遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

少女暴行の映画監督: マスコミと、それに踊らされる世論による 被害者への暴力は許されるの???

1977年に法定強姦 (性的同意年齢未満の子供に対する性行為を行うこと、ウィキペディア参照) で有罪判決を受け、その保釈中に「映画撮影」と偽ってアメリカを出国してヨーロッパへ逃亡し国際手配を受けていた映画監督の ロマン・ポランスキー (ウィキペディア) がスイスで逮捕されたことが報道されています。ただこの監督、 「戦場のピアニスト」 などの名画で知られるセレブであることから同情的な意見が少なくない様子;

  • http://jp.reuters.com/article/entertainmentNews/idJPJAPAN-11746620091001?rpc=122
    R・ポランスキー監督、事件当時より厳罰の可能性も
    2009年 10月 1日 14:13 JST ロイター


    −−− ポランスキー監督は、国外に逃亡する以前に司法取引で罪を認め、検察側が42日間の禁固刑を求刑することで合意していた。しかし、同監督はこの司法取引が裁判で考慮されず、禁固50年が科されることを恐れ、国外に逃亡した。


     一方、米国での性犯罪に対する刑は当時に比べ厳しくなっており、法律の専門家らは、約30年前のような条件で司法取引が行われることはないだろうとの見解を示している。 (中略)


     13歳の少女に対し違法にみだらな行為をした同監督は当初、性的暴行の罪に問われたが、被害者が証言することを望まなかったことなどを理由に、性的暴行罪での起訴は司法取引で取り下げられていた。


当時13歳の子役モデルへの性的暴行に関して監督本人は冤罪を主張したものの司法取引も判決も有効な訳ですから、保釈中に映画撮影を口実に国外逃亡したことで指名手配されるのは当然です。上掲記事中にもある様に、当時と比べて現在性犯罪に対する罰則は非常に厳しいですから、本来受ける筈であった罰よりはるかに重い懲罰が課せられるべきですね。その生い立ちや奥様を惨殺されたこと (シャロン・テート (ウィキペディア) 事件) など不運をはねのけて名画を制作されたことは事実なのでしょうが、それは過去に犯した犯罪の免罪符にはなり得ない。上掲記事中、恐らく嫌々ながらピーター・フォンダさんが発言した通り、「犯罪はきちんと罰せられるべき」 ですね。それがイヤなら、何故逃げたのか? あの「カリスマ主婦」 マーサ・ステュアートさんだってきちんと服役したのですよ。彼女は実業家ですが、それ以前に人間として立派と思いますが。


この映画屋さんがどの様な罰を受けようが受けまいが私の知ったことではありません。アメリカらしく、カネで正義を買えばいいんでしょ? いずれにせよこの監督の映画の本質的な価値も評価も変わらないでしょうしね。


しかし本当に腹が立つのは、「示談も済んでいるし、被害者も訴追取り下げを願っているのだから許してやれよ」 と云う論調があること。示談が成立しているとしてもそれは民事上のハナシに過ぎませんから、これからの裁判で少しくらい情状酌量はされるかも知れませんが、過去の刑事上の有罪判決は何の影響も受けません。それにこの 「示談」 は、要は札束で横っ面をひっぱたくってことですから、金額から判断してもセレブの思い上がりと言われても仕方がありません。でも、被害者が金銭的に補償を受けるのだから、結果オーライで構いませんが、


問題は、何故被害者が訴追取り下げを願っているのか? と云う点;

  • http://www.jiji.com/jc/zc?k=200910/2009102700217
    被害女性が訴追取り下げ要請=ポランスキー監督事件−米紙
    (2009/10/27-10:16) 時事ドットコム


    −−− 1978年に有罪評決を受けた後、米国を出国した同監督は、スイス当局に今年9月拘束された。それ以来、現在46歳の被害者女性宅には、米国、ドイツ、日本などのメディアから500件近い問い合わせ電話が殺到。カメラマンが自宅前に張り込むなど、注目を浴びたことで、女性は職を失う危機にひんしているほか健康面への悪影響も出ているという。女性は弁護士を通じて「もうそっとしてほしい」との声明を公表した。
  • Roman Polanski sexual abuse case (Wikipedia EN) よりの抜粋:


    Polanski Victim Seeks Dismissal


    The victim of the sexual assault committed by Roman Polanski has called for charges against the film director to be dismissed, court documents show. Lawyers for Samantha Geimer, who was 13 when Polanski had sex with her in 1977, urged a dismissal in a motion filed at a California appeals court on Friday. She had suffered health problems after being hounded by the media following Polanski's arrest last month, it said.The director is currently being held in Switzerland on a US arrest warrant. The papers filed on behalf of Ms Geimer, who lives in Hawaii, ask judges at California's 2nd District Court of Appeal to rule on a previous motion to dismiss the charges against Polanski. Claiming that Polanski had been forced to flee by a "corrupt" judge, they state: "No matter what his crime, Polanski was entitled to be treated fairly; he was not." They also complain that Ms Geimer is being stalked by journalists from news outlets and talk show producers, and that she and her lawyer had received nearly 500 telephone calls in a month. "Larry King has called, Oprah has called, every national network morning show has called. The LA Times has three reporters calling, as do nearly every major newspaper in the United States and abroad. The response - 'Please leave me alone.' But they won't." "The pursuit has caused her to have health-related issues," the court papers add. "The pursuit has caused her performance at her job to be interfered with and has caused the understandable displeasure of her employer and the real possibility that Samantha could lose her job." The filing ends with the request: "Leave her alone."


性的暴行が冤罪だ、と云うのはあくまで 「加害者」 の言い分ですから、それを聴くなら 「被害者」 の言い分だって聴く必要がありますね。この女性は、上掲報道が正しければ、被害を否定している訳ではなく、マスコミによる暴力から逃れたい、と言っているだけです。


日本でも同じですが、犯罪の被害者は少なくとも3度被害に遭います; 最初が、犯罪そのものによる被害。2番目がマスコミの暴力による被害。3度目は周りの心無い言動による被害。報道や言論の自由って、一体何のためにあるのでしょう。加害者ばかりに配慮がなされる今の法の仕組みって、どう考えても間違っていますね。『市中引き回しのうえ獄門・さらし首』 って、意外と理にかなっていたのかも知れません。極論であることは百も承知ですが、今のままではあまりにも被害者が可哀そうです。加害者を守ると云うなら、同等以上に被害者も守れ、と云うのが私の主張です。 (死刑に関しても、基本線は変わらない)


他人事だと思いますか? あなただって私だって、いつ犯罪被害者 (加害者にはなりたくないが) になるかわからないご時世。そうなる前に考えるべきですね。