遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

人の命には軽重も優先順位もある −−−??

『人の命に軽重はない』 と云う基本理念そのものは理解も合意も批准もされ易いものの、実際に適用するとなると1国の中でさえ刑罰・中絶・終末医療・優先順位の有無など様々な問題を内包しています。では国際関係、とりわけ覇権国の他国に対する介入行為においてはどうでしょう:

世界人権宣言 - Wikipedia

  • 原文 (と云うより英語): Universal Declaration of Human Rights - Wikipedia より


    Article 1


    All human beings are born free and equal in dignity and rights. They are endowed with reason and conscience and should act towards one another in a spirit of brotherhood.


ところが実際には;

Are Foreign Lives of Equal Worth to Ours?
by Adil E. Shamoo, June 19, 2010, ANTIWAR.COM


When a U.S. civilian is murdered in a foreign land or in the United States, we rightfully feel angry, sad, and some of us demand vengeance. These are normal, primordial, and instinctive feelings of group loyalty and herd mentality that have bound communities and countries for thousands of years. Should such human traits, which are often beneficial, emotional and irrational, continue to justify the retaliatory killing of innocent civilians in the 21st century? (中略)


The U.S. military has achieved a killing machine that is less encumbered by popular views of war than at other times in our history. The military has mechanized and contracted out the war machinery in order to minimize the impact on U.S. citizens. The mechanization of the war can be potentially beneficial to individuals, but also very dangerous to our democracy.


This mechanization of war has also resulted in treating other nations’ citizens as less than equal to citizens of the United States. U.S. military actions kill innocent civilians in a repeated and almost routine manner. However, modern communications are informing people around the world that U.S. policies value other citizens less than its own. The human instinct of herd mentality can’t serve as justification for the indiscriminate killing of civilians outside U.S. borders.


上掲記事で問題とされているのは、 「正義の戦争」 に巻き込まれた "civilian casualties" だけの様ですが、更に深い問題は;


http://video.google.com/videoplay?docid=-3739500579629840148&ei=Gq3LSO-GLIHCjgKYjf22Ag#

  • このページ中のビデオ "The War On Democracy by John Pilger" (1時間34分弱) は、アメリカがカリブ海中南米で過去展開した恥知らずの犯罪: 成功した・失敗したクーデター、人権侵害への積極関与など およびアメリカ政府の嘘・欺瞞を告発するものです。これらが誇張や嘘だと思いますか? John Pilger - Wikipedia さんの告発を覆せる反証は私の知る限り提示されていない筈。なおこのビデオはDVD化されています;


当ブログのコアとして据えている (つもりの) "A veinte años, Luz " の原作者 Elsa Osorio さん、あるいはその翻訳 『ルス、闇を照らす者』 の翻訳者山岡朋子さん(横山朋子さん名) 、 「西側」 の人権団体がどこまで認識・意識されているかはわかりませんが、アルゼンチンで起きたおぞましい犯罪行為は、アメリカが中南米で直接・間接に展開した反共政策の一環に過ぎないと私は感じています。犯罪を指揮した当時の軍政責任者や実行した人間だけが現在被告席に座らされていますが、実は共同正犯どころか正犯として裁かれるべきはアメリカの歴代大統領とその閣僚です。アフガニスタンイラクで今起こっていること、イランでアメリカが起こしたいことは全てこのビデオの中に凝縮されていると思います。(にもかかわらず、歴史から学ぶつもりの無い彼らは再び中南米でのプレゼンスを高めようとしているのだから救い様がない)


パーでも弁舌だけ爽やかなオバマアメリカが善のイメージ、一方でフィデルチャベスカダフィが時代遅れのアカ・狂った悪魔のイメージで宣伝されていますが、アメリカの政策の被害者で生き証人でもある後者は 『王様は裸だぞ!!』 と叫んでいるだけ。右だ、左だ、自由だの問題ではありません。


『人の命には軽重も優先順位もある』 として公然と行動するアメリカに、一体何の 「正義」 があるのか? その独立宣言 *1 の崇高な理念はどこへ行ったのか? ウィキペディアから引用しますと; 『、「全ての人間は平等に造られている」と唱え、不可侵・不可譲の自然権として「生命、自由、幸福の追求」の権利を掲げた前文は、アメリカ独立革命の理論的根拠を要約』 しているし、そもそも国王の暴政と本国(=イギリス)議会・本国人による横暴に我慢出来ずに13州を鼓舞して独立を宣言したのであり、現在は自分達が過去の 「横暴な」 大英帝国の立場にある訳ですから;

  • 天(てん)の人(ひと)を生(しよう)ずるは億兆(おくちよう)皆(みな)同一轍(どういつてつ)にて、之(これ)に附与(ふよ)するに動(うご)かす可(べか)からざるの通義(つうぎ)を以(もつ)てす。即(すなわ)ち其(その)通義(つうぎ)とは人(ひと)の自(みず)から生命(せいめい)を保(ほ)し自由(じゆう)を求(もと)め幸福(こうふく)を祈(いの)るの類(たぐい)にて、他(ほか)より之(これ)を如何(いかん)ともす可(べか)らざるものなり。人間(じんかん)に政府(せいふ)を立(たつ)る所以(ゆえん)は、此(この)通義(つうぎ)を固(かた)くするための趣旨(しゆし)にて、政府(せいふ)たらんものは其(その)臣民(しんみん)に満足(まんぞく)を得(え)せしめ初(はじめ)て真(まこと)に権威(けんい)あると云(い)うべし。政府(せいふ)の処置(しよち)、此(この)趣旨(しゆし)に戻(もと)るときは、則(すなわ)ち之(これ)を変革(へんかく)し或(あるい)は之(これ)を倒(たお)して、更(さら)に此(この)大趣旨(だいしゆし)に基(もとづ)き、人(ひと)の安全幸福(あんぜんこうふく)を保(たも)つべき新政府(しんせいふ)を立(たつ)るも亦(また)人民(じんみん)の通義(つうぎ)なり。是(こ)れ余輩(よはい)の弁論(べんろん)を俟(ま)たずして明了(めいりよう)なるべし。
  • We hold these Truths to be self-evident, that all Men are created equal, that they are endowed by their Creator with certain unalienable Rights, that among these are Life, Liberty, and the pursuit of Happiness—-That to secure these Rights, Governments are instituted among Men, deriving their just Powers from the Consent of the Governed, that whenever any Form of Government becomes destructive of these Ends, it is the Right of the People to alter or abolish it, and to institute a new Government, laying its Foundation on such Principles, and organizing its Powers in such Form, as to them shall seem most likely to effect their Safety and Happiness.


日本を代表する某経営者の言葉に 『理念なき行動は凶器 *2 であり、行動なき理念は無価値である』 と云うのがあります。企業と国家を同一レベルで論ずることに抵抗はありますが、アメリカのみならず日本も、 『理念』 を曲解していることが現在の 「凶器」 あるいは 「狂気」 の原因であることは明らか。先日紹介しました田上長崎市長の言葉 *3 を借りるなら、 『人間の視点』 が決定的に欠如していると云うことでしょう。

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*1:アメリカ独立宣言 - Wikipedia によると、『この宣言にある“全ての人間”は白人に限られ、有色人種と女性は含まれていない。』 とのことですが、現在は全て含めて解釈し直されている筈 −−−違うかな?

*2:ここを 「狂気」 としているサイトもありますが、 「凶器」 が正解の様です。当記事の場合はどちらも当てはまりますが。

*3:核不拡散条約(NPT)再検討会議長崎市長発言資料(PDF 126KB) 参照