遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

『核抑止力に依存せざるを得ない国際社会の現状』 と云う認識の矛盾

【長崎原爆の日に関する報道】


    • 各々、


      "First Into Nagasaki: The Censored Eyewitness Dispatches on Post-Atomic Japan and Its Prisoners of War [Paperback]"
      Publisher: Three Rivers Press (December 31, 2007)
      Language: English
      ISBN-10: 0307342026
      ISBN-13: 978-0307342027


      ナガサキ昭和20年夏―GHQが封印した幻の潜入ルポ [単行本] 』
      出版社: 毎日新聞社 (2007/07) (絶版−−−まったくもう)
      ISBN-10: 4620318221
      ISBN-13: 978-4620318226
      • 書籍に関する、上掲 Wikipedia からの抜粋;


        In the foreword to his Weller's final book, First Into Nagasaki: The Censored Eyewitness Dispatches on Post-Atomic Japan and Its Prisoners of War, Walter Cronkite wrote:


        "This is an important book—important and gripping. For the first time in print we can read the details of the nuclear bombardment of Nagasaki, Japan, as written by the first American reporter on the terrible scene ... [George Weller's] reports, so long delayed but now salvaged by his son, at last have saved our history from the military censorship that would have preferred to have time to sanitize the ghastly details ... Also delayed by MacArthur's censorship were Weller's dispatches from his visits to American prison camps [w]here he uncovered the Japanese military's savage treatment of their American prisoners ... There is so much in this volume that we never knew or have long forgotten. This volume of the last generation's history is an important reminder, a warning to inspire civilian vigilance."—Walter Cronkite
    • Japan's apology for Hiroshima survivors
      Mon, 06 Aug 2007 06:24:05 GMT


      ん、ん??と思いましたら、最後の記事は2007年のもの。"Japanese Prime Minister Shinzo Abe has apologized over a former defense minister's suggestion that the 1945 US nuclear attacks were justified. " −−−


菅が広島原爆の日式典の後行った発言が非難されています。その認識もさることながら、よりによって慰霊の日に核兵器を肯定したその無神経さは政治家としての資質を疑うに十分。加えて演説の中身や核の傘発言の中身も、昨年とほぼ同じ。マスコミからこのタイミングでその質問が出ることはわかり切っていた訳で、麻生と同じ答えをした菅の所属政党ってどこでしたっけ? 結局何も考えず、外務官僚の作文丸読みしただけ?

菅首相:核巡りジレンマ 埋まらぬ被爆地との溝
2010年8月9日 21時27分 更新:8月10日 1時35分、毎日jp(毎日新聞)


−−− 9日昼過ぎ、長崎市での被爆者団体との意見交換では、長崎原爆遺族会の正林克記会長が「慰霊の日に核兵器を肯定し、みんなが泣いている」と非難の口火を切った。長崎県平和運動センター被爆者連絡協議会の川野浩一議長は、広島で昨夏、麻生太郎首相(当時)が「核の傘」の必要性に言及したことを引き合いに「麻生さんの発言と全く同じだ」と憤った。首相は「核の抑止力が必要ない社会をつくっていこうという意味で受け止めてほしい」「核兵器がこの地球上から一切なくなると、抑止とか考える必要がなくなる」などと釈明を繰り返すしかなかった。


 ただ、その後の記者会見で首相は「北朝鮮の核開発を含めて、残念ながら、まだ核抑止に頼らないで済むに至っていない。将来なくしていきたいが、現在はそう考えざるを得ない」と、核抑止力に依存せざるを得ない国際社会の現状に理解を求めた。


 土山秀夫・元長崎大学長は「旧来の自民党政権と何ら変わらない発言だ。外務官僚の作文をそのまま述べたのではないか」と批判。非核三原則法制化の「検討」についても「本当であれば、被爆地として歓迎する。だが、単なるリップサービスと分かれば、被爆地は許さないだろう」とくぎを刺した。


 政府と被爆地の溝は埋まらない。

  • 麻生の広島での記者会見:昨年2009年8月6日
    (昨年の記録より。ニュースソースは多分Yahoo?)


    −−−この中で麻生総理大臣は、記者団が「日本はアメリカの『核の傘』に守られているなかで、どう核軍縮に取り組むのか」と質問したのに対し、「核が世界で一斉に、ある日突然なくなるならいいが、通常では考えにくい。誰かがやめたら、相手もやめてくれるという世界ではないと思っている」と述べました。そのうえで、麻生総理大臣は「核で他国を攻撃しようという国が隣にある。北朝鮮の核ミサイルは日本にとって明白な脅威だ。それに対して、日本は、核で抑止する力を持つアメリカと同盟関係を結んでいるという現実を踏まえる必要がある」と述べ、北朝鮮の核の脅威に対抗するためにはアメリカの「核の傘」が必要だという認識を示しました。


国防に関する考えは様々あるでしょう。現在、まことしやかに? 話題にのぼる 「核の傘」 とは、 核抑止 - Wikipedia によれば、 『同盟国や第三国に対する核攻撃を抑止すること』 を意味します。英語版ウィキペディア Deterrence theory - Wikipedia では、 "Deterrence theory is a military strategy developed during the Cold War. It is especially relevant with regard to the use of nuclear weapons, and figures prominently in current United States foreign policy regarding the development of nuclear technology in North Korea and Iran." と説明されています。元々 「抑止」 は通常兵器による勢力均衡を意味していた筈ですが。


日本が他国と決定的に違うところは、 (外交無策であること以外には) 抑止力の手段として随分気軽に扱われる核兵器の実際の被害国であること。毎年何故広島・長崎の慰霊祭を行っていますか?おかしな言い方とは思うが、被爆国としての 「道義的責任」 とは何ですか? 『安らかに眠って下さい、過ちは、繰り返しませぬから』 の碑文は何を意味しますか? 極端な言い方をしますよ、あってはならないことですが、もしまた被爆することになったとしても、その仕返しに戦争あるいは核兵器と云った手段に頼りません、たとえ敵であっても人間に対する広島・長崎の惨劇は決して繰り返しません、との誓いと私は解します。そこまで徹底する覚悟で行動して初めて被爆国としての発言力が認められるのであって、そのためには戦争・紛争の芽をあらゆる方法で摘むことが必要でしょう。


米韓による濡れ衣の可能性の高い哨戒艦沈没事件 *1 に加えて合同訓練などのあからさまな挑発行為に対し、DPRKは衝突を避ける様考慮はしたものの砲撃し返した様ですし、中国も反発しています。 「朝鮮半島緊張」 などと報道されていますが、日本が米韓の挑発行為の尻馬に喜々として乗ることが正常とはとても思えない。DPRKによる核が脅威だ、と認識していながら挑発するのは、自殺行為ではありませんか? DPRKとの間には拉致問題・戦後補償など未解決の問題がありますが、互いに不信感・嫌悪感を抱くのは仕方が無いとしても、日本の場合はアメリカと違って、 「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」 との縛りがあることを忘れてはならない。だから他国に戦争をしてもらおう、核兵器で敵をせん滅してもらおうなどもってのほか。アジアの中でも世界の中でも、そのずるさはとっくに見抜かれています。


結局 「核の傘」 など、アメリカがその軍事的優位性を正当化するための詭弁に過ぎません。「核兵器による抑止力」 など認めている限り、核兵器は廃絶される訳がない。単純に考えてご覧なさい、最後の一発 (あるいはロット) は誰が持って廃棄するのですか? おまけにそのタワゴトは、核未保有国が開発を行う十分過ぎる程の動機。


科学は進歩していますし人間は強欲ですから、核兵器以上に破壊力のある兵器もそのうちできるでしょう。そう考えると核兵器のみならずその様な 「大量破壊兵器」 の研究開発そのものにも歯止めをかけないと、原爆同様きっと誰かがその最初の犠牲者になる。加害国は言うまでもありませんね。


『核抑止力に依存せざるを得ない国際社会の現状』 がもし本当にあるのだとしたら、それは他ならぬ被爆国日本が自ら作りだしていると認識すべきでしょう。核武装するにしても徹底して反核反戦の方向へ行くにしても、余程の覚悟とエネルギーが無いと出来ない。間もなく終戦記念日を迎えますが、国内で徹底的に議論しない限り被爆者・戦没者の霊は慰められないだろうし、イベントも日本国憲法も風化・形骸化するだけ。さて、どっちへ行きましょうか? それとも不況だからまた先延ばしにしましょうか?


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*1:田中宇さん http://tanakanews.com/ 有料記事 『米軍はいつまで日韓に駐留するか』 が参考になります。