遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

私の大好きなフラメンコのこと その44: ハンガリーのロマ (= ジプシー) 、差別のこと

← 私の大好きなフラメンコのこと その43 ← お上品なお仏蘭西の お下劣な 差別 ← お仏蘭西のジプシー差別 その2


フラメンコとハンガリーがどこで繋がるかといえば −−− ジプシー。 (注:『ジプシー』と云うコトバは差別用語とされますが、フラメンコの世界ではステータス足り得るので、フラメンコに関してはそのまま使用します)

【フラメンコの唄】


  "Que De Hungría Vine Ayer" と云う歌詞は、何人かの唄い手 (女性・男性とも) によって録音されています。例えば;


  
   
   ROSALÍA DE TRIANA-MANUEL MORAO-BULERÍAS POR SOLEÁ
   Manuel Torre (名前だけは大看板ですね), アップロード日: 2010/05/04
    唄っているのは間違いなくROSALÍA DE TRIANA ですが、映像と音楽は別物です。映像が無いから無理やり組み合わせたのでしょう。映像・音楽一致版 ⇒ ROSALIA DE TRIANA-AANTONIO SANLUCAR-SOLEÁ


  また、もっと旧くは大御所 Pastora Pavón (= La Niña de los Peines) の録音も;

   Que de Hungría vine ayer / Pastora Pavón (mp3)

  歌詞: Que de Hungría vine ayer / que yo de Hungría ayer llegué / mira si era flamenca buena / y que yo de Hungría vine ayer /que yo de Hungría ayer llegué / canastas vengo vendiendo / oh mis canastitas / para endiñarte a ti que comer / mira si era flamenquita buena
     フラメンコの歌詞は基本口承ですから、唄い手によって変わることは珍しくありません。何より個性を重視する世界でもあるし。


  昔実際にハンガリーから移動してスペインに来て定住したジプシーがいたのでしょう。おおもとの歌詞の背景や経緯については、心当たりはあるものの億劫で調べていませんが。


ハンガリーのロマのこと】


  このところ、 ハンガリーのロマ についての報道が続きました。事情は次項 『ロマ差別』 参照。ここでは滅多に紹介されることのない彼らの生活の様子と、ハンガリー音楽への彼らの寄与に関して;


  Life In A Romany Settlement
    Published 15 August 2013, Radio Free Europe/Radio Liberty

     Björn Steinz Photography Czech Republic - Germany -- +420 777 218 029 -- steinz@oka2.com


   音楽 / ハンガリー 音楽に関してはやはりプア。
   Music / Hungary
     Roma music / Music of Hungary
       Romani music
       ロマ音楽


  あまり深入りするつもりはないので有名な曲を紹介:


  
   
    Kálmán Balogh and the Gipsy Cimbalom Band - Brahms Hungarian
    tyukszi1, 公開日: 2012/10/06
     ハンガリーのロマ ツィンバロム バンドによるブラームスハンガリー舞曲


   ハンガリーの音楽

    −−−音楽の分野で「ハンガリー」というと先ず思い浮かべるのは、ブラームスの「ハンガリー舞曲」そしてツィンバロムという民族楽器を中心に演奏されるジプシー音楽。このジプシー音楽は本来のハンガリー民族のものではありません。15世紀にジプシーがハンガリーにやってきて、18世紀に同化政策がとられ、定住、就業が義務付けられ、このときジプシーたちが彼らの音楽を演奏するようになりました。以後メランコリックな調べのジプシー音楽は、19世紀広く西ヨーロッパに知られるようになります。 / ジプシーの血を引くヴァイオリニストと知り合ったブラームスは、彼からジプシー音楽を採取します。これに手を加え、編曲したのが「ハンガリー舞曲」です。この舞曲集の人気により、これがハンガリー民俗音楽と誤解されてしまったのです。 (以下略、引用終わり)


  ロマは、定着した南スペインのフラメンコ同様、ハンガリーなど各々の土地で独特の音楽をを育み発展させています。固有の音楽ではなく、音楽の才があるんでしょうね。あるいは被差別民に許された多くは無い職業のひとつがエンターテイメントであり、生きるために、ってこともあるのかも。


【ロマ差別】


  ハンガリーのロマに関する最近の報道;


  
   
    Hungarians Jailed for Roma Killings 2013 Real Video
    TheCanalize, 公開日: 2013/08/15

      Hungarian men jailed over Roma killings
        Last Modified: 06 Aug 2013 16:39, Al Jazeera English

      Right-Wing Terror: Hungary Silent over Roma Killing Spree
        July 23, 2013 – 07:32 PM, SPIEGEL ONLINE


  Hungary's Roma: Living on the edge
  Last Modified: 12 Aug 2013 17:53, Al Jazeera English


  ロマ差別に関しては、フランスも大ベテラン;


  「ヒトラーはロマを十分に殺さなかった」発言で仏議員の捜査開始
  2013年07月24日 12:52、AFPBB News


  仏政府のロマ人強制送還に「外国人排斥」批判、欧州委も懸念
  2010年08月19日 17:15 発信地:ブカレスト/ルーマニアAFPBB News


『ジプシー』と云うコトバのことなど


  日本語の 『ジプシー』 は、英語の "Gypsy / Gipsy" の音をそのまま使用、その英語の元は "Egipcien (egyptian)" 。また西語の "gitano" は "egiptano" から。いずれも 『エジプト』 が語源;

     Gypsy and Gipsy / Names of the Romani people
     Orígenes / Pueblo gitano


  ちなみに欧州のロマが自分達をどう呼んでいるかは、上掲ウィキペディアによれば;

    


  スペインは "Iberian Kale" となっています。この "kale" はイベリア半島のみならず、ウェールズ・北欧でも使われているのは面白い。で、スペインのジプシーの言葉は、今でも実際に使っている人がいるのかどうかは知りませんが、フラメンコの唄の中には生きています。(最近は使わないかな?);


   Idioma caló

    リンクが充実していそう。例えば;

     VOCABULARIO CALÓ ( A-G)
     VOCABULARIO CALÓ (H-Z)
       このページに貼り付けてある絵の婆ちゃんは、 cantaora gitana である Tía Anica la Piriñaca

    
    


  唄によく出て来るのは −−− calés ('gitanos'), camelar ('querer'), chaval (de chavalé, vocativo de chavó, 'chico', originalmente 'hijo'), gachó (de gadjó, 'hombre'), lache ('vergüenza'), penar ('decir,hablar'), parné ('dinero') 等々−−− 例えばソレアやブレリア等の唄の最後に使われる " --- Ay que te quiero, pero de lache (lachi) no te lo peno." なんか。興味のある向きは調べてみると面白い。

.