遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

里親の難しさ、 子どもに対する虐待

このところ以前にも増して子どもに対する虐待の報道が増えている様で、非常に気になっています。以前は闇に葬られていたニュースが表に出るようになったのか、虐待が増えているのかは知る由もありませんが。虐待そのものが絶対に許されない行為であるし、虐待を行った者には結果責任を取らせなければなりませんが、そこに至る経緯やら引き金となった事情には色々ありそう。虐待を行った者を断罪して解決する問題では無い様です。


私自身は高校生になっても親父にぶん殴られていましたが、その時も今になって思い返しても、虐待と思ったことは一度もありません。ケガなどしたこともアザが出来たことも無いし、ぶん殴られるだけの理由が常にありましたから。自分が親 (養父ですが) になってからは手を出したことは一度もありませんが、出しそうになったことは少なからずあるし、激怒したことも一度や二度ではありません。私は絶対に虐待などしない、と言い切れる親がどれだけいるか。愛するが故の愛のムチなんて殆どキレイ事であって、怒る時は本当にアタマに来ていることが多い筈。


加害者と虐待される子どもとの関係も単一ではなく、加害者が実の親・子連れの親の新しいパートナー・養父母・里親など家族内のこともあれば、加害者が教育者や保護者などの様に家族外のこともあるでしょう。虐待の形態も育児放棄・罵倒・傷害・傷害致死やら性的虐待と様々。加害者が家族外、および性的虐待のケースは除けば、即ち家族内でのニグレクト (シカト)・暴力系の虐待には共通点が多いのでは。


実の子に対してでさえ虐待は有り得るのですから、まして 「血の繋がっていない」 、かつ相当の事情があって実の親から引き離された子どもに対する接し方は、経験しなければわからないものがあるでしょう。以下、震災孤児の件やら里親制度の件を中心に幾つか記事を紹介しますが、実の親にとっても参考になるところ大と思います;


里親:理解と支援を…首都圏有志ら緊急集会開催へ
  毎日新聞 2011年8月24日 15時00分


  −−−「悪い子でないとわかっていても、里親は心底怒りをかきたてられることがある。よほど気持ちを制御できないと難しい」 / 特に、「ここは安心できる」と感じた子が、落ち着いてからが重要という。実親の病気や養育放棄などでそれまで抱えてきたつらさを、外にさまざまな形で表すようになるからだ。 / 「こうした理解がないと、里親は子を客観的に見られない。支えも欠かせない」。首都圏の男性はそう指摘し、集会を企画。一般にも公開して、支援を求めたいと考えている。 (記事終わり、引用終わり)

具体的な集会の実施については確認出来ておりません。この企画のきっかけとなったあまりにも有名な事件については、加害者を裁く様でイヤですから改めて紹介はしません。ただし、この趣旨での集会はこれが初めてではありません。例えば;

11・7 里親虐待事件を考える緊急集会 / 2009年11月7日(土)14時〜17時
  かんさい里親ネット 主催


宇都宮事件を考える会 HP

ちなみに、里親制度 (以下、一部抜粋)養子縁組制度 は似て非なるものの様です;

−−−通常の親権を有さずに児童を養育する者は、個人間の同意の下で児童を養育する「私的里親」と、児童福祉法に定める里親制度の下で、国と地方自治体から児童を養育するに充分な養育費と里親手当てを受給して、児童相談所から委託された要保護児童を養育する「養育里親」「専門里親」などがある。また、児童養護施設などが独自に採用してる制度で、児童養護施設の収容児童を週末や夏季、年末年始のみ預かる者を、「週末里親」「季節里親」などと呼ぶ。 (中略)


養子縁組は、血縁関係とは無関係に親子関係を発生させる制度で、奈良時代に法制化されて以降、現代まで途絶えることなく明文化された法制度として存在する。氏姓制度や家父長制度の確立に伴い、養子縁組は家制度を維持するため、あるいは政治的意図の下に行われる性質のものであるため、強制力のある法として明文化する必要があった。 / それに対し、里親を定義づける法律は制定されておらず[2]、里親は社会通念上の概念、もしくは社会慣習の一形態に過ぎない。 / 里親慣習は、里親と里子の間に親子関係が発生しないこと、里子は家督や財産などの相続権を有さないことから、養子縁組のような明文化された法制度に比べて、より緩やかな社会慣習として市井の中で発展した制度といえる。 (以下略、引用終わり)


養子縁組よりも気軽に見えますが、他人の子どもを育てると云う観点からは、その責任の重さは同じ筈。でも制度上の不備やら問題点をあげつらいだせばキリがなさそう;


里親から里子への児童虐待〜搾取される子供たち〜

   このサイトの狙うところがいまひとつわからない。 『やさしい気持ちでご覧になってください。』 とあるが、サイトの題名と、優しい気持ちなど吹っ飛ぶそのコンテンツからして犯罪の周知が主目的か?? 理解に苦しみます。また、 『里子には十分な衣服も食事も提供できるだけの費用が公費で出ています。』 の記述を見る限り、問題の根本原因を殆ど理解していない。吊るし上げサイトとしか思えない−−−



311震災のみならず、先の阪神大震災などでご家族を失われた子どもさんへの支援は様々な形で行われています。その中に、件の里親制度も含まれます;


震災遺児445人に 県まとめ、孤児は91人
  2011/07/30、岩手日報 WebNews


  里親の力生かして 震災孤児113人に
    2011/04/23 13:01、神戸新聞

  全国里親会ホームページ

  (施設で暮らす子どもに里親家庭を}考えるための資料 リンク集



里親制度には、養子縁組の様に相続やら親権などの問題が発生しない、行政から幾ばくかの援助がある、等と云う意味でのメリットはあります。誰も虐待することを目的にこの制度を利用するとは思えません。だからこそ単なる善意や優しさ、気負いだけでは不十分。自分の子どもを育てることがどんなに難しいことか少しでも経験があれば、他人の、かつ何らかの傷を負った子どもを育てることはそれ以上に、あるいはそれとは異質の難しさがあることを認識するのは、難しくはないでしょう。


冒頭に紹介した記事中の里親の男性が 「徹底的に叱っても、これでもか、と限界を試すようだった」 と仰っていますが、自分の子でも同じ、諦めず気長に子どもと向き合うしかないのでしょう。それでキレたり 「煮詰まったり」 しないためには、子どもの気持ちになって考えて見るしかないのでは。赤ん坊は泣くことで要求を伝えますよね? 寒い、暑い、ハラ減った、おむつ取り換えて、云々。少し大きくなるとコトバで表現し始め、更に大きくなると間接的な行動でそれを表現することがありますね。オトナも然り。ただしその要求が、本人でさえ明確に認識していない内面の傷に起因するものであったりすると、専門家の助けが必要でしょう。


行政の支援が不十分なのは、何もこの制度に限ったことではありません。その現状を容認したくはありませんし制度を充実させるべきですが、限界があるのは致し方無い。支えとは社会全体での支えを意味しますから、周りの理解 (これが出来ない向きは、最低限差別しないこと) も必要。親だけではなく、社会が子どもを育てるのが健全な姿と思います。もし今自分の子どもが孤児になったらどんな環境に置かれて欲しいか、と考えてもいいでしょう。保険金なんて、さして役に立たないと思いますよ。


更に云うなら、子育ては何らかの報酬を求めてするものではないと考えれば、育ててくれることへの理解やら感謝を要求するのも多分間違い。私 (親、養親、里親など) がこんなに苦労しているのに何故わかってくれないのだ? なんて考え方そのものに無理がある。自分が子どもの頃、親に感謝なんてしてましたか? 自分が親になってはじめてわかる、言い換えれば、それまでは逆立ちしてもわからないことって沢山ありますね?


宗教をお持ちなら、子どもは誰であれ、神様 (仏様でも可) から見込まれた各々の 「親」 が預かって育てていると考えればよいのかも。無宗教でも、男女の性行為は自分達の行為ですが、受精卵から子どもが産まれるまでのプロセスには、特に男性は全くノータッチでしょ? 「授かりもの」 とはよく言ったものです。


里親は不十分とは云え社会的に認知された制度ですから、緊急集会などでのアピールなどは非常に有効でしょう。実子や養子に対する虐待は、 過去記事 にて紹介の通り。それでも救い切れないのは、新しいパートナーによる連れ子の虐待かも知れません。手遅れになるまで表に出ない性格のものでしょうから−−−