遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

翻訳家 山岡朋子さん その39  『ルス、闇を照らす者』 : コロンビア バージョン

その発端からして非常に胡散臭い豚インフルエンザ騒ぎはとりあえず横目で見ながら、このところ主にアフガニスタンでまた大規模な殺戮行為が開始されたため色々なサイトのチェックに忙しいのですが、参考とさせて頂いている益岡賢さんのHPで以下記事を見つけました;

原文: http://www.colombiajournal.org/colombia307.htm
Plan Colombia: The New Military Strategy for Afghanistan?
by Garry Leech
2009年3月30日付け


邦訳: http://www.jca.apc.org/~kmasuoka/places/col307.html
プラン・コロンビア:アフガニスタンでの新たな軍事戦略? からの抜粋


アフガニスタンに駐留するNATO主導の連合軍が再び力を取り戻してきたゲリラとの戦いにもがき、ケシ栽培が増加する中、米国統合参謀本部長のマイケル・ミューレン米国海軍大将は、先日、米国が現在コロンビアで採用している対ゲリラ作戦と対麻薬作戦のモデルをアフガニスタンに導入すべきだとの見解を示した。 (中略)


(中略) ミューレンをはじめとする面々は、「治安」の確立がもたらした人道危機、そしてプラン・コロンビアが対麻薬作戦としては完全に失敗したことを都合よく無視している。


国境なき医師団によると、コロンビアはこの数十年、世界でももっとも報道の少ない人道危機を経験してきた。この人道危機の中心にあるのは、強制追放の問題だった。国内避難民を400万人近く抱えるコロンビアは、スーダンに次ぎ世界第二の国内避難民数である。 (中略)


コロンビア政府の治安戦略に見られるもう一つの問題は、失踪の劇的な増加である。とりわけ、政府の政策に批判的な市民社会のメンバーの間で失踪者が増えている。コロンビア検察は、現在、2008年に失踪した1015人のケースを調査中であるが、この失踪者数は2007年の4倍、2005年と比べると1300パーセントの増加である。コロンビア検察庁によると、調査中のケースのうち90パーセント以上で、コロンビア政府軍のメンバーが容疑者となっている。


オブザーバの多くが憂慮しているのは、軍が関与した失踪だけではない。ここ数年で、コロンビア政府軍による超法規的処刑の数も激増している。「超法規的処刑と不処罰を監視する国際使節団」によると、2002年から2007年の間にコロンビア軍が犯した超法規的処刑のうち少なくとも955ケースで誰も処罰を受けていないという。その前の5年間における577ケースから2倍近い増加である。多くの場合、殺されるのは民間人で、軍事作戦の際に敵の死者数を水増しするために、軍は民間人の遺体をゲリラの死者として示すのである。


(中略) プラン・コロンビアのこうした記録を考えるならば、ミューレンが示唆するようにアフガニスタンで同じモデルが適用されるならば、人口の多い都市部で治安が改善され暴力が減るだけでなく、大規模な人権侵害と大規模な難民危機、記録的なケシ栽培ももたらされる可能性がある。


これが事実なら、いや事実でしょうが、正に危機的な状況です。失踪者と超法規的処刑問題は、山岡朋子(横山朋子)さん翻訳の 『ルス、闇を照らす者』 で扱われているアルゼンチンでの人権侵害と規模は小さいものの共通しますが、コロンビアの場合は更に強制追放による国内難民問題、下火になった様ですが金銭目的の誘拐、ゲリラと自警団の存在、そして北の大得意先へ供給される麻薬問題が加わるのが特徴。


いきなり結論まで飛びますと、アメリカからの全ての援助・介入を即刻中止させることおよびアメリカ国内での違法な麻薬使用はアメリカ自身の責任において撲滅させることさえ実現出来れば問題の半分程度は解決したも同然、後は時間はかかってもコロンビア国内で、各勢力の対話を通じて解決可能でしょう。自浄能力も十分あると思われますから、現ウリベ政権の責任追及も、アメリカの横槍さえなけば出来ると信じます。(5月4日付け、同じ Garry Leech さんによる記事 "Colombian Government’s Role in Human Rights Abuses" もサイトにアップされています)


アメリカのいるところ必ず人道危機と麻薬あり、です。アルゼンチンが宣言した Nunca Mas の精神が同じ南米のコロンビアでは全く生きていないことは大変残念。と云うより、益々手口が巧妙化している、と云うことかも知れませんが、歴史を軽んずると必然的に繰り返されることなのでしょう。アフガニスタンと並行して監視の必要がありそう。