遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

祝!!! 南米初のオリンピック開催: でも何がおかしくはないか?

2016年夏季オリンピックが、南米で初めてリオで開催されることが決定しました。中南米に関わってきた者としては単純に嬉しいニュースです。


でも選考に関する新聞報道を見ていると、何か違和感を覚えるのですが−−− 以下、幾つか紹介しますと;

  • http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=1005&f=national_1005_003.shtml
    【米国のアンケ】リオデジャネイロ、オリンピック開催―彼らは誇り高かった
    2009/10/05(月) 09:25  Searchina (編集担当:鈴木愛子)


    −−−  ユーザーGoing Rogueは、「米国は尊大だったから負けてしまった。ブラジルは、誇り高かったから勝つことができた。大きな違いだ。選ばれたのは、南米で初のオリンピックが受け入れられるかどうか、大部分はそれにかかっていたことは認めるが、彼らは非常に真剣にスポーツをする」と賞賛する。Temlakosは「リオはただ、開催地のためにより良い都市であったということ。オリンピックのホストとして印象が良かった。オバマ大統領は、彼を前にしてIOCが折れると思っていて、結果自滅したかもしれない」と辛らつだ。 (以下略)
  • http://news.livedoor.com/topics/detail/4378136/
    五輪落選で傷心の慎太郎知事に消えぬ辞任説
    10月4日8時1分配信 スポーツ報知


     2016年夏季五輪招致に失敗した東京都の石原慎太郎知事(77)は2日(日本時間3日)、「(責任を取って)知事を辞めることは絶対にない」と断言、ささやかれる辞任説を否定した。 (以下略)
  • http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20091004k0000m050022000c.html
    16年五輪:開催切符のブラジル大統領「我々が1等国」と
    毎日新聞 2009年10月3日 18時27分


    −−− 【コペンハーゲン笠原敏彦】16年の夏季五輪開催を勝ち取ったブラジルのルラ大統領は2日、代表団を率いて記者会見し、「私の人生で最も感動的な日だ」と喜びを口にするとともに、南米大陸初の五輪を「過去最高のオリンピック」にするため全力を挙げることを約束した。


     会見場は「ルラ」コールも起きる興奮に包まれた。大統領は何度もハンカチで目を押さえながら、「この勝利の意味は、我々がもはや2等国ではなく、1等国だということだ」と指摘。3度目の挑戦で手にした五輪開催に向け、「私の責任はさらに増した。我々は明日から開催準備を始める。私のスローガンは『仕事、仕事、仕事』だ」と訴えた。 (以下略)
  • http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=1003&f=national_1003_021.shtml
    【中国の検索ワード】中国メディアが報じる「東京五輪」失敗の原因
    V 2009/10/03(土) 17:50  (編集担当:柳川俊之)


    −−−  2016年オリンピックの最終投票に向けて東京の代表団は2回目のプレゼンテーションを行った。IOC委員を「丸め込む」ために最後のプレゼンテーションでは全て英語を用い、招致委員会の河野一郎事務総長は一部フランス語まで使った。東京が若干奇妙に思える最終プレゼンテーションを行ったのには理由がある。以前、「日本人の招致活動には情熱が欠けている」との批判を受けており、前日の記者会見で「われわれ日本人には情熱がある。夢もある。そしてそれを実現する実力もある」と訴えていたのである。そして、最後のプレゼンテーションでは、どのプレゼンターも情熱ぶりを表すべく過度に力が入り、しまいには絶叫のようになってしまった。 (以下略)


ブラジルが大喜びするのは下記の如く当たり前として、理解出来ないのはたかが (失礼!) オリンピック ごときで何故都知事辞任のハナシになるのか、またいわゆる 『ロビイ活動』 は正当なものか、と云う点;


開催国 (正確には招致都市) を選ぶ 国際オリンピック委員会 (ウィキペディア) は以前にも紹介しましたが国際機関ではなく単なる私的な団体であり、オリンピックそのものも当初の崇高な理念に基づくものから利権にまみれた単なるスポーツ世界大会と化していますから、ミスコンと大差無い、と私は考えています。(ロス大会あたりからおかしくなった様な) 都知事や首相が血道を上げるほど価値のあることなの?


勿論、オリンピック開催の経済的なメリットは承知していますよ。私の出身地が札幌冬季オリンピック開催でどれだけ整備されたかはっきり覚えていますし、東京オリンピックで東京だって随分近代化? した筈です。その意味で、ブラジルを祝福したい。加えて、ルラ大統領の上掲の言葉 「この勝利の意味は、我々がもはや2等国ではなく、1等国だということだ」 はある意味現実なので、それも併せておめでとう、と云うこと。中南米に世界の目が集まることそのものにも意義があるし。以下、ウィキペディア近代オリンピック』 から抜粋しますと;

−−− 開催国の大半が欧州・北米諸国であり、アジアの夏季オリンピックについては東京・ソウル・北京の3回、中南米についてもメキシコのメキシコシティー(地理上は北米に属するがスペイン語圏であるためここでは中南米として扱う)で開催されたのみで首都以外の都市で開催された事がなく(ただし、冬季オリンピックについては首都ではない、日本の札幌、長野で行われている)、アフリカに至っては南アフリカが候補に挙がった事があるが未だに開催されていない。これも、アジア・アフリカ・中南米に経済力を持つ国が少ない事が関係している。


下手をすると負債が残ることもあり得ますが、でも過去の中南米の対外的な巨額の負債と異なり *1 インフラは間違いなく国に残りますから、経済効果は有り。 カネのかかる遊びですけどね。


この頃TVにて、「xxx円あれば、xx人のアフリカの子供が救われます。皆様の寄付を」 的なコマーシャルがやけに目に付きます (鼻にもついていますが)。世界恐慌だ、温暖化だ、砂漠化だ、飢餓だと危機感をあおる一方で、人殺しやお祭りに膨大なカネを浪費していることが多過ぎませんか? お祭りの意義は否定しませんけど−−−


もうひとつ、大変気になるのが、いわゆる 『ロビー活動 (ウィキペディア)』 が話題に上ったこと。日本だと、政治家への陳情などが相当するのでしょうが、ウィキペディアによる定義は、「ある特定の主張を有する個人または団体が、政府の政策に影響を及ぼすことを目的として行う私的な政治活動」 、非常に胡散臭い活動です。アメリカの例では、イスラエル・ロビーが有名ですね。ネット上におびただしい数の記事がありますが、少し旧いが例えば以下記事 (書評) 参照;

http://book.asahi.com/review/TKY200712040192.html
イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策 I・II [著]ジョン・J・ミアシャイマー、スティーヴン・M・ウォルト *2
[掲載]2007年12月02日
[評者]酒井啓子東京外国語大学教授・中東現代政治)


■米国の国益に反した偏重外交を喝破


 衝撃作である。しかも、超ド級の。


 何が衝撃か。米国の外交政策イスラエル・ロビーに振り回されていて、それは米国の国益にならない、イスラエルを特別扱いするな――。そう言い切ったのも衝撃だし、言い切った本がイスラエル・ロビーの圧力にも負けず世界中で出版できたことも、驚きだ。出版後、米国内で一大論議を呼んでいる。 (以下略)


このテの活動には弊害が多く、オバマ大統領自身認識しています;

http://www.yomiuri.co.jp/feature/20081107-5171446/news/20090122-OYT1T00365.htm
オバマ大統領「変革」スタート、ロビー活動制限令に署名
(2009年1月22日11時34分 読売新聞)


 【ワシントン=小川聡オバマ米大統領は21日、政権高官の就任前後のロビー活動の制限などを定めた大統領令に署名した。


 同時に、ホワイトハウス高官の昇給凍結や政府文書の情報公開促進に関する覚書も発表し、大統領選の公約だった「ワシントン政治の変革」を実践する姿勢を示した。 (以下略)


オリンピック招致に当たってのロビー活動、と云うより投票権のある委員の買収に関してはIOCも認識しており、ウィキペディアにも 「オリンピック競技大会を招致したいと言う意志のある都市は、IOCに立候補を申し入れ、IOC総会にてIOC委員(IOC members)の投票によって決定される。過去招致都市決定について、一部のIOC委員が買収されたりというスキャンダルがあったため、ジャック・ロゲ会長の強力なリーダーシップにより、近年投票による公正な選定プロセスが運用されるようになった。」 との記載があります。従って、

http://hochi.yomiuri.co.jp/sports/etc/news/20091001-OHT1T00080.htm
東京、ロビー活動でも出遅れ…16年夏季五輪招致
(2009年10月1日08時15分 スポーツ報知)


なんて認識そのものが、そもそも時代遅れ。だから、現都知事が行った以下発言は、内容が事実だとしても、誤認だとしても確かに問題;

http://sportsnavi.yahoo.co.jp/other/headlines/20091005-00000016-dal-spo.html
石原慎太郎都知事「初めて泣いたよ」
[ デイリースポーツ 2009年10月5日 10:38 ]


−−−「JOC(日本オリンピック委員会)がもっと強くならないといけない。若い幹部をIOCの中核に送り込まないと」とIOC内での発言権強化を今後の課題とした。さらに、「ブラジルの大統領が思い切った約束をアフリカの諸氏にしたようだし、サルコジ大統領は『戦闘機を買ってくれたらブラジルを支援する』と言ったという。政府も巻き込んで周到な準備をしないと」と、政府の協力が不可欠とした。 (以下略)


.

*1:過去の負債は、ブラジルは数少ない例外だったかも知れませんが、奢侈品の浪費やらマイアミの隠し口座への送金で雲散霧消しましたので。

*2:イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策 1 (単行本)
ジョン・J・ミアシャイマー (著), スティーヴン・M・ウォルト (著), 副島 隆彦 (翻訳)
単行本: 366ページ
出版社: 講談社 (2007/9/5)
ISBN-10: 4062140098
ISBN-13: 978-4062140096
発売日: 2007/9/5


イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策 2 (単行本)
J.J. ミアシャイマー (著), S. ウォルト (著), 副島 隆彦 (著)

単行本: 319ページ
出版社: 講談社 (2007/10/17)
ISBN-10: 4062142589
ISBN-13: 978-4062142588
発売日: 2007/10/17