遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

ノーム・チョムスキー教授のこと: 言語学者+外交評論家

このところ『ルス』復刊を最終的な目標として、私の能力の問題・時間など様々な制約はありますが、まずその周辺事項について調べ始めています。その過程で、やはり大規模な人権侵害はイデオロギー・政権の形態・地域・時代に必ずしも関係なく起こり得るし実際起こっているな、との感を強めています。Nunca mas の精神が本当に根付いているなら、少なくとも時間の経過と共に無くなっていく筈ですが、実際には手を変え品を変え段々巧妙になって行くだけ。クスリの効かない耐性菌の様なもの。二次大戦や、特に悲惨であったヒロシマナガサキの時だって「繰り返すまじ」と誓った筈なのに、実際今どうなっていますか?


私が80年代から関わっている中南米は、美しい国土、概して明るい民族気質、様々な文化などバリエーションに富む愛すべき地域ですが、一方では軍事政権(もう全部無くなったかな?)、汚職、貧困に代表される極端な格差の存在、他国による内政干渉・嫌がらせ、他国からの資金流入による国内での紛争長期化、麻薬問題、人種問題など何でもアリの世界です。このほぼ全てに北のかの『帝国』が何らかの形で絡んでいることは、この地域に興味があれば周知の事実ですね。何しろ『帝国の裏庭』と呼ばれていた期間が長かったから。『ルス』で描かれた問題は軍事政権だけを断罪して本当に解決か?共犯者がいなければ起こり得なかったのでは?「自由」や「民主主義」という、漠然とした、色々な解釈のあり得る「大義名分」のためなら何をしても許されるか、未解決ですね。


1月24日付け【翻訳雑感:自分の場合】でも述べました通り、「自分の目で見て感じて、それが出来なければ他人の目を通じて見て感じて、自分で判断する」ために私が主に頼っているのは、ノーム・チョムスキーMIT教授の著作・発信です。言語学に少しでも関わったことのあるひとなら、『チョムスキー生成文法*1の名前ぐらいは聞いたことがあるはず。

チョムスキー教授が、若いころから言語学者としてだけではなく、アメリカの外交評論家として活躍なさっていることは学生時代には(受け身で勉強していたため)全く認識がなく、中南米と関わり始めてから認識した次第。教授の経歴・思想背景・著作/発信内容・関連サイトなどは、最下行の注の中に記載したウィキペディアに詳しいので、一部承服出来ない記述はあるがそちらに譲ります。


題名: What Is Globalization? - Noam Chomsky (一例として)


−−−真夜中過ぎの2006年9月21日でしたか、例によって夜更かしをしてさあそろそろ寝ようかと思った時、低音でつけっ放しにしておいたテレビから、「昨日悪魔がここに立っていた、悪魔のにおいがぷんぷんだ」と云うスペイン語が聞き覚えのある声で聞こえた様な気がしたのでよく見ると、丁度国連総会でベネズエラチャベス大統領が演説していました。また凄いことを言ってるな、と思い寝ずに最後まで見ましたが、なかなかおもしろかった;


題名: Chavez Cites Chomsky at UN General Assembly
    関連部分の英語通訳あり


演説全文は http://www.venezuelanalysis.com/news/1954 に英語訳(私は検証していません)アリ。オリジナルの西語での全演説やら全文は、ネットで幾らでも聴いたり読んだり出来ます。この演説の是非の議論は別として、多分これが中南米の本音であると思います。チャベスの名前を聞くだけで嫌悪感催すひとにとっては無意味ですが。でもこの演説が行われた次の日、紹介されたチョムスキー教授の書籍がアマゾンでトップセラーになったとのこと。紹介したウィキペディアに、日本語の翻訳本が紹介されています;

『覇権か、生存か』(集英社集英社新書 0260A], 2004年、鈴木主税さん訳)


なおチョムスキー教授のサイトは; http://www.chomsky.info/ (過去日本語の翻訳サイトも存在した様ですが、暫く前に更新終了。有形無形の圧力がかかったのでしょう。)

私がユダヤアメリカ人であるチョムスキー教授に全面賛成できる部分は、自国が行なう「大義 (just cause)」の名の下での虐殺であってもきちんと糾弾している点です。だって、この「大義」の定義が変わったら何が起こりますか?


『帝国』の皇帝が交替して何が変わるのだろう?大規模な人権侵害の舞台がイラクからアフガニスタンに変わるだけであったら、最悪ですね。イラクでの人権侵害については、以下サイトの参照をおススメします;

http://www.jca.apc.org/stopUSwar/Iraq/iraq_body_count.htm

http://tanakanews.com/070327GOP.htm (以前紹介しました、田中宇さんのもの)

蛇足ながら、このサイトに中南米ファン?にとっては懐かしい名前が;ネグロポンテ。確か現在の(今となっては前政権時代の、か)ポジションを引き受ける時に、中南米時代の問題について今後一切蒸し返さないことを条件にした、と云う記憶があります。コイツの名前をネットで検索してごらんなさい、それこそ山のように出てきますから。80年代中南米との関わりがあったので、『ルス』とも無関係ではないかも。


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*1: ウィキペディアより以下抜粋−−−全ての人間の言語に普遍的な特性があるという仮説をもとにした言語学の一派である。その普遍的特性は人間が持って生まれた、すなわち生得的な、そして生物学的な特徴であるとする言語生得説を唱え、言語を人間の生物学的な器官と捉えた。初期の理論である変形生成文法に用いた演繹的な方法論により、チョムスキー以前の言語学に比べて飛躍的に言語研究の質と精密さを高めた。

url = http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%83%81%E3%83%A7%E3%83%A0%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC