遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

欧米のイスラム蔑視・危険視、 お上品なお仏蘭西の お下劣な 差別 −−− ついでにフラメンコ

このところ宗教や人権に関する 「欧米西側先進国」 の胡散臭さがやけに目や鼻につきます。情報が瞬時に世界 (とは言ってもITの恩恵に浴することが出来る層だけですが) を駆け巡る様になったこともその原因のひとつでしょうが、今まで正しいと教えられ疑う余地の無かった 「強者の論理」 が破たんしつつあると云うことかな? と私は感じています。最近の幾つかの代表的な報道から考察すると;

【宗教に関する無知・差別/不寛容】

  • 姦通罪女性に「石打ち」死刑判決、イランに批判
    7月31日10時44分配信 読売新聞


    −−− イラン当局は今月、刑執行を見合わせると発表したが、イランの司法制度をめぐる国際的批判が広がっている。 (以下略)


    「国際的」 と云う胡散臭さでは群を抜くコトバは横に置き、この 「石打の刑」 に関するあるイスラムの観方を紹介します。なおこれは私が適切であると判断して私の責任において紹介しますので、出典は示しません;
    • 引用開始


      「かつて預言者(サッラッラーフアライヒワサッラム)に啓示されたものの中に石打ちの刑の節があった。我々はそれを読誦し記憶し理解した。」(日訳ムスリム2巻733頁、牧野訳「ハディース」下巻211頁参照)


      これは第2代カリフ・ウマルの言葉です。ナワウィー師の注釈によれば、「石打の刑の節」とは「既婚の男女が姦通したならば必ず二人を石打にせよ。アッラーフからの見せしめとして。アッラーフは威力並びなく英明におわします。」という啓示だったとのことです。この節の読誦は取り消されましたが、姦通者を一定の条件(下記注)のもとで石打の刑に処するという法的判断は現在でも有効です。
      • 注: 姦通の罪が成立する条件は、
      1. 正常な精神状態にある、
      2. 成人した、
      3. ムスリム(マ)が、
      4. 自分の意志で、
      5. 正式な婚姻関係にない異性と性的な交渉を行い、
      6. 4人の証人がいるか自ら姦通を認めること
      • である。石打の刑が科されるのは前述の条件に加え既婚者である場合だけである。さらに、証人については、証人の一般的な条件を満たしている男性4人が性器が結合しているところを目撃したと同時に証言しなければならない。それゆえ姦通の罪は特殊な場合を除き、本人が姦通を認める以外成立は難しい。
    • 解説;
      死刑、手の切断、鞭打ちなど、イスラームの刑法は厳しく残酷だと言われるが、いずれの場合も厳格な執行の条件があり、それは裁判官や陪審員の心証や時代の雰囲気で変化するものではない。この点が故意に無視され、刑の厳しさだけが取り上げられる傾向があるように思う。しかし、死ぬまで様々な権利や自由を奪う無期懲役という刑罰が死刑よりも残酷でないと言えるだろうか。人間によって制定された罪の概念とそれに対する刑罰が常に為政者によって恣意的に運用されてきたことを考えれば、アッラーフによって制定された万人に平等に普遍的に適用されるイスラームの刑罰の方が人間の幸福と平等、社会の平和に資するのではないだろうか。何よりも重要で、また、人定法と大きく異なる点は、これらの刑罰はいわゆる現世限りのものであり、本当の審判は最後の日に下るということである。現世で無実の罪を受けた人も受けるべき罰を逃れた人も最後の審判ですべてが清算される。最後の審判によってのみ人間の平等と正義は実現されるのである。


      引用終了
  • これがイスラム世界の中で正しい観方であるならば、女性が否認している今回のケースではその厳格な条件が本当に満たされたのか? は確かに疑問。しかし、「石打ち刑」 だけを取り上げてザンコクだ、ヤバンだ、イランの司法はおかしい、と批判するのは正しいことか? 上掲報道の中に 「(イランは) 執行法の変更も検討しているとの報道もある」 とありますが、外部からの問題提起はおおいに結構だがイスラム世界の中で解決されるべき問題です。聖書をてんでばらばらに勝手に解釈出来る某宗教と異なり、「神の言葉」 を勝手に解釈することが許されない、従って西側が正しいと考える政教分離が難しい (と私は解する) イスラムの生き方だって尊重されるべきでしょう。尤も、大統領でさえ国によってはおおっぴらに 「不都合あるいは不適切な関係」 を持てる 「下半身の自由?」 を謳歌する国々から観ると理解しがたいかも知れませんが。

【マイノリティーに対する無知・差別/不寛容】

  • [http://mainichi.jp/select/world/news/20100731k0000m030105000c.html?inb=yt
    フランス:サルコジ政権が「ロマ」規制強化 人権団体反発]
    毎日新聞 2010年7月30日 21時35分


     【パリ福原直樹】フランスのサルコジ政権が、国内を放浪する民族ロマや「非定住者」への圧力を強めている。一部の非定住者が今月、暴動を起こしたのがきっかけで、仏政府は28日、ロマらの違法キャンプを撤去するなどの方針を決めた。だが長い間、差別されてきた人々への強権発動は、国際社会や人権団体から大きな反発を招いている。 (以下略)
  • フランス:「ブルカ」着用禁止法案を可決 下院
    毎日新聞 2010年7月14日 19時09分


    【パリ福原直樹】フランス下院は13日、イスラム教徒の女性が使う、顔や全身を覆う衣服「ブルカ」の着用を全面的に禁止する法案を賛成335票、反対1票で可決した。9月に上院で審議予定だが、その後、法律の違憲審査を行う憲法会議が違憲とする可能性もあり、法案の成立は微妙な状況だ。下院の判断には、人権団体などから「宗教・表現の自由への侵害だ」などの批判が出ている。 (以下略)


その強烈な個性から芸術では多分秀でているのだろうが、それ以外では親米・新保守主義路線の猿居士も仏蘭西も犬のxx (カタカナ2文字伏字) まみれと呼ばれ私は無邪気にそう思い込む巴里もロクなものではない。過去アフリカやハイチをはじめとする植民地を荒らし尽して知らん顔と云う許し難い前歴はあるものの、幸いにして現在国際社会でのプレゼンスは低いので、国内で勝手にやってくれ、フラメンコの唄の中で "Fanfarrones" と呼ばれる連中のことは知ったことか、と思いますが。


ところで上掲記事中、その昔学生時代に調べたことのある懐かしい 「ロマ」 と云う言葉が出て来ました。ウィキペディアで改めて調べてみましたら、フラメンコと云う観点から観て面白い記述がありました;

ロマ - Wikipedia

  • ロマ(roma, 次節も参照。語尾の異なるものあり)はジプシーと呼ばれてきた集団のうちの主に北インドのロマニ系に由来し中東欧に居住する移動型民族である。 (中略)


「ロマ」という自称

  • (中略)1971年の第1回世界ロマ会議以降は、よりポリティカリー・コレクトな名称として、多くの集団の自称である roma 「ロマ」を呼称とすることが提唱された。EU はじめ各国の行政などもこの名称を採用している。ただし、この名は本来彼ら全体を代表するものではなく、この名を使わないグループも多数存在し、彼らの中には「ロマ」とは異なるアイデンティティをもち、「自分たちはロマではない」と主張する者もいる。以下に例を挙げる。 (中略)


    エジプシャン


    アレキサンダー大王に従って移民したエジプト人の末裔であると自認する人々。


    スペイン語の "gitano" は英語同様にエジプト人 "Egiptano" が語源のハズ。フラメンコの唄の中で彼らは 「ファラオの末裔」 との誇りを示しています。


    ロマと同根のロマニ系の集団としてはヨーロッパでは中欧のドイツ語圏を中心にシンティ、イギリスにロマニチャル (romanichal) , 仏語圏にマヌーシュ (manouche) , 北欧やイベリアなどのカーレ(kale) などが知られている。


    スペインジプシーの言葉 "Caló" は現在、恐らくフラメンコの唄のなかで一部の語彙が使われるのみの死語でしょう。語彙集は Lexico Caló / Universidades de Andalucía 参照。左カラムのメニューを選ぶとコンテンツが表示されます。


歴史

  • 彼等は西暦1000年頃に、インドのラージャスターン地方から放浪の旅に出て、北部アフリカ、ヨーロッパなどへとたどり着いた。旅に出た理由は分かっていないが、西に理想郷を求めた、などの説がある。彼らがヨーロッパに史料上の存在として確認できるようになるのは15世紀に入ってからで、ユダヤ人と並んで少数民族として迫害や偏見を受けることとなる。ただしユダヤ人ほどこの事実は強調されていない。 (中略)


ロマの有名人(異説や遠祖を含む)

  • 西欧
    • カルメン・アマヤ (Carmen Amaya, 1913年11月2日 - 1963年11月19日)- フラメンコダンサー、歌手
    • ラモン・モントヤ Ramón Montoya - ギタリスト。 (以下略)


      欧州・北中南米でも興行実績のあるカルメン・アマヤはまだしも、ラモン・モントヤは相当 「通」 でなければ有名とは言い難い? 彼を挙げるなら、じゃあ何故パストーラやマヌエル・トーレは挙がらないのか? など少々不満ですが。