遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

オバマのxxx平和賞受賞演説 その2: ところで 「オバマジョリティー」 はどうするの?

関岡英之さんの著書 『目覚める日本: 泰平の世は終わった *1 』 のまえがきに、【−−−シカゴで「コミュニティ・オーガナイザー」をしていたオバマ氏を「すごくスピーチのうまい奴がいる」と発掘したのはラーム・エマニュエル下院議員だという。エマニュエル氏はかつてクリントン政権で上級顧問を務め、今回、オバマ氏から真っ先に大統領首席補佐官 *2 に任命された。攻撃的性格で、「ランボー」と渾名される人物だ。結局、オバマ氏は経済も安全保障も海千山千のクリントン一派に丸投げして、アメリカのイメージアップの広告塔として徹底的に使い捨てにされるのが関の山だろう。われわれも、あのミステリアスな微笑に魅了されている場合ではない。善意の微笑みの陰に底意地の悪い一面を見せるのがアメリカという国だ。】 とありますが、正に今回の演説はその通りのものだったと思います。


ネライ通りこのスピーチによってアメリカ国内でのオバマ大統領の評価は一気に盛り返した様ですから、コントロールしやすい国民ですね。現在演説本体を英語・日本語訳 (英語だけではかったるいので) で読みなおしていますが、演説そのものはそれ自体では完結しているものの、歴史を含む現実と対比すると、やはり詭弁にしか読めません。先日 「英語の教材としては秀逸かも」 と書いたのは、エキスパートの練った原稿をスピーチのうまいオバマが演じることがわかっていたから。言っていることはエゲつなくとも、リーディング・ライティング・スピーチの格好の教材ではあります。

  • http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091212-00000053-san-int
    オバマ演説 米英メディア論評 「正しい戦争」現実路線を好感
    12月12日7時56分配信 産経新聞


    −−− こうした率直な姿勢を11日付の米紙ニューヨーク・タイムズ社説は「ノーベル賞委員会が聞きたかった(演説)内容かは疑問だが」としながらも、「戦争は極めて困難だが、必要でもあることには同感だ」と述べ、多国間主義と対話路線を基本にしたオバマ外交を肯定的に論じた。


     一方、10日付の英紙ガーディアンは「オバマ大統領はオスロノーベル平和賞を受け取りながら、アフガニスタンの紛争を拡大させ、悪を打ち負かすための『正しい戦争』を訴えるなど、矛盾した演説をした」と批判している。


     10日付の英紙フィナンシャル・タイムズ社説もイランの核問題やロシアとの戦略核兵器削減交渉などの難題を念頭に「そろそろ物事が実際に動き始めねばならない」と苦言を呈し、11日付の英紙インディペンデント社説も「言葉だけでは何も解決しない」とオバマ氏に“有言実行”を強く促している。


英米主要メディアの論調は、矛盾しているとか有言実行を求めるなどの保留はあるものの、「正しい戦争」 と云う概念について否定はしていない。ただし、過去の大戦で国土が焦土と化した欧州とその経験をしていないアメリカで 「正しい戦争」 の意味は多分異なると思いますが。日本の場合は通常の爆撃プラス核爆弾により焦土と化し、敗戦により過去の侵略行為に関しても全否定してアメリカの占領下に入った経緯がありますから、欧州とも異なった考え方があると思います。問題はアメリカ。戦場に送られた自国民を失う体験はもちろんしているし、今回の演説でも彼らを賞賛していますが、自国本土が戦場となったのは恐らく南北戦争が最後。核爆弾についても、戦争を終わらせるために必要であった、の理屈だけでその行為に対する反省は無い。原爆被害は結局日本自身の責任だ、などという捻じ曲げられた感情 (日本に全く責任が無いとは私も思いませんが) もあってアメリカを強く非難することが無かったことも、アメリカが歴史を振り返らない原因のひとつと言えるでしょう。つまり;アメリカだけは、家族を失う以外の現代の戦争の悲惨さを体験していない、と云うこと。(だから9−11でその一端を目の当たりにして復讐に燃えた訳で) 「正しい戦争」 が目の前で展開する訳ではありませんから、美辞麗句に酔ってしまう。


「核のない世界」 の演説を一方的に都合よく解釈して 「われわれはオバマジョリティー♪」 なんて尻馬に乗った方々は、一体どうするんでしょうね。以下、幾つかの記事のヘッダーのみ紹介;


最後に、フィデルはどう言っているかを見たのですが、ブログの最新記事は12月9日なので、今回の演説そのものについては当然ふれていません;

http://lasreflexionesdefidel.blogspot.com/2009/12/obama-no-estaba-obligado-un-acto-cinico.html
Obama no estaba obligado a un acto cínico
miércoles 9 de diciembre de 2009, Reflexiones de Fidel


少し時間が経てば色々なコメントが見られそうなので、多分その3へ続く−−−

.

*1:PHP研究所2009年2月12日発行第1版第1刷より、
ISBN-10: 4569706207, ISBN-13: 978-4569706207

*2:アメリカ合衆国大統領首席補佐官 (ウィキペディア)参照