrence Livermore National Laboratory east of San Francisco, UC won the prize to manage operations there, too. (中略)


    −−−For sure, there’s plenty of money sloshing around to reward the masters — and academic servants — of the nuclear weapons industry. But should the University of California be managing laboratories that design the latest technologies for nuclear holocaust?
      • Lawrence Livermore National Laboratory uses advance science and technology to ensure that the US’s nuclear weapons remain reliable.
      • Los Alamos National Laboratory focuses most of its work on ensuring the reliability of the US's nuclear weapons.


官民一体とか産学共同とか産学官連携と云う言葉がありますが、このUC (カリフォルニア大学) のケースは産学官連携に当たるのでしょうか。『官』 は国防機関、 『産』 は軍事産業でしょう。すると 『学』 の役割は、兵器製造に当たっての基礎研究を専門に扱う部門と見ることが出来ます。それを構成するのは教授やら研究員と云った、いわゆる 「科学者」 ですね。私の偏見でしょうが、いわゆる 「象牙の塔」 に閉じこもった方々は、その能力はずば抜けてはいるものの、自分のやりたい研究が出来ればそれでよい、浮世離れした世間知らずのタイプが多いのでは。上掲 『マンハッタン計画』 が現在は国策としておおっぴらに行われている訳で、それに大学が関わることの是非は議論されるべきでしょう。国防機関および軍事産業の言いなりに使われている様な気がします。海千山千の彼らに対して、自らの信条に基づき賛同出来ないことに関して抵抗出来るだけの cojones *1 のある人間がいればまだしも、 「正義」 だの 「愛国」 だのレトリックを振り回され札束で横っ面を叩かれれば喜んで従うのが多いのが趨勢ですから。


マンハッタン計画で原爆開発を行っていたシカゴ大学冶金研究所 (メト・ラボ、Metallurgical Laboratory) の科学者が提出したが拒絶された、日本に対する原子爆弾の無警告での使用に反対する報告書 『フランクレポート - Wikipedia』 (和訳版) を紹介します。日米問わず、勘違いした科学者のセンセイ達にも良く読んで欲しいものです;

政治的,社会的問題についての委員会報告 / マンハッタン計画「冶金研究所」(フランク報告)
June 11, 1945


−−− 科学者は,互いの平和を増進するのではなく,国どうしの相互破壊のために新しい兵器を作ってきたとしばしばこれまで非難されてきた.たとえば,飛行機の発明は,楽しみや人間の利益よりも悲惨をより多くもたらしたことは疑いない真実である.しかしながら,過去において科学者は,かれらの純粋な発明に対して人類が見つけた利用方法については,直接的な責任を否認することが出来た.我々は今日おなじ姿勢を取ることはできない.なぜなら原子力において我々が成し遂げたものは,過去のすべての発明よりも限りなく大きな危険に満ちているからである.核科学の現状について知っている我々は皆,我々の目の前で突然の破壊がわが国を襲うという悪夢,真珠湾攻撃の千倍の規模の破壊がこの国のすべての大都市で繰り返されるという悪夢とともに生きている. (中略)


III. 合意の見通し (※ この項で、日本への原爆投下について述べられています。以下、その一部抜粋)


−−− したがって,核戦争防止での国際協定を期待しているという「楽観的な」観点からの,日本に対する原子爆弾の突然の使用によって達成される軍事的利点やアメリカ人の生命が救われるという利点よりも,結果として起こる,他国を覆い尽くすであろう信用の失墜と恐怖と反発の方が重大かも知れず,また恐らく自国の世論さえ二分するだろう.この観点から,新しい兵器のデモンストレーションは,砂漠か無人島で,すべての連合国の代表の目の前で行うのが最善であろう.アメリカが世界に向かって次のように言うことができるなら,国際協定を達成するための最も良く受け入れられる社会的雰囲気を達成することができるだろう.「あなた方は,私達がどんな武器を持っているかを,そしてそれを使わなかったことを知るであろう.我々は,将来,その使用を放棄し,他の諸国と協力してこの原子兵器の使用についての適切な監視体制をつくり上げる用意がある.」


 これは空想的に聞こえるかもしれないが,しかし原子兵器においては,破壊力のスケールにおいて全く何か新しいものがある.そして,それを所有しているという我々に与えられた利点を完全に利用したいのならば,我々は新しくかつ想像的な方法を用いなければならない.そのようなデモンストレーションの後に,連合国(そして自国の世論)の承認が得られ,そしておそらく降伏勧告の,または少なくとも目標の全面破壊を避けるためにある地域から避難させるための事前の最後通告の後に,日本に対してこの兵器が使用され得るであろう. (以下略)


マンハッタン計画に実際に関与していた委員会としての制約の中で可能であった、恐らく最善の発信であろう、と私は評価します。


結果としてトルーマンは、軍事エキスパート・科学者の意見を無視して原爆投下を決定したことになり、文民統制 -シビリアン・コントロール- において、文民の政治家が暴走した例だろうと思います。現在のアメリカの状況は更に危機的: 政治家と軍隊が揃って暴走し、選挙により選出された代表を通じて国民が軍事に対して最終的判断・決定権を持つと云う民主主義の基本原則が機能していないと思われますから−−−

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*1:スペインの隠語、意味は○○玉(2文字伏字)ですが、要は「気骨」