遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

NPT (核拡散防止条約) 再検討会議 続報

約1ヶ月の長きに渡って開催される会議ですが、今回も前途多難;

  • <NPT会議>核保有国と途上国に溝
    5月9日9時20分配信 毎日新聞


    −−− 核保有国と非保有国で対立する問題は数々あるが、米国の核軍縮姿勢が非核保有国の認識を変えるまでには至っていないのだ。


     オバマ米政権は今回の会議で、国際原子力機関IAEA)による保障措置(査察)強化を進めたい考えだが、核保有国の核軍縮への取り組みが進まないなかで、保障措置の強化を求められることに途上国は反発している。「原子力平和利用への過度な制約」との警戒からだ。


     非同盟諸国の代表として3日、演説したインドネシアのマルティ外相は、米露の新STARTについて「前向きな進歩」としながらも、「国際社会の期待を満たしていない。すべての核保有国による、より確実で組織的な核軍縮努力が必要だ」と注文を付けた。


     また、95年の再検討会議で採択された中東非核化決議が履行されていないことにもエジプトなどアラブ諸国には不満が強い。
  • イラン核燃料交換の交渉 ブラジルが仲介か
    5月8日13時6分配信 CNN.co.jp


    (CNN) 現在こう着状態にあるイランと西側諸国との核燃料交換の交渉をめぐり、イランは仲裁役を買って出たブラジルの申し出に基本合意した。イランのファルス通信が5日報じた。今後、両国で交渉の進め方など詳細を詰めるという。 −−−
    • Iran 'pressing on with nuclear talks'
      Sat, 08 May 2010 18:10:11 GMT, PRESSTV


      −−− Despite these challenges, “Turkey and Brazil are among the countries that have proposed solutions and these solutions indicate that it is possible to reach a swap deal and arrive at mutual understanding,” the spokesman stressed. −−−


      イラン国内で濃縮すると兵器転用を疑われるから信頼出来る他国で、と云うことですが、濃縮ウランの移動にあたってのリスクは計り知れないのだから、アイデアそのものに無理がありますね。


そんな中、 『鬼っ子』 イスラエル保有核についても焦点が当たりそうですが;

    • Report: IAEA to discuss Israel's nuclear activities for first time
      Published 00:09 08.05.10 Latest update 00:09 08.05.10, Haaretz Daily Newspaper Israel News
      (ANTIWAR.COM にて紹介)


      −−− A copy of the restricted provisional agenda of the IAEA's June 7 board meeting lists Israeli nuclear capabilities as the eighth item - the first time that that the agency's decision-making body is being asked to deal with the issue in its 52 years of existence. −−−


      相手はあの百戦錬磨のイスラエル、後ろ盾がアメリカですから、エリート気取りの外務官僚出の天野などには歯が立たないでしょう。文字通り 「赤子の手をひねる」 如くあしらわれて終わりでしょうから期待薄、単なるガス抜き。でもどんな馬鹿なレポートが出てくるか見ものではある。


被爆者・NGOの方々が帰国されました、おつかれさま;

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100509-00000209-mailo-l42
核のない世界へ:’10NPT会議 NGOメンバー、帰途に /長崎
5月9日15時7分配信 毎日新聞


−−−  ただ、現地での活動は米国のマスコミには全く取り上げられなかった。代表団長で被爆者の日赤長崎原爆病院長、朝長万左男さん(66)は「民間レベルの交流としてはよかったが、会議に深くかかわることは難しかった。大きな宿題です」と語った。


これは被爆者やNGOの方々の関わり方の問題ではないと思います。ひとつには、被爆者やNGOの方々の意見を全く反映していない公式ミッション (=日本政府) の言動。これは対外的に相当ちぐはぐな印象を与える筈ですが、日本がアメリカの属国であり続けていることが周知であるため話題にも上らない。毎年同じだし。一方アメリカのマスコミに関しては、911以降政府の広報機関になり下がってしまったこと。そのココロは、原爆投下が公式に 「犠牲を増やさぬために止むを得ない措置であった」 と評価されていること。アメリカ人は元々信心深く、被爆者の立場で悲しみや憤りを感じている方々も歴史認識に疑問をお持ちの方々も相当多いはずですが (そう信じたい) 、問題は、そんな中、アメリカとしての公式見解に疑問を呈することで受ける 「非国民 (=愛国者では無い)」 扱い・有形無形での村八分が怖いのでしょう。誰もババを引きたくない。口先だけにしろオバマが昨年アメリカが核兵器を使用した唯一の国であることに触れた際のアメリカ国内での反応 *1 を思い出してご覧なさい。アメリカは民主主義の国ではなく単に多数意見原理主義の国であり、自国の国益と国民の愛国心だけが正義です。だから政府が世論操作や国民監視・ 「同盟国」 への根回しに奔走する訳で。その意味では、まとまりがなく何も決まらないと云う欠点はあるものの、まだ日本の方が健全かも。


国益エゴについては、今回の会議の席上長崎市長がそのスピーチの中で触れています。これを書いている時には長崎市HPにまだその日英全文が掲載されていませんが;

  • 長崎市の田上富久市長の演説要旨
    2010年05月08日(土)10時24分, 山梨日日新聞 みるじゃん


    −−−  私たち市民の願いはただ一つ、「核兵器のない世界」の実現だ。被爆者は自らの経験にもとづいて、核兵器が合法化できない、非人道的な大量破壊兵器であることを世界に伝えてきた。核兵器のない世界だけが、国際社会の永続的な安全を保障できる。


     忘れてならないのが“人間の視点”だ。核保有国は、核兵器の本当の恐ろしさを理解しているのか。人間を数千度の熱線で焼き尽くし、細胞を破壊する。原爆投下から65年を迎える現在も後障害(後遺症)に苦しみ続ける被爆者の終わりのない苦しみを理解できているのか。世界は、いま生きている私たちだけでなく、まだ生まれていない人たちのものでもある。すべての国の代表者が「核兵器禁止条約」に向けて努力を始めることを強く希望する。長崎を核兵器の攻撃で苦しむ最後の町にしたい。(共同)


以前書きましたが、私が見ている狭い範囲でのことかも知れませんが、常に広島の演説は精神論が中心で、長崎は実体験に基づく発信が中心の様な気がします。その様な役割分担で調整されているのでしょうか;

  • 広島市の秋葉忠利市長の演説要旨
    2010年05月08日(土)11時38分, 山梨日日新聞 みるじゃん


    −−−  私たちは繰り返してはいけない。被爆者の言葉に「ほかの誰にも自分たちのような苦しみを味わってほしくない」というものがある。ほかの人の中には対立する人も含む。報復でなく和解への思いが込められた言葉だ。


     平和市長会議は、2020年までに核兵器のない世界を実現できると信じている。


     被爆者の多くは、75歳以上となった。私たちは被爆者が生きている間に、核兵器を廃絶する責任がある。必要なのは政治的な意志だ。皆さんの持つ力を、未来の世代のために使ってほしい。平和市長会議に参加する都市の市民や、広島と長崎の被爆者は核兵器廃絶を実現するために、できることをすべてやる。力を合わせれば核兵器は必ず廃絶できる。私たちは必ずなしとげられる。(共同)


    まさか、YES WE CAN, WE ARE ●●マジョリティーなんて言わなかったでしょうね?




  • 出典: http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100508-00000007-maip-soci.view-000


    被爆者代表谷口さんの発言要旨
    2010年05月08日(土)11時37分, 山梨日日新聞 みるじゃん


    −−− あの日から半世紀が過ぎた。過去の苦しみなど忘れ去られつつあるように見える。忘却が新しい原爆肯定へと流れていくことを恐れる。


     わたしはモルモットではない。もちろん見せ物でもない。でもわたしの姿を見てしまったあなたたちは、どうか目をそらさないで、もう一度見てほしい。



     核兵器は絶滅の兵器、人間と共存できない。どんな理由があろうとも絶対に使ってはならない。核兵器を持とうと考えること自体が反人間的だ。 −−−


    谷口さん、この写真を無断で掲載して申し訳ありません。どんな立派なステートメントよりも今回の谷口さんの演説は核廃絶の本当の意味を問う力のあるものだと考えたためです。


※ 引用させて頂いた山梨日日新聞はなかなかイイですね、山梨日日新聞 - Wikipedia には最近の盗用問題でのごたごたが記されていますが、この様な大きな会議での主な発言要旨が下手なコメント無しで掲載されているのは素晴らしいことと思います。(私は全部見ている訳ではありませんが)


なお以下記事は、http://en.wikipedia.org/wiki/Asia_Times_Online 掲載のもの。 "OBAMA'S WAR MACHINE" と題された2部ものの第2部です。参考まで。

http://www.atimes.com/atimes/Middle_East/LE06Ak02.html
OBAMA'S WAR MACHINE, Part 2: America's nuclear intentions
By Jack A Smith, Asia Times Online on May 6, 2010
AlterNet にて紹介)

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*1:オバマの件の演説は http://prague.usembassy.gov/obama.html 中の "And as a nuclear power - as the only nuclear power to have used a nuclear weapon - the United States has a moral responsibility to act. " 、国内の反応については 2009年8月6日付け当ブログ記事 参照。