遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

チャベス大統領の国連演説紹介

http://sankei.jp.msn.com/world/europe/090925/erp0909250802001-n1.htm
オバマさん、社会主義陣営にいらっしゃい」 毒舌健在、チャベス大統領が国連演説
2009.9.25 08:02 MSN産経ニュース

上掲はチャベス大統領の国連での演説についての報道。2009年2月2日付け 『ノーム・チョムスキー教授のこと: 言語学者+外交評論家』 中で紹介しました3年前の演説で子ブッシュを悪魔呼ばわりした印象が強いため 「毒舌」 が前面に出て、肝心の演説の主旨は紹介されていない野次馬レベルの記事なので、以下国連HPから演説を紹介します;

国連HP内 General Debate of the 64th Session (2009) Venezuela (Bolivarian Republic of) H.E. Mr. Hugo Rafael Chávez Frías, President


スペイン語での演説全録画
演説全文PDF (スペイン語)
  ※ 同ページ内に "Statement summary" (英語) もあります。


私はベネズエラで慣れたせいかも知れませんが、大変わかりやすいスペイン語です。多分制限時間を大きくオーバーした演説は、スマートさやレトリックや美辞麗句の無い、しかし聴衆を惹き付けるものです。チャベス ⇒ アカ・ポピュリスト、社会主義全体主義アナクロ の短絡思考で片付ける輩にとっては全く響かないでしょうけど。 (バカの壁) 骨子だけは前もって決めてあった筈ですが、演説そのものは前もって書いた作文を読み上げるスタイルではなく、体に似合わない小さなメモ帳やら資料を見ながらその場で組み立てていた様子。革命家らしい、生気溢れる力強い演説と思います。


例によって演説内で紹介した映画やらレポートやら本は以下の通り;

  • ノーム・チョムスキー (ウィキペディア) 教授の "El Miedo a la Democracia " 、例えば ペーパーバック: 424ページ / 出版社: Critica (2001/09) / 言語 スペイン語 / ISBN-10: 8484321851 / ISBN-13: 978-8484321859 / 発売日: 2001/09

    元の英語版は多分 "Deterring Democracy" 、例えば ペーパーバック: 424ページ / 出版社: Hill & Wang Pub; Reissue版 (1992/04) / 言語 英語 / ISBN-10: 0099135019 / ISBN-13: 978-0099135012 / ASIN: 0374523495 / 発売日: 1992/04
  • István Mészáros (professor) の著作 "Mas alia del capital. Hacia una teoria de la transition" の英語版は "Beyond Capital: Toward a Theory of Transition" 、例えば ペーパーバック: 994ページ / 出版社: Merlin Pr (1995/06) / 言語 英語 / ISBN-10: 0850364329 / ISBN-13: 978-0850364323 / 発売日: 1995/06


この演説の最後に直前の日曜日 (9月20日) ハバナの革命広場で催された平和祈念コンサートに触れ、ギターを弾く真似をしながらキューバの詩人でありシンガーソングライター(このコトバは死語かも) Silvio Rodriguez (スペイン語版 Wikipedia) の歌 "Cita con Angeles (下掲)" の1フレーズを口ずさむパフォーマンスで演説を締めくくっています。



Titulo = Silvio Rodriguez - Cita con angeles


なお最後の部分でチャベス大統領が批判した、このコンサートに関してマイアミで発生した抗議行為は以下の様に報道されています;

http://www.cnn.co.jp/showbiz/CNN200909210016.html
フアネスハバナで110万人コンサート、「宣戦布告」と批判も
2009.09.21 Web posted at: 18:34 JST Updated - CNN


ハバナ(CNN) 南米コロンビア出身の人気ロック歌手フアネス *120日キューバの首都ハバナでコンサートを開催、110万人を超える人々が集まった。公演は世界各地に散らばるキューバ人を結びつけることを目的としたものだったが、在米の亡命キューバ人からは「宣戦布告」だと批判が起こっている。 (中略)


一方で、フアネスの自宅がある米フロリダ州マイアミでは、亡命キューバ人らがこのコンサートを、キューバ社会主義体制を後押しするものだと批判。「宣戦布告」だとして、フアネスのレコードを壊すなどデモ行為を行った。 (中略)


このほか、一言ブログサービス「Twitter」で、フアネスを殺すとの脅迫が書き込まれたため、警察がマイアミの自宅を警護する騒ぎになっている。


以前、 『アメリカが国内で飼っている犯罪者』 と云ったのはこいつらのこと。反カストロ政策の役に立ちますから。この関連で以下も紹介しておきますね;

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%90%E7%B3%BB%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E4%BA%BA%E8%B2%A1%E5%9B%A3
キューバアメリカ人財団  より抜粋


テロ活動


CANFは、キューバ政府や一般キューバ市民、対キューバビジネスへの反発によるテロ行為との関連性が指摘されている。すなわち、1997年7月から9月にかけて立て続けに発生し、一名の外国人犠牲者を出した、ハバナにある3軒のホテルを標的とする連続爆弾テロについて、キューバ内務省は「CANFによって立案・実行された行為」と主張している。CANFはキューバ内務省の主張を否定しているが、連続爆弾テロの主謀者とされるルイス・ポサダ・カリレスは、1998年に受けたニューヨーク・タイムズ誌とのインタビューにおいて、「キューバにおける観光産業の成長に冷や水をあびせるべく、一連のホテル爆破事件を引き起こした際に、CANFから財政支援を受けた」と供述。CANFがポサダの供述を強く否定したためか、インタビュー後にポサダは件の発言を撤回している。しかし、彼は自叙伝でCANF人士との長期に亘る交友関係について言及しており、ポサダとCANFに深い繋がりが存在することは確実な模様である。なお、CANFの元高官はマイアミの新聞に対し、1990年代に幾人かの指導者達が、キューバに対する攻撃を計画していたと述べている。


チャベス大統領の主張は、21世紀は現在我々が抱えている問題を解決出来る唯一の手段である社会主義の時代だ、と云うこと。欧米の進路とは全く異なる訳ですが、それは尊重されるべき、と考えます。相当綻びが目立ち、渋々ながら我々が正しいと考えている体制や考え方は、例えば中南米に適用しても正しいなんてことはあり得ない。これは私が80年代南米で暮らした経験から考えての結論です。自分達の考えや価値観を、様々な違いを無視して押し付けることは、ましてそれを 『民主主義を守る』 などと云う偽りの大義のもと武力や恫喝によって強制することは間違いです。チャベス大統領の挑戦は演説の中でも明言されている様に、『マニュアルのない』 --- 従って試行錯誤の避けられない --- 独自の社会主義を実現すること。ひとのいのちを犠牲にすることでそれを行うのは許されることではありません。南米の解放者シモン・ボリバルの名を取って 『ボリバル革命』 と呼んでいますが、昔と違って基本的に無血革命です。むしろアメリカを中心とする 「国際社会」 が行っている 『テロとの戦い』 や 『民主化支援』 のほうがはるかに多くの血を流していることに気付くべき。日本も片棒を担いでいますからね。


「抑圧された」 キューバベネズエラのひとたちより 「自由な」 我々日本人のほうがはるかに幸せだ、と思いますか? 不況とは言いながら連休の都度成田空港がごったがえすだけの余裕はあるのですから、実際に行ってみるとよい。自分の目で偏りなく見て判断すべき。その結果私の感じていることとは異なった結論に達するなら、それはそれで貴重な財産になりますから。 (ただし、キューバ出入国のハンコが押されたパスポートでアメリカを通過すると、有形無形の嫌がらせをされる可能性はあります。オバマになってから改善されているとよいのですが。)

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