遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

翻訳家 山岡朋子さん その96  『ルス』 の照らす闇: アルゼンチン その6

昨年2月28日に始まった裁判の判決:



Visión Siete: Apropiación de bebés: Condenan a Videla, Vañek, Acosta y Bignone, entre otros
TVPublicaArgentinaさんが 2012/07/05 に公開
ビデラへの判決言い渡しは12:18あたりから始まり、50年の宣告は13:48あたりから。


軍政元大統領2人に有罪=獄中の左翼女性から乳児拉致―アルゼンチン
  時事通信 7月6日(金)10時16分配信

   『親子を離ればなれにすることで、反体制思想が後世に受け継がれないよう警戒していたとされる』 って記述には少々違和感を感じます。 実際赤ん坊を奪われた女性はほぼ例外無く出産後獄中で殺害された筈。 だって生かしておいたら離ればなれにされたことが表に出るし、赤ん坊を返せって大騒ぎになるでしょ? 妊婦を処刑することが主目的で赤ん坊奪取はそのついでの副産物であったのか、あっせんのための幼児奪取が主目的で妊婦を殺したのかがわかりませんが、いずれにせよ幼児奪取と母親処刑 (公式には行方不明扱い) は切っても切れない関係にある筈。



Videla fue condenado a 50 años de prisión por el robo de bebes
  Viernes 06 de julio de 2012, Publicado en edición impresa, lanacion.com

   これは、紙のラ・ナシオン紙に掲載された記事そのもの。各々の罪状および刑が列挙されています。Web版記事は以下;


Condenaron a prisión perpetua a Videla en la causa por el robo de bebes
  Viernes 06 de julio de 2012 | 00:31, lanacion.com

   この裁判にあたり被告弁護団は、幼児奪取の事実は認めた上で、命令に基づく組織的なものではない以上、個々のケース毎に実行者の責任を問うべきである、と主張した様です。(それでは容疑者が皆裁かれずに逝ってしまいます) なお冒頭のビデオはここに掲載のもの。



Familiares de bebés robados están satisfechos con sentencia a Videla
  Jueves 05 de Julio del 2012 20:02, El Telégrafo (エクアドル



Tough sentences in Argentina 'stolen babies' case
  06 Jul 2012, AFP.com


Ex-Argentine ruler guilty of stealing babies
  Last Modified: 06 Jul 2012 00:29, Al Jazeera English


Abuelas y Madres de la Plaza de Mayo esperan justicia
  5 Julio 2012, Cubadebate


Videla denies Argentine dictatorship baby thefts
  Associated Press – Tue, Jun 26, 2012 via Yahoo! News




Argentina court begins trial over 'Dirty War' baby thefts
  Tuesday, March 01, 2011 at 8:40 AM ET, JURIST

El robo de bebés en el banquillo de los acusados
  Página12, 1° de marzo de 2011 @ ABUELAS DE PLAZA DE MAYO

Comienza el juicio oral por el plan sistemático de apropiación de menores
  Buenos Aires, 23 de febrero de 2011 @ ABUELAS DE PLAZA DE MAYO

Ex-Argentine despots on kidnapping trial
  Tue Mar 1, 2011 11:27AM, PRESSTV

Comienza el juicio contra el ex dictador Videla por el robo de niños
  BUENOS AIRES, 28 Feb. (EUROPA PRESS)




今回の判決は画期的なもの、と評価する論調が多い様です。でもそれを可能にした更に画期的な出来事は、私が思うに2004年3月24日まで遡り、過去記事 にて紹介の、 ネストルによる謝罪・行動宣言 でした。昨日に続いて山岡朋子さん (横山朋子さん名) 翻訳 『ルス、闇を照らす者』 の 「訳者あとがき」 から抜粋 (文中のリンクは引用者による) しますと;

  • アルゼンチンの デラルア大統領 は今年 (引用者注:2001年) になって、歴史を忘れてはならない、過去の過ちを繰り返してはならない、と国民に呼びかけた。


デラルアよりもはるかに遡って民政移管の最初の大統領 アルフォンシン 以降、コトバが踊るだけで人権弾圧の糾弾が遅々として進まない状況を打破したのが ネストル、在任 2003年5月25日 – 2007年12月9日、2010年10月27日没 であったと思います。彼無くして今回の判決はあり得なかったでしょう。



−−− ビデラはじめ当時の軍政トップは皆間違いなく獄死するでしょうが、 「アカから国を守る」 と云う自分の行動は間違っていなかったと信じている筈だし、アルゼンチン国民の中にも (内心) それを支持する声も少なくは無いでしょう。チリのピノチェに対する支持も然り。日本でのアホダラ教信者を観るまでも無く、どんなに狂信的であっても考えることは自由だし、そもそも別の考えを押し付けることは不可能。でも、それを行動に移すのは別問題。自分の信条から不当に他人の権利を侵害することは許されないし、国家が不当に国民の権利を侵害することも許されない。