遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

翻訳家 山岡朋子さん その33  『フリア・アルバレスと闇の時代』 その4: バルガス・ジョサの作品

トルヒージョ政権下のドミニカ共和国を扱った作品として山岡朋子さんがエッセイ 『フリア・アルバレスと闇の時代』

http://shuppan.sunflare.com/essays/yamaoka_01.htm

中で言及の、ペルーの作家マリオ・バルガス・ジョサの作品 "La Fiesta del Chivo" (2000) の紹介もしておきます。なおこの作品も私は未読のため周辺事項の案内にとどめます;


  作家のHP(http://www.mvargasllosa.com/)より抜粋


この日本でも比較的よく知られた作家のものは翻訳も多い様ですが、 「翻訳作品集成」 および 「世界を感動させた作家たち」 サイトによると、各々;

http://homepage1.nifty.com/ta/sfv/vargas.htm
http://www.kufs.ac.jp/toshokan/worldlit/worldflame23.htm

山岡朋子さんご指摘のとおり、当該作品に邦訳は無い様です。


若くして国際ペンの第14代会長を務められ、94年にはスペイン語圏のノーベル文学賞に匹敵するセルバンテス賞を受賞したこの大御所は、フジモリに敗れたものの1990年ペルーの大統領選挙に出馬した際日本でも報道されましたね。私個人的にはあまり好きではない彼の政治面も含む経歴については、【立命館経営学】 第46巻 第5号 (2008年1月) 掲載の立林良一さんによる 『マルクス主義から新自由主義へ ―マリオ・バルガス=リョサの軌跡―』 に詳しいのでそちらへ譲ります;

www.ritsbagakkai.jp/pdf/465_05.pdf

なおこの論文中に以下記述があります;


−−−さらに3年後の1969年に長編第3作として発表されたのが『ラ・カテドラルでの対話 (La conversación en la Catedral)』である。1948年から8年間続いたオドリアによる軍事独裁の時代を描いたこの小説は,独裁者個人よりも,腐敗した社会全体の状況を大きくとらえることを意図している。上流階級の出身ながら社会の不平等に強い問題意識を持つ,作者の分身ともいうべき若きサンティアゴと,独裁者の右腕として政権維持に辣腕を振るうカジョ・ベルムーデスを中心に,権力の中枢から社会の底辺に至る数多くの登場人物が絡み合って,ひとつの大きな物語が浮かび上がってくる。時と場所を異にする多数の会話を交錯させることによって重層的に描き出されたこの作品は,まさに全体小説と呼ぶに相応しいスケールを備えている。人は日常生活を送っている限り,自分が置かれている社会的状況をなかなか大局的に捉えることはできない。しかし,小説に描かれた虚構の中であれば,読者は社会全体の大きな動きを見渡すことが可能になる。60年代の3つの長編小説には一貫して,文学の持つそうした機能への積極的評価が反映しており,『ラ・カテドラルでの対話』は,全体性の追求を最大限にまで押し進めた作品ということができる。−−−


文学の持つ俯瞰機能とも云うべき可能性を追求していると云う点は、アルゼンチンの作家 Elsa Osorio さんの作品 "A veinte años, Luz " 、ドミニカ共和国−合衆国の作家 Julia Alvarez さんの作品 ”In the Time of the Butterflies” などとの共通点と思われます。2000年に発表された "La Fiesta del Chivo" についても、それが全てではないにしろ比重は高い筈。"La Fiesta del Chivo" あるいは "Conversación en la catedral" については、時間が許せば是非オリジナルを読んだうえで検証してみたいとおもいます。


"La Fiesta del Chivo" の作品紹介は、何故か西語版のウィキペディアhttp://es.wikipedia.org/wiki/La_fiesta_del_chivo) よりも英語版ウィキペディアhttp://en.wikipedia.org/wiki/The_Feast_of_the_Goat) に詳しいですね。


なおこの作品は映画・舞台にもなった様です;

題名 = La Fiesta del Chivo   映画


題名 = Scene of La fiesta del chivo (The Feast of the Goat) 舞台