遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

アイスランドの特異な火山活動

前の記事に追加しようと思いましたが、不謹慎ながらよい機会なので調べて見ると、今回の噴火を含めたアイスランドでの地殻活動には他地域とは異なった点が多いため分けることに。


アイスランド - Wikipedia 中に 『アイスランド大西洋中央海嶺ホットスポット (地学) - Wikipedia の直上に位置している。このため海洋プレートの生成が地上で見られる珍しい島で−−−』 と紹介されており、また 大西洋中央海嶺 - Wikipedia には 『アイスランドは、島の中央を大西洋中央海嶺が貫いている。このような島は世界でもアイスランドしかない。』 との記載があります。加えて今回の噴火による直近のリスクが溶岩流出や火砕流などではなく、噴火による氷河融解での洪水発生と云う点も特異と思います;



出典: Mid-Atlantic Ridge - Wikipedia
上掲 『大西洋中央海嶺』 の英語版ウィキペディア


中央海嶺 - Wikipedia』 ですから、 「海洋プレートが両側に引っ張られるために生じた地表の割れ目が直下のマントル(固体)の上昇によってうめられ、マントルの断熱上昇のために部分融解が起こりマグマが発生し、火山活動が起こり、新しいプレートと海洋地殻が生成される大規模な海底山脈」 ですが、アイスランドではこれが地上に現れています。


なお何度か紹介しております プレートテクトニクス - Wikipedia 理論は殻の動きを扱いますが、火山の噴火だと更にその中身を扱う訳で、90年代以降日本の地球物理学者が プルームテクトニクス - Wikipedia 理論を提唱している様です。 (私の高校時代にはなかった理論−−−)


ジェイソン・モーガン (W. Jason Morgan) のマントルプルーム学説によれば、 アイスランドプルーム - Wikipedia は、アイスランドの島の形成、そして、現代において島の特徴となっている火山活動の原因であると通常考えられているとのこと; ⇒ アイスランドプルームの英語版ウィキペディア に詳しい。付け焼刃では理解し切れませんが。


で、噴火 - Wikipedia について。このサイト内に以下記述があります;

噴火の場所


火山は噴出する場所、特に水の存在によって噴火の様式が大きく変わる。

  1. 海底深くで火山が噴火した場合、高い水圧で爆発は起こらず噴出した溶岩は水で急冷され枕状溶岩あるいはハイアロクラスタイトとなる。
  2. 水面近くの噴火やマグマが地下の浅い所で地下水と出あった時は、水が瞬時に沸騰し体積膨張を起こすため爆発的なマグマ水蒸気爆発が起きる。
  3. 巨大な氷河の下で火山が噴火した場合は1と同様な形態となるが噴火の規模が大きく氷床を解かしてしまった場合、氷河の下に巨大な湖ができ氷河の壁は大量の水の重さを支えきれずに決壊し家や橋まで流してしまう大規模な洪水が発生する。この大洪水をアイスランド語Joekulhlaups (ヨークルハウプス)と呼ぶ。


この3番が今回のリスクと云うことになりますね。 (私が勝手に想像したのは、溶岩の熱により氷河の底が溶けてその水に乗って氷河そのものの全層雪崩が起きること、およびこれが海に流れ込んで発生する津波ですが、そんなに単純ではないらしい。パニック映画のネタにはなりそうですが。) 過去の例が挙げられています;

氷河湖決壊洪水 - Wikipedia より抜粋;
英語版

  • 事例

      • 最も有名な氷河湖決壊洪水は、ヴァトナヨークトル氷河の氷層崩壊による大規模ヨークルフロイプである。アイスランド語のヨークルフロイプ (Jökulhlaup) が英語に取り入れられたのも、アイスランド南部がこの災害の被害をしばしば受けていたためである。1996年の事例では、ヴァトナヨークトル氷河のグリムスヴォトン湖群 (Grímsvötn lakes) 地下の火山が噴火し、スケイダラ川がスカフタフェットル国立公園の手前の地域に氾濫した。このヨークルフロイプの流量は1秒あたり45,000立方メートルに達し、アイスランド国道1号線の数か所を破壊した。氾濫後、氷河の流れに取り残された高さ10メートルの氷山もいくつか見られた。グリムスヴァトン火山クレーター(ヴァトナヨークトル氷河の中央付近)周辺を流れた水の最大流量はミシシッピ川の流量を超えた。同様の決壊は1954年、1960年、1965年、1972年、1976年、1982年、1983年、1986年、1991年、1996年に起こっている。1996年には、噴火によって3立方キロメートルの氷が溶解し、1秒あたりの流量は最大6,000立方メートルに達した。


上掲1996年の氷河湖決壊洪水についてと思われる記事が既にお馴染みのUSGSのサイトに掲載されていました ⇒ Hawaiian Volcano Observatory


またリンク集は; ⇒ Smithsonian Institution - Global Volcanism Program: Worldwide Holocene Volcano and Eruption Information


ウィキペディアによると、 『−−−20世紀を通しての、人口の増加・氷河融解に伴う氷河湖の増加により、問題はさらに重要性を増している。氷河が存在する全ての国々に存在する問題であるが、特に中央アジア南アメリカアンデス地域・アルプス山脈の氷河をもつヨーロッパ各国などが特に危険性の高い地域として認識されている。』 とのこと、ヒトの活動が温暖化を加速しているのであれば氷河湖決壊洪水は人災の面も持つと云えなくもありませんが、アイスランドの場合は多分純粋に火山活動によるものですね。人的被害が出ないことを祈ります。


最後にアイスランドの宣伝をひとつ; 今回の災害の原因ではありますが、その地理的要因を活かした観光 −−−巨大な露天風呂 ブルーラグーン - Wikipedia 。日本にも沢山ありますが、ここは規模が違います。タイミングは測らなければなりませんが、是非訪問したい文字通りの 「ホットスポット」 ;



出典: Blue Lagoon Iceland
水着着用でしょうね、きっと−−−