遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

学習障害と字のない絵本の関係、図書館や翻訳者の役割など

平成21年4月25日開催 「ラテンアメリカと子どもの本」 神戸万知 (ごうど・まち) さん講演会で公共図書館の司書の方から出された質問; 

    • --- 学習障害をお持ちのお子さんにとっては字のない/少ない絵本の方が素直に受け入れることが出来、 (その様なお子さんは) 絵を読み解く能力に優れていると思われるので、講演会で紹介されたアルゼンチンのクラウディア・レニャッツイさんの絵本を是非図書館に配備したい ---

が妙に気になり色々調べてみました。折角時間をかけて調べた訳だし、翻訳とも無関係ではないので以下つらつらと書いてみることに。


まず、図書館をたま〜〜にしか利用しない私の認識不足を思い知らされました。『バリアフリー図書』 なんてものが存在することさえ知らなかったし、図書館が歩行障害 (車椅子関連) や視覚障害点字図書) に限らない障害者サービスを提供していることさえ認識が無かった。学習障害についても殆ど何も知らなかった。「読書の楽しみをすべての子どもたちに」 なんて当たり前と思っていたのに、それを実現させるのは容易では無いことを初めて認識させられましたね。

参考文献; (私もこれから熟読予定)

http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/access/book/080320_yamauchi_cl2007.html
図書館利用に障害のある子どもへのサービス
山内 薫 (墨田区立あずま図書館)


http://www.kodomo.go.jp/images/event/evt/2005-06/symposium.pdf
国立国会図書館国際子ども図書館「読書の楽しみをすべての子どもたちに」
シンポジウム「バリアフリー図書の普及を願って―図書館と出版の協働」
第二部 討論   平成17 年7 月20 日 開催


でも同時に、それらが多分一般的には陽の当たらないところで地道に着実に活動されている図書館員やら出版に携わる方々、ボランティアの方々に支えられているのを知ることは、ゼニ万能の殺伐とした時代に、本当に嬉しいことですし、自然に頭が下がります。オレにも何か本当に価値のあることが出来ないか?と考えさせられてしまうしね。


一方で、いわゆる 『健常者』 にとっての 『字のない絵本』 については認識通り。即ち別に無くても大して差し支えないな、むしろ贅沢の部類なんだろうな、との感を強くしました。つまり、その様な用途のために販売した収益の一部を、図書館などへの寄贈に回してもいい筈だってこと。ゼニにこだわるのであれば販売価格に上乗せするなり費用を調整しておけばよい訳で。書籍にその様に記載しておけば購入者には納得して頂けるだろうし、執筆者・原作/翻訳者・出版社にとっては名前も売れる、正当な商行為ですからね。


さて本題; 何故字のない絵本が(ある種の)学習障害克服の役に立つのか?浅い知識に基づく誤解があったらご勘弁。(メールで指摘頂いても構いませんが、恐らく答え様がありません)

幾つかのサイトを見た結果参考とさせて頂いたのは; http://www.kyoto-v.com/ ”私たちi-Ten-Labo<アイテンラボ>は、京都のボランティアやNPOのIT(情報技術)化をお手伝いします。” のサイト中の 「学習障害の子の気持ち」 http://www.kyoto-v.com/output.php?id=458


学習障害


この話題は高度に専門的ですから敢えて触れないことも考えましたが、精神病などと混同され差別対象になり兼ねませんから受け売りをします。*1(勿論精神病だって差別をしてはいけませんが)

上述サイトで案内されている【ことばと発達の学習室】のサイト中 「通常の学級の先生方へ :LD、ADHD高機能自閉症アスペルガー症候群の子ども達の理解と指導の為に」 http://www011.upp.so-net.ne.jp/aaaam500/kensyu/tujosidou.html より以下抜粋;

  • LD(学習障害)

        定義 「基本的には、全般的な知的発達に遅れはないが聞く、話す 読む、書く、計算する、又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。

        学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。」
  • ADHD(注意欠陥多動性障害)

        ADHDは、脳内神経伝達物質ドーパミン代謝の異常を疑われる障害である。周囲の環境に合わせて自分自身をコントロールする事ができにくく、日常生活様々な場面で困難にぶつかる事が多い。

        診断は、医師によってなされる。診断基準では、「不注意」「多動性」「衝動性」の3つが評価項目としてあげられている。こうした子供は、学齢期の児童の5〜8%ともいわれている。
  • 高機能自閉症アスペルガー症候群

        自閉症は、情緒の障害や精神障害ではなく知覚や認知の処理過程の発達障害であり、その為、独特の偏りや遅れがあるのだという事が明らかになって来た。自閉症の特徴は、
        ■社会性の障害 
        ■コミュニケーションの障害 
        ■想像力の障害とそれに基づく行動の障害

     自閉症のうち、知的発達の遅れのない高機能自閉症や、知的発達もコミュニケーション(ことば)の遅れもないアスペルガー症候群の子どもたちは、一見、他の子どもと変わりなく見える事も多く、通常の学級にいることが多い。


これを読んでいると、何か自分にあてはまりそうなものもある様な気がします。と云うより、程度の大小はあるにしても、誰でも持っているのでは? 昔から怠け者・我儘・問題児などとして扱われていたタイプが、実は 「中枢神経システムの機能や器質に起因する発達障害」 のある子だとわかってきたのは、つい最近のことらしい。

その障害に見合う適切な配慮や指導がなされれば本来の力を発揮できる可能性が大きいのに、それらの配慮がされなければ社会生活を営むことを難しくするトラブルを増幅してしまう、二次障害の危険性があるそうです。すぐキレる、なんてのはこれに相当するのでしょうか。

でも考えてみると、昔は子どもの数も多かったし因果関係がわからなかったから二次障害は今よりはるかに多かった筈ですが、実感としては全く逆。だとすると 「発達障害」 の原因は食生活の変化以外には考えにくいですね。(シロートの珍説)


■字のない絵本との関係


バリアフリー図書』 のバリエーションは多いと思いますが、ここでは字のない絵本に特化します。


要するに、文字を読む・追うことが苦手なタイプの障害者にとって有効、とのことですね。『字のない』 と云うことでは写真集やら画集やら録音・動画でもよい筈ですから、 『絵本』 の役割は楽しくストーリーを理解させることなのでしょう。

一方人間と云うシステムに関して私の持っている確信は、ある能力が欠ける場合、別の能力がそれを補うことでバランスを取る筈である、と云うこと。内部や外部の環境因子の変化にかかわらず生体の状態が一定に保たれるという性質からすると、ホメオスタシスと呼んで差し支えないか?

つまり、字は追えないから通常の絵本はウザくって見たくもない。でも絵だけであれば、特に全てにおいて柔軟である子どもの場合、ストーリーを把握する能力が他人より傑出しているのだから夢中で読める。そのうち文字にも興味を持つようになる−−−ってことでしょうか。


■翻訳との関わり


字が無ければ当然翻訳は不要ですが、外国での実例やら購入先の調査・紹介等では役に立てる筈。その部分だけなら私の様に翻訳の才は無いが外国語を扱える者でもいいし。字の少ない絵本の場合はその少ない部分が翻訳の腕の見せどころですしね。



−−− 今回色々絵本をネットで物色していて、むしろオトナこそ読むべきと感じた、字のない絵本を見つけました。もちろん子どもと語り合うのにもよい絵本です。入手困難なものですが、何とかして読んで感じたところを書いてみたいとおもっています。


.

*1:言うまでもありませんが、引用の責任は全て私にあります。