遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

国連演説: 各国の演説時間の比較と通訳のこと

カダフィ大佐の長ぁ〜〜〜い演説に要した同時通訳の費用が56万円もかかっただの、通訳がネを上げると云うプロらしからぬ文句があっただの−−−

http://mainichi.jp/select/world/mideast/news/20091003k0000e030025000c.html?inb=ra
国連:カダフィ大佐演説長かった 通訳費用56万円
毎日新聞 2009年10月3日 10時38分(最終更新 10月3日 12時54分)


 【ニューヨーク小倉孝保】9月23日の国連総会一般討論でリビアの最高指導者、カダフィ大佐の演説が規定(15分)を大幅に超え約1時間半になったことを受け、国連事務局は長時間演説防止策の検討に入った。大佐の演説で通訳費用が約6200ドル(約56万円)になったうえ、その後に演説する首脳の予定が大幅に狂ったためだ。 (中略)


 国連はすでに、演壇にある小さなライトを点滅させたり、国連事務局職員が演説者にメモを手渡すなどの対策をとっている。しかし、大佐のような長い演説を防止するために事務局は一定時間を経過した場合、マイクを強制的に切ることや、より大きな時計を演台前に設置する案などを検討している。


 一方で、一般討論の演説者は国家元首の場合も多く、国や国民への敬意を損ねる方法はできないとの考えもあり、事務局にとっては頭の痛い問題になっている。


でもちょっと待ってくれよ、カダフィ大佐の演説は96分 (下に掲載のデータ参照) だから、56万円の通訳費用ってことは、超過割増考慮しなければ1時間35万円!! 機器などは国連に備え付けている筈だし、「一流の」 通訳だってどうせ国連の周辺から引っ張って来るのだろうから移動の費用だってタカが知れている筈。時間当たり単価があまりに高過ぎませんか? (私自身会社員時代に米国内でその様なサービスの手配に関わったことがある経験から。ただしこのブログの主旨からして、翻訳者やら通訳者の報酬にケチを付けるのは本意では無きためこれ以上は追及しませんけど)


今回の演説の平均時間は18分、規定の15分の倍に当たる30分を超える演説行ったのは9ヶ国、大横綱は確かにカダフィ大佐の96分、大関チャベス大統領の60分、以下関脇がオバマ大統領の38分、ホンジュラス、イラン−−−の順。長いにはそれなりの理由があることを忘れてはならないし、費用については制限オーバー分について一部参加者に負担を求めるとか費用そのものを見直すとか、出来ることが幾らでもあるだろう、と思いますがね。某国の国王が某国の大統領に言った様に、 ¿Por qué no te callas? (こんなことまで西語版 Wikipedia で記事になってるぅ!) *1 などと言う場では無いでしょうに。考え様によっては、オバマへの期待が大きかったため、無視され続けた恨み節が噴出したのかも知れませんし。



元データ: 演説一覧 Sep09.xls 直
国連HPのデータを私がエクセルに入力したもの
(入力ミスあったらご勘弁)


なお、日本国内でも、通訳者への負担増が話題となっています;

  • http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090907-00000023-san-soci
    裁判員裁判】負担増す通訳 微妙なニュアンスどう伝える
    9月7日7時56分配信 産経新聞


     裁判員裁判では「法廷通訳人」の負担増が懸念される。法廷通訳は専門用語が多く、書面の翻訳など事前準備が欠かせないが、集中審理の裁判員裁判では準備期間が短い。法廷で通訳する量も増える上、裁判員に分かりやすい通訳が求められる。専門家からは「レベルの高い通訳人の確保が必要」と研修制度の整備などを訴える声が出ている。 (以下略)


通訳 --- 特に同時通訳に要求される能力は、両言語に長けていることは勿論最低限必要ですが、翻訳に求められるものとは異質と思います。警察の求めに応じて英語・スペイン語の通訳をやっている友人がおりますが、初期の取り調べでの自分の通訳の巧拙によって、その後の罰 (行政罰・刑罰) やら有罪・無罪が左右されるかも知れない、と云う恐ろしさがあり、相当のプレッシャーがかかるそうです。そりゃあそうですね、専門家でなくても、例えば自分がどこかの外国で何か嫌疑をかけられて取り調べを受けるハメになった時のことを考えると、通訳のレベルは大事ですよね。


通訳も翻訳も、私にはとても出来ません。縁の下の力持ちですが、場合によっては相当の能力が当然の様に要求されますから、絶え間無い鍛錬が絶対に必要。どちらも過小評価されているのかも知れません。

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*1:このお二人は、その後仲直りされた様です。問題の発言に至った場面はYouTubeで紹介されていますが、ここで紹介するのは憚られる、双方を茶化すパロディー・替え歌などもあります。最もシンプルなのは;



Titulo = El Rey increpa a Chávez por insultar a Aznar
関連動画一覧は、例えば
http://www.youtube.com/results?search_query=%C2%BFPor+qu%C3%A9+no+te+callas%3F など。国王がこの様な場で激昂するのは大変珍しいと思います。ただし、大統領の言い分も尤もだな、とも思えます。「それを言っちゃあ、おしまいよ」 と云う性格の発言ですね。まあ、身内感覚でのデキゴトだったのでしょう。