遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

平成21年4月25日開催 「ラテンアメリカと子どもの本」 神戸万知 (ごうど・まち) さん講演会のこと

3月19日付け 【翻訳家 山岡朋子さん その34  『フリア・アルバレスと闇の時代』 その5: その他の作品】 で紹介致しました、翻訳家 神戸万知さん の講演会が昨日国際子ども図書館で開催されました。久々の上野公園だから散策がてら、と思いましたが生憎の雨、そのせいか講演会の出席は40名程度でしたか。


●主催者: 国立国会図書館 国際子ども図書館 紹介

  • 講演会までの時間で館内をぶらぶらしましたが、翻訳に関して非常に情けなく感じたことは、外国→日本に比してその反対方向が数的に圧倒的にプアであること。ハナシは少し脱線しますが、私はメーカーで輸出に携わる人間です。自分を発信しなければ生きていけません。文化だって同じ、外に発信しなければ理解なんてされない。いつまでたっても黄金の国ジパングのまま。 (この図書館から除外されていると思われる漫画は別ですよ。これこそは日本オリジナルの輸出品です。)英訳源氏物語におけるサイデンステッカーさん、英語版蘇東坡伝記における林語堂さんレベルを求めるのは明らかに無理があるにしても、とにかく発信し続けなければ。


●翻訳者経歴 (ネットでの調査、講演内容などによる)

  • 滞米中および大学院在学中の出会いから、アメリカのヒスパニック系の児童文学の翻訳に従事。特にラテンアメリカの北側 (中米・カリブ) に興味がおありとのこと。他評論・エッセイ・童話の再話・後進翻訳家の指導など精力的に活動。
  • 翻訳者公式サイト『ピカピカな毎日』 は、先日紹介の通り http://godomachi.com


●講演会骨子 14時〜16時の2時間

  • 講師経歴の紹介; 野間コンクール(上述)、ラ米との関わり
  • 各国事情紹介 メキシコ〜チリ; 人種構成、識字率、児童文学のレベル、作品紹介など
  • 「ヒスパニック」 の紹介
  • 質疑応答


山岡朋子さん同様、ラテンアメリカを紹介されている数多くはない仲間と云う親近感があります。

南米の巨人ブラジル (ポルトガル語圏) が除外されていたのはやはり物足りない、「ヒスパニック」 中心と云うことで北寄りの偏見があるな、など感じたところは多々ありましたが、今回の演題からすると過不足のない、滅多に聞けない講演だったと思います。


実は今回の講演会で大変感銘を受けたことがひとつ; 質疑応答の部で公共図書館の司書 *2 の方が、講演中紹介された字の殆ど無い絵本 Claudia Legnazzi 作 "YO TENGO UNA CASA" について質問されたこと。この書籍は全ページプロジェクターで紹介され、文は最初と最後のページにちょろっとあるだけ;


出典:http://www.accu.or.jp/noma/japanese/works/2002/j_index2.html
著作権: 財団法人ユネスコアジア文化センター(ACCU) *3
  

いわゆる 「字のない絵本」 は一般的には子どもの創造力を高めるとのことで近年増えている様ですが、質問された司書の方によると、学習障害 (中枢性聴覚処理障害?) をお持ちのお子さんにとっては字のない/少ない絵本の方が素直に受け入れることが出来、絵を読み解く能力に優れていると思われるので是非図書館に配備したい、とのこと。(私はその様に理解しました) この様な需要があることは、現場の一線で奮闘されている方からでなければ聞けないことです。


なお参考まで:

Claudia Legnazzi さんサイト; http://claudialegnazzi.blogspot.com/

同、関連サイト; http://www.forodeilustradores.com.ar/Ilustrador.asp?legnazzi


上記神戸万知さんサイト中の 「WEB版あとがき」 から、フーリア・アルバレス 『ロラおばちゃんがやってきた』 に関して以下紹介されておりました;

    • その1 ヴァーモント周辺の気候編
    • その2 マイノリティ編
    • その3 ドミニカ編
    • その4 装丁編


.

*1: PDFで読むことが出来ます。 url = http://www.kodomo.go.jp/images/profile/mado/2009-mado-full.pdf

*2:以下、ウィキペディアより抜粋; url = http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%B8%E6%9B%B8

日本では、図書館法に規定された日本の法制度上の資格として「司書となる資格」があり、図書館法上の「司書」は図書館法にいう「図書館」(公共図書館)に勤務し、資格を有する図書館専門職員を指す。このほか、図書館法に根拠を持たないけれども法律に基づいて「司書」の肩書きを有する例もある。

*3: 以下 http://www.accu.or.jp/noma/japanese/j_index.html より抜粋;

野間国際絵本原画コンクールは、作品発表の機会に恵まれないアジア太平洋(日本を除く)、中南米、アフリカ、アラブ地域のイラストレーターや画家を対象に、1978年から財団法人ユネスコアジア文化センターが野間国際図書開発基金によって隔年で運営している事業です。