遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

歩くと云うこと: 中国 重慶市

まちあるきをした直後のせいか、以下記事が目にとまりました。色々な観方が出来そうですが、私流には;

貧しい息子を思いやる母の愛=交通費はもらえないと徒歩で18日間の旅―重慶市
5月6日22時5分配信 Record China


−−− 4月初頭、52歳となる沈孝蓮(シェン・シャオリエン)さんは重慶市●陵区(●はさんずいに倍の右)から重慶市市街地に住む息子を訪ねた。沈さんにとって初めてとなる故郷を離れての旅だった。息子と一緒に住んで数日、都市の生活費の高さに沈さんは驚いた。街の食事代一食分は、田舎での生活費数日分に相当する。これ以上、息子に迷惑をかけてはいけない。そう思った沈さんは早々に故郷へ戻ることにした。 (中略)


故郷までは車で1時間の距離。高速道路沿いに2、3日も歩けばたどりつくだろうと沈さんは考えていた。しかし苦難は重なるもの。道に迷い、旅路は18日間にも及んだという。 (中略)


5月2日、●陵区から10キロほど離れた高速道路で、重慶市高速道路取締隊の隊員は沈さんを見かけた。 (中略) 疲れきっていたが、1人で留守の家を守る夫のことを思って少しでも早く帰ろうと頑張っていたという。 (中略)


取締隊は車で沈さんを実家近くまで送った。そして交通費を渡し、早く家に帰りなさいと勧めたという。


勿論この場合正確な住所は開示されるべきものではないので、上掲報道だけから地図にプロットすると;



出典: Google Map


出典: Google Earth

  • 青の吹き出し: 重慶市市街地 (適当にプロット)
    ピンクの吹き出し: 重慶市涪陵区
    2つの緑矢印: 右が高速の終点、左がそこから約10キロ
              (高速隊が保護した場所?)


「車で1時間」 かつ地図によれば高速沿いに重慶市中心部から沈さんご実家までは100キロ程度、従って2〜3日でたどりつくだろうと云う判断は正確ですね。私などとは体の鍛え方が違うでしょうが、私がこのGW中3日で歩いた総計97キロと比較しても妥当。


最終的に沈さんが発見・保護されたのは正しい高速道路上のことだった様ですから、道に迷った15日間 (18日マイナス3日) は恐らく、その高速にたどり着くまでのことでしょう;



出典: Google Map
重慶市中心部を少し拡大、 「正しい」 渝宜高速道路は右に延びるもの。


このテの地図は真上から見た二次元ですが実際の三次元の世界では、重慶市工業都市の様ですから;



出典: 重慶市 - Wikipedia


これでは迷子になる訳で。(私など、自慢になりゃしませんが日暮里駅から鴬谷駅間で迷子になりましたからね) 沈さんは地図などお持ちでは無かったでしょうから周りのひとに道を尋ねながら歩かれた筈ですが、善意とはいえ知ったかふりをして逆の方向を教えてくれる人も多いですから。私は中国へ行ったことがありませんから重慶市の様子は全くわかりません。でも大きな都市には共通点がありますから想像するに、歩くことなど想定した街づくりがされていないのでしょう。


中国ではクルマの販売台数が伸びて経済指数を良くしている様ですが、環境保護の方向には逆行していると思いますね。「マイカー」 は、あれば便利ですが所有・運用に当たってのコストもかさめばリスクもあるし、公共交通機関の発達した地域では無用。空間の無駄遣い、ミエ・自己満足。公共交通網を整備してクルマを制限し、歩くことも想定した都市インフラを創って行くのが近い将来趨勢になって行くだろうと思います。経済効率だけを追い求めることが善と云う考えは、結局自分の首を絞めるだけ。


−−− 重慶市内で何とか生計を立てながら母親を受け入れる息子さん、留守宅を預かるダンナさん、その両方を気遣う沈さん、多分決して多くは無い収入から自腹を切って交通費を渡した高速隊員、うらやましい限り。「まちあるき」 愛好家としては、出来ることならいつか、あまりトシを取らないうちに沈さんか息子さんと、今回沈さんが歩こうとしたルートを歩いてみたい気がします。揃って迷子になったのではシャレになりませんから、勿論前もって地図なり何なりで確認しまくって臨みますが、よい道連れと歩くことは最高の贅沢ですから。



出典: Google Earth