遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

翻訳家 山岡朋子さん その25  『ルス、闇を照らす者』 : 原作者 Elsa Osorio さん その1

2008年10月27日付け 【翻訳家 山岡朋子さん その20 『ルス、闇を照らす者』】にて翻訳書の復刊について記載しましたが;

http://d.hatena.ne.jp/El_Payo_J/20081027/1225062108

復刊の投票がそう簡単に集まらないであろうことは想像に難くない。私の本音は、人気があまり無いと云うだけで書籍を簡単に廃刊することに承服し兼ねる、即ち市場原理を考えもなしに文化に当てはめるんじゃあねえ、と云うことなのですが。

市場の声の重要性は私自身がモノを創って売るメーカーの人間ですから十分理解していますが、同時に、市場原理と云う、聞こえはいいが要するに弱肉強食の暴力の原理をあてはめちゃあいけないものもあるでしょ、との思いも強い。例えば社会福祉なんてその最たるものですね。それにお客様の声が正しいとは限らないし。

当面地道に、周辺から攻めていくしかなさそうですね。


『ルス』の原作者 エルサ・オソリオさん自身のサイトは;

西語サイトを見る限りでは1年近くアップデートされていない様ですが、最新の小説として "Las mil y una noches"(千夜一夜物語、Elsa Osorio・Luis Sepúlveda 共著)が2008年4月に発売されています。

なおエルサさんの活動は小説だけではありませんが、私は門外漢ですからここではサイトの紹介に止めますね;

      • 既刊書の紹介  サイト内では2006年の Cielo de Tango が最新
      • 各国メディアでの紹介リンク集
      • ワークショップの紹介
      • 書評の紹介
      • 原作者お勧め集; 書籍、サイトなど
      • 連絡先: 原作者本人、ワークショップのメールアドレス


別サイトでエルサさん本人の『ルス』に関する2006年10月コメントの動画が見られます;

http://www.perfil.com/contenidos/2006/10/19/noticia_0021.html

以下はサイトのプリントイメージです;

このサイトにアクセスのうえ、この文のすぐ上にあるエルサさん画像をクリックすると見られます。日本語が不自由ですがあえて一部を訳すと;

−−−この小説を書き始めた頃、『おばあちゃんたち』が子供を捜し出したケースはあったが、少なくとも公式に知られている限り、子供が自分が誰であるかを捜しているケースは皆無だった。そこで、もし何らかの事情で、ルスの様に誰にも捜されていない子供がいたらどうだろうか?との思いに取りつかれたのがこの小説を書いた動機。架空のことではあるのにそれ以来現在まで、自分のルーツを求める若い人たちが沢山増えたのは特筆すべきこと。


−−− 書いていく過程で主人公になり切ることで自分だけでは出来なかった展開ができたし、自分より若い世代である主人公ルスの抱く希望が私にもうつってしまった。


−−− なぜ今まで捜してくれなかったのか?の問いに対して、それを正当化出来るだけの言い訳は無いのだが、自分が愛し合った両親から望まれて生まれて来たことを知るのが救いとなっている。 −−−

フィクションが現実世界に与える効果・影響について、アルゼンチンのスペイン語で語っておられますね。ですから、歴史の闇に光(西語で Luz )を当てるという社会的・教育的な側面だけではなく、小説としても本当に読み応えがある。山岡朋子(横山朋子)さんの翻訳はそれを忠実に日本語と云うスクリーンに映しているとおもいます。

このレベルの翻訳ものが、たとえ本棚の片隅でも本屋さんに行くとめぐり合えるのでなければつまらない。主な図書館には蔵書されている様ですが、多くの人の目にはとまりにくいですからね。

(そのうち続く)

追伸:上記訳に致命的な誤りがありましたら、右カラムのプロフィールに掲載のアドレスあて、遠慮なくご指摘願います。(ただし細かいのはカンベンして下さいネ、いつもアバウトな訳しか出来ないので)