朝鮮民主主義人民共和国 (北朝鮮) 外務副大臣の国連演説紹介
色々な意味で大変気が重いのですが、今日は 朝鮮民主主義人民共和国 (ウィキペディア) (北朝鮮)--- こう書くのはホネなので、引用部分を除き失礼無き様以下DPRKと略しますのであしからず --- の国連での演説を紹介します。報道としては、まず記者の悪意を感じさせるもの。例えば;
- http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&rel=j7&k=2009093001125
「核なき世界」に反発=安保理決議を非難−北朝鮮
(2009/09/30-21:50) 時事ドットコム
−−− 報道官は同決議について、「他国に対する核大国の一方的要求だけが列挙されている」と断定。その上で、「核独占で自らの支配権を維持しようとする核列強の陰険な策動」と決め付け、「二重基準的な文書」と非難した。
^http://sankei.jp.msn.com/world/europe/090929/erp0909291001003-n1.htm
「安保理はますます傲慢に」 北朝鮮が国連総会で一般演説
2009.9.29 09:58 MSN産経ニュース
【ニューヨーク=松尾理也】北朝鮮の朴吉淵外務次官は28日、国連総会で一般演説を行い、核実験の強行をめぐって制裁決議を採択した安全保障理事会を「ますます傲慢(ごうまん)で、国際的な不平等を押しつけるようになってきている」と非難した。
DPRKは 「核なき世界」 のコンセプトに反発などしていませんよ、茶番である安保理決議には当然反発していますが。「非難」 は別にDPRKに限らず、アメリカの横暴さと私物化された国連を批判する国なら皆言っていることだし、 「断定」 および 「決め付け」 の言葉など見ても、記者の悪意しか感じません。
その他の報道は事実のみを報じるもの。例えば;
- http://www.asahi.com/international/update/0929/TKY200909290072.html
「対北朝鮮政策もチェンジを」国連演説でオバマ氏に訴え
2009年9月29日11時10分 asahi.com
【ニューヨーク=松下佳世】北朝鮮の朴吉淵(パク・キルヨン)外務次官は28日、国連総会一般討論での演説で「朝鮮半島の非核化は、米国が核政策を変えるかどうかにかかっている」と述べ、オバマ政権に対し「『対立』という古い概念を捨て、『チェンジ』を実践するべきだ」と訴えた。一方、6者協議復帰の可能性や米朝、日朝を含めた二国間対話については言及しなかった。 (以下略)
- http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20090929-OYT1T01050.htm
北朝鮮外務次官、国連総会で決議批判演説
(2009年9月29日20時42分 読売新聞)
−−− 朴外務次官は、米国の核戦力による脅威を強調。休戦協定に代わる平和協定の締結などを求めてきたのは北朝鮮側だと主張し、「米国から反応がない」と指摘した。そのうえで、「米政府は対立という古い概念を捨て、『チェンジ(変革)』を実行すべきだ」と要求した。安保理の制裁決議については、「我々が核抑止力を保有していることを前提としたものだ」とする一方、「不公正かつ不公平な制裁」と述べ、安保理を「時代錯誤的」と批判した。
一方他国の反応は、例えば;
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091001-00000005-yonh-kr<¥
北は孤立・制裁に継続直面、米国務次官補が警告
10月1日9時59分配信 聯合ニュース
【ワシントン30日聯合ニュース】クローリー米国務次官補(広報担当)は、北朝鮮が国連安全保障理事会の「核のない世界」実現に向けた核兵器拡散根絶決議案を「全面排撃」すると明らかにしたことに対し、北朝鮮が非核化を拒否すれば孤立と制裁が継続すると警告した。 (以下略)
特に目新しい動きはありません。
で、肝心の演説を国連のサイトより紹介すると;
※演説者の日本語での肩書きは外務次官ですが、ウィキペディアではいまひとつはっきりしません。ご本人については Pak Kil-yon に紹介されていますが、一方 Politics of North Korea によると;
- Foreign Minister: Pak Ui-chun
- Vice Foreign Minister: Kim Kye Gwan
- Vice Foreign Minister: Choe Su-hon
- Vice Foreign Minister: Kim Kye Gwan
となっていますから、一致しませんね。私の調査不足かウィキペディアの情報更新遅れでしょうが、コトの本質とは関係無さそうなので、まあいいやってことで。
国連外交の場で核問題について公式に言及したのは初めてであるにしろ、PDFで確認する限り演説の内容そのものは他国のものに比して別に過激な訳ではない。ただ、国連での演説であるのにアメリカを名指しで (対話) 相手としていることに、DPRKの核問題の本質が表れている様に感じます。アメリカの露骨な挑発を受け、核問題に関しては似たような立場にあるイランの場合、演説基調そのものが異なるので単純比較は出来ませんが、特にアメリカを名指ししてはいません。6ヶ国ではなく、中国でもなく、どんな馬鹿が考えてもケンカを挑む相手では無いアメリカとの直接対話に国連での演説の場で固執するのは何故か?
−−− 冒頭 「気が重い」 と記した主な理由は、日本にまん延するDPRKに対する憎しみの感情です。正直私自身、DPRKのことは殆ど知らないくせにDPRKにあまり良い感情を持っていません。と云うことは、その原因は外部から否応なしに、かつひっきりなしに入って来る情報以外ではあり得ません。日本の場合、その 「外部情報」 とは、多分繰り返し報道される拉致問題と核問題でしょう。ただし私は、後者については殆どが核保有大国の優位性確保・情報操作の産物であることを認識していますから、やはり前者が悪感情の最大の理由です。
自分が拉致被害者あるいはご家族であったら感じるであろう痛み・悲しみ・怒りを折に触れ思い描いていますが、所詮他人ごと、お前に何がわかる、と言われればその通りかも知れません。長年に渡って訴え続けているのに解決しない苛立ちがあることも理解は出来ます。そのうえでもどうしても理解出来ないのが、拉致被害者のご家族がアメリカへ直接解決をお願いしていること。よりによってアメリカにですよ。最近の報道では;
- http://www.news24.jp/articles/2009/09/30/07144754.html
拉致被害者家族が駐日米国大使と面会
< 2009年9月30日 20:48 > 日テレ News24
北朝鮮による拉致被害者家族会の飯塚繁雄代表と横田めぐみさんの両親・横田滋さん、早紀江さん夫妻は30日、先月就任したばかりのアメリカ・ルース駐日大使と初めて面会した。ルース大使は「日本政府と力を合わせ、解決に向けて努力する」と約束した。 (以下略)
- http://www.news24.jp/articles/2009/08/31/07142844.html
家族会・飯塚代表「思い切った取り組みを」
< 2009年8月31日 16:25 > 日テレ News24
民主党が圧勝した衆議院議員選挙の結果を受け、北朝鮮による拉致被害者家族会の飯塚繁雄代表は31日、「民主党には拉致問題に思い切った取り組みをしてほしい」と話した。 (中略)
横田めぐみさんの父・滋さんは「今度はぜひ安定した政権をつくって、4年の期間いっぱいやるつもりで政治をやっていただきたい。そうなれば、北朝鮮も交渉に応じてくれると思います」と述べるなど、めぐみさんの母・早紀江さんと共に「政権交代を機に、民主党に北朝鮮としっかり交渉してもらいたい」と語った。 (以下略)
ルース新駐日大使のお答えは外交官としてソツの無いものですし、横田めぐみさんご家族の願いは、複雑な感情をお持ちであろうにそれを抑えられ新政権への期待を強く表されたものです。その中で私が非常に違和感を覚えるのは、家族会代表者のコトバです。大変複雑で重い責務ですから外からうかがい知れない事情はあるのでしょうが、でも私がこの方の言動から感じることは、問題の解決ではなく厳罰・復讐を求めているだけではないか、と云うことのみ。人間関係の一般論として、自分が相手を憎めば、大体相手からも同じ感情が返って来ます。一体、「思い切った取り組み」 とは何なのか? 子ブッシュのアメリカへお願いしたのは一体何? 戦争で潰せ、と云うこと? あるいは制裁で飢え死にさせてしまえ、と云うこと?
北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会HP によると、 拉致を理由に全面制裁発動を−緊急国民集会開催(2009/09/04) ★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2009.09.04) の中で要求していることは;
- 北朝鮮は、いくら時間稼ぎをしても拉致問題の棚上げはできないことを覚り、昨年8月に約束した調査やり直しを実行してすべての被害者を返せ。
- 我が国新政権は被害者救出のための人事・組織・方針を早急に固め、拉致を理由にした全面制裁を断行し、救出に不可欠な被害者所在情報確保に全力を尽くせ。
異議を唱えることをためらわせる雰囲気で一杯のサイトですが、あえて言わせてもらうなら、拉致は、たとえ疑わしいケースが全てDPRKによるものだとしても1970年代から80年代のことですし、その性格から詳細な記録が残されている (記録・保存・管理) とは到底思えない。国家としての組織犯罪と考えざるを得ないから現指導部は 「知らなかった」 とは言えないが、実際経緯などもうわからなくなっていても不思議は無いのでは? DPRKの資料ねつ造は、役人の苦し紛れのごまかしだったのでしょう。とは言っても引っ込みはつかないし、恐らくDPRKにとっても頭痛の種ではないか? 別にDPRKのカタを持っている訳ではありませんよ、そんなレベルの国じゃあ無いのでは?と云うこと。
でも解決しなければなりません。先日記した様に、国交が正常化されていませんから戦争補償 *1 が出来ません。でも日本は拉致問題の解決をしなければ正常化はしないと主張。日本が厳しい目でDPRKを見ているなら、その逆もまた真なりです。日本がDPRKに対して 「思い切った取り組み」 をするのであれば、DPRKも日本に対して 「思い切った取り組み」 を返して来る可能性大。一方DPRKは、それでなくとも台所が厳しい中、自国防衛のつもりで核兵器に莫大な (かつ無駄な) カネを使わざるを得ない。優先順位から、まず核問題の総元締めであるアメリカと交渉したい。この件に関して日本はアメリカの言いなりだし、プレイヤーが増えると時間ばかりかかるから6ヶ国協議は後回し−−−だとしたら、完全な悪循環に入っていませんか?
「窮鼠却(かえ)って猫を噛む」 状況に追い込むことが得策とは思えないし、ましてそれが日本国民の総意とも思えない。少なくとも私は反対ですから。日本が拉致問題を盾に取って制裁強化するなら、DPRKは日帝による植民地支配に関する補償を盾に取って反発しますね。加えてアメリカが制裁行いDPRKが自暴自棄になることが最大の愚だと私は考えます。第二次大戦の処理が終わらないうちに、『過ちは繰り返しません』 の誓いが破られるとしたら、我々は救いようのないの馬鹿ですね。「国際社会」 の中で孤立するのはDPRKだけではなく日本も一緒ですよ。互いに主張し合って一歩も譲らないなら交渉は成り立たない。ビジネスの世界であればじゃあ破談ですね、で済みますが。ここは政治家の出番。相手が相手だけに寝技に長けた、国内でも支持される老獪な (別に年齢とは関係ナシ) 政治家がいればよいのですが−−− それが出来ないなら、第三国なり機関 (今の国連ではダメですが) に仲裁お願いするしかありません。
金大中 (ウィキペディア) 元韓国大統領の死去にあたり、弔電でDPRKの金総書記が 「金大中・元大統領が死去したという悲報に接し、(夫人の)李姫鎬(イ・ヒホ)女史と遺族に深い哀悼の意を表す。金・元大統領は惜しくも死去したが、彼が民族の和解と統一を実現するための道に残した功績は、民族とともに末永く伝えられるだろう」 と悼んだ、との報道がなされました。今回の国連演説は、意外とSOSのサイン−−−とは読めないでしょうか?
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*1:2009年8月12日付け記事に引用の 7.日本の具体的戦後処理(賠償、財産・請求権問題) に、
(b)北朝鮮
北朝鮮との問の財産・請求権問題については、日朝国交正常化交渉の中で話し合われるべき問題であるが、2002年9月7日の日朝平壌宣言においては、「双方は、国交正常化を実現するにあたっては、1945年8月15日以前に生じた事由に基づく両国及びその国民のすべての財産及び請求権を相互に放棄するとの基本原則に従い、国交正常化交渉において誠実に協議することとした。」とされている。