遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

居場所をなくした子どもたち: メキシコシティーのストリートチルドレン 他

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 と命名したこのブログを08年9月に立ち上げてから1年余が経ちました。プロフィールにその目的など少し記載していますが、現在の形に至る経緯は09年9月24・25日の1周年記念に記した通り。09年7月に自由業 (実際には不自由業) になった後のある時点から可能な限り毎日更新することにしましたが、書くことの主な原動力となっているのは小説 『ルス、闇を照らす者』 の原作・翻訳。私は大変気に入った小説ですが、文学作品としてどうなのかは門外漢ゆえあまり語れません。しかし現在を理解するための基礎であり将来を考える上での鏡である 「歴史の俯瞰」 の観点からなら、自分の実体験に基づいて展開可能と思っています。


以前にも紹介しました、翻訳書 『ルス、闇を照らす者』 の訳者あとがきに山岡朋子さん (翻訳は横山朋子さん名) が書かれている、「−−−メキシコの女性や社会運動に関心を持つようになった。 (中略) 国も状況もちがいこそすれ、社会問題を正面から見据え、さまざまな階層の女性を描いたこの本は、是非とも訳してみたいと思った。」*1 と云う点、私の場合は28年間公私に渡って関わって来た中南米および中近東・アフリカの貧困のみならず、社会不正義そのものに関心がある。在職中にはあまり深く考える余裕も、従って行動することも出来なかった負い目の様なものがあります。


本日の標題は、工藤律子さん(文)+篠田有史さん(写真)のコンビで出版された書籍 (と云うか小冊子) のもの。これ以外にも同じコンビの 『子どもは未来の開拓者(ピオネーロ)』 、 『子どもたちに寄り添う ◎カンボジア−−薬物・HIV・人身売買との闘い』 および小林茂さん編著の 『チョコラ! アフリカの路上に生きる子どもたち』 を最近まとめて読みました。全て 「ストリートチルドレン (内容がかなりプアですが、ウィキペディア) を扱ったものですが、最後に紹介のものだけはドキュメンタリー映画監督編著のもので、同名の映画の宣伝が腰巻 (=帯) に記されていますので出版の性格は少し異なるかも。メキシコを出発点とされて活動中の工藤さんの著作のほうが、私には馴染みやすい。


ストリートチルドレンの問題は基本的には進展国の都市固有のものかも知れませんが、ホームレス・家出・HIV育児放棄・いじめなどの社会現象、あるいは差別・DV・虐待・人身売買・薬物中毒・売春・買春などの犯罪を考えるなら性別・年齢を問わず世界中に存在します。他人に責任のない完全に自発的なものを除くと、子ども・女性 (こう書くと差別かな?) ・お年寄り・障害あるいは病気をお持ちの方など、一般的に 「社会的・経済的弱者」 と考えられるひとたちが取り残されるのは、恐らく現在世界中で 「正しい」 と繰り返し宣伝されている、弱肉強食 (数の論理・市場経済の論理はその最たるもの) を常に善と考える仕組み・体制の構造的な欠陥でしょう。キューバの事情が他国とは随分違うのは主にそのため。(実際にはそれ以上に為政者の強い理念に依るところが大きいのですが)


例えば私の住まいの近所のスーパーで展開されているKYキャンペーン (空気が−−−では無く、Kakaku Yasui) に代表される価格破壊だけを見ても、それは企業内での努力や流通経路見直しによるものも勿論あるでしょうが、多くの場合、 「コスト競争力のある地域」 、平たく言うなら労賃の安い地域で生産なり調達して輸入することが多い。その生産地では雇用が生まれますから双方ハッピーに見えますが、いつまでも優位性が保たれるとは限らない。労賃だって上昇する (いつまでも安い給料で働きますか?) し、ライバルが現れることもある。一方消費側では、生活費は安くなったが、価格破壊に伴うリストラで一家の大黒柱が職を失うこともある。終わりの無い 「競争」 が続きます。それは様々な意味で善かも知れませんが、疲れ果てますよね。とにかく余裕が無い。モノに囲まれているから欲望にキリは無いし。(分をわきまえた生活をする、倹約に努める、なんてハナシは今どきはやらない様で。「借金は悪ではない、紙幣をばんばん刷ってデフレから脱却しろ」 など堂々とホザく馬鹿もいるご時世。)


社会的・経済的弱者でなくともこのザマですから、どうしても置き去りになりますよね。


自助努力の範囲を超えた、ストリートチルドレンを含む社会的・経済的弱者の救済を考えるに当たっては、特に進展国の場合その国だけで出来る対応には限界がある。上掲KYの例で紹介した様に今は世界中が様々な形で繋がっていますから、一国だけの利害や仕組みを考えたのでは置き去りのまま。たとえ覇権国が力に任せて強行しても、結局最終的には自分達に返って来ることを認識すべき。解決の方法も様々でしょうし、国としての誇りも体制も主権も自決権もありますから、身勝手な善の押し付けも戒めるべきですね。


悩みながら目の前にある問題の解決に奔走されている組織の方々には本当に頭が下がります。その努力を無駄にしないためにも、何が解決の阻害要因なのか、参考事例は無いのかなど、経験に基づいて私なりに調査・考察出来れば、と考えています。


ただし先日の記事中紹介しました、『スーダンの飢えた少女』 のケースは更に悲惨なものです。このレベルの問題はもっと優先順位が高いはず。今生きるか死ぬかですからね。



ところで本日11月06日は、戦争と武力紛争による環境搾取防止のための国際デー "International Day for Preventing the Exploitation of the Environment in War and Armed Conflict [declared by A/RES/56/4] です。 ⇒ 国際デー (ウィキペディア) 参照。

  • http://www.un.org/depts/dhl/environment_war/index.html
    International Day for Preventing the Exploitation of the Environment in War and Armed Conflict
    6 November / Dag Hammarskjöld Library


    On 5 November 2001, the General Assembly declared 6 November of each year as the International Day for Preventing the Exploitation of the Environment in War and Armed Conflict (resolution 56/4). In taking this action, it considered that damage to the environment in times of armed conflict impairs ecosystems and natural resources long after the period of conflict, often extending beyond the limits of national territories and the present generation. The Assembly also recalled the United Nations Millennium Declaration, which emphasized the necessity of working to protect our common environment.


戦争は最大の環境破壊、即ち人の生存を直接脅かすものです。屁理屈はいらない、即刻やめる/やめさせるべきです。


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*1: (株式会社ソニー・マガジンズ 2001年6月30日発行 初版第1刷 451ページより)