遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

マグニチュード11、 震度8超級の 巨大地震その2: 日本の資産はどうなる?

8月2日は恐らく余裕を考慮した期限でしょうし、隠しポケットやら誤魔化し・ウルトラCもあり得ますから、まだ3日プラス1週間程度は猶予がありそう。財政赤字削減の空約束が守られないままの状態で上限を増やすことには当然抵抗があり、また最悪デフォルトでも共和党に責任を押し付けて自分は2012大統領選挙戦を有利に戦える、との我が将軍様のお気楽な思惑は裏目に出るかも。


いずれにせよ、明日月曜日以降市場は相当神経質に動くでしょうから、今のうちに (1) 日本の抱える米国債流動性 (当記事) および (2) アメリカは戦争に一体幾ら注ぎ込んでいるのか (別記事、「その3」) について、調べて整理したこと・思うところを吐き出しておきます;



【日本国 = 日本政府 ではないっ!】


  最初に、非常に誤解の多いこの点を明確にしておきましょうか。『日本は借金漬け、国民1人あたりxxx万円の借金』 と云う報道や記事を見たことがあるハズ。これは無知と云うより悪意のあるミスリードと云えます。私はエキスパートではないし、その議論をすることが当ブログ・記事の意図では無いので、三橋貴明さんの大変分かり易い、秀逸な記事へのリンクを紹介しておきます。 (旧いのですが、最新のものもあるかも知れません);


   第一回 日本の財政問題に関するマスメディアのミスリード(1/3)
     2009/05/26 (火) 13:12
   第一回 日本の財政問題に関するマスメディアのミスリード(2/3)
     2009/05/27 (水) 11:45
   第一回 日本の財政問題に関するマスメディアのミスリード(3/3)
     2009/05/28 (木) 11:00


 で、上掲記事から日本国のバランスシートを紹介しておきます。 (同氏の別サイト にもアリ)


   


 ご覧の様に、上掲バランスシートで 債務超過 となっている 「日本国の」 経済主体は、政府・金融機関・非金融法人企業(一般企業)の3つであり、 『借金漬け』 と云うのはそのうち政府だけの、おまけに負債しか見ていないと云う事。家計・民間非営利団体NPO) も含め全経済主体を合わせると、日本国としては債務超過になんかなってません。それどころか、純資産額 (上掲バランスシートでは243.5兆円) ではまだ世界一の筈です。捨てたものじゃない。 (下述)




【米 (政府) 財政赤字のこと】


 米財政赤字の何が問題か
   2011年7月29日  田中 宇(有料記事)より抜粋


   −−−米政府の累積財政赤字は約14兆3000億ドルで、米国のGDP(14兆1200億ドル)とほぼ同額だ。日本の累積赤字(1100兆円)がGDPの2倍以上であるのと比べると、大したことがない。 (中略) 日本国債の95%は、日本政府の言いなりになる金融機関を中心とする国内勢が買っており、国債が売れ残る事態が起こりにくい。米国債の買い手の半分は米国外の投資家で、米国債やドルが国際信用を失うと国債が売れ残る。 (以下略、引用終わり)
   

    上掲記事中の 「日本の累積赤字」 は、日本国政府の = "Public" を指します。


   
   出典: National debt of the United States - Wikipedia


 (日本国政府の) リアルタイム財政赤字カウンター 11
   Last Modified 2011/04/01 15:42

    1141兆円なんですって。これも世界一でしょうね。


   



【日本の対外的なバランスシート】


  上掲三橋さん記事中にもある様に、 『「国家の純資産(または純負債)」と「対外純債権(または純債務)」はイコール』 になります。


 以下全てのベースを揃えるため、昨年2010年 (平成22年) 末時点での数字とします。311地震前かつUS債務危機深刻化前ってことになります;


 企業の決算などでお馴染みのバランスシートは、左側「資産」と右側「負債 + 純資産 (資本)」がバランスしているのでそう呼ばれます。大雑把に言えば、ある時点における、右側が資金の調達状況、左側がその運用状況を表します。更に右側については、「負債」は借金の様に返済義務のあるもの、「純資産 (一昔前は資本と呼ばれていた)」は出資の様に配当義務のあるものおよび内部に蓄積された利益を表します。その意味で、「負債」を他人資本、「純資産 (資本)」を自己資本と呼んだりもします。


 平成22年末本邦対外資産負債残高の概要
   平成23年5月24日 財務省

   


 主要国の対外純資産、為替相場の推移

   


 建値通貨別・証券種類別残高(資産サイド)

   




【日本国の外貨準備】


 外貨準備 - Wikipedia

   −−−金融当局は、対外債務の返済、輸入代金の決済のほか、自国通貨の為替レートの急変動を防ぎ貿易等の国際取引を円滑にするために、外貨準備を行なう。外貨準備は「国民経済の貯金」などとも呼ばれる。ただし、あくまで主目的は為替変動への準備であり、外貨準備高(外貨の蓄積)の大きさが対外資産高の大きさを表しているわけではないことには注意を要する。 (以下略、引用終わり)


 [各国の外貨準備高一覧 - Wikipedia

    日本の残高は世界第2位、世界TOPの中国の半分以下かつ、世界第3位のヨーロッパ (EU諸国とECBの合計)の倍強。「為替変動への準備」 と云う主目的からすると、異常に大きい様な。


 外貨準備等の状況(平成22年12月末現在)
   平成23年1月11日 財務省


   
   (百万ドル単位)


   MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES


    2010年末日本保有米国債残高は "882.3 billions of dollars" ですから、外貨準備総額 1,096,185 百万ドルの8割が米国債ってことに。なお円ドルレートを上掲資料より \81.51 / US$ とすれば、昨年末米国債保有残高は約72兆円。上掲証券投資総額 272.518 兆円の約1/4強に相当します。


 外貨準備等の状況 / 財務省




米国債の位置づけ】


 米国債 - Wikipedia


  『一般国民、地方などの自治体、民間金融機関が米国債を買うのは、 それが最も安全な資産だからということではなく、米国債市場がいつでも売り買いができる世界で最大の債券市場だからだ。売りたいと思えばいつでも売れて、その価格がどれくらいかが瞬時に分かる米国債市場に代わるマーケットはない のだ。』 (WSJ日本版記事 より抜粋) と云うのが多分正しい観方でしょう。(「安全」なんて言っていませんし)


 −−−である筈なのに、巷では 「日本再生の資金は米国債売却で捻出できる――英メディアが見た大震災下の日本(1/4)」 やら 「一石七鳥の米国債売却による経済復興政策実現」 やら 「「米国債を売却しろ」は無意味か?否、それは日本への期待。」 など様々な議論があります。何かおかしくありませんか? 『いつでも売り買いができる』 なら、そもそも議論の意味さえない筈でしょ?


   米財務長官「復興のための米国債売却ない」
     2011.3.16 08:46、msn産経ニュース


 この発言が債権者である日本の当局のものならまだわかるが、債務者のものであることが異常。こんな馬鹿な発言がまかり通るのは、日本がこの債務国に隷属しているから、と考えて当然。日本の対外純資産251兆円の約3割 (上述の72兆円) に相当する米国債は、それなりの運用益は産んでいるかも知れないが、実際には市場で換金出来ない、流動性の極めて低い資産では?


 おまけに今回のゴタゴタで、米国債格下げも現実味を帯びて来ました。現在の格付けの仕組みは、米国系3大格付け機関による、米国に甘くEUはじめ他地域に厳しい露骨なお手盛り


   ムーディーズ、ギリシャ国債3段階格下げ「事実上デフォルト」
     CNN.co.jp 7月26日(火)11時21分配信

   格付け改革、G20で議論加速を=EU欧州委が呼び掛け
     7月11日(月)23時00分配信 時事通信 @ Yahoo!ファイナンス


 おまけに昨年、米議会が設置した金融危機調査委員会の公聴会で、大富豪であり格付け会社の大株主でもあるバフェット氏より 『「格付け会社は寡占状態だ」と指摘、競争の欠如によるずさんな格付けの横行が2008年の金融危機につながった』 と糾弾されています。 アメリカは格付け機関を通じて、ドルより先にユーロを潰そうとしているフシがあります。だからこそ、少なくとも表面上公正さを装うため、いずれ米国債の格下げに踏み切らざるを得ないとの観方が主流。


 格下げされても大した被害がないという予測もありますが、アメリカ覇権の象徴? でもある 「基軸通貨としてのドル」 にとっては致命傷になり得ます。前例が無い激震だけに、何が起きるかわからない。市場はリクツではなく感情で動く側面もあるし。で、再び日本の 「抱える」 (自由に処分出来ない以上、 「所有」 とは呼べない) 米国債に目を向けると −−− 換金出来ないなら評価減 (市場価格変動 + ドル安) のみ、実質何の実害も無いのかも知れません。でも何だか不良債権っぽくありませんかね? 紙クズとまでは言いませんが。


 親ガメがこけると子ガメもこける、一蓮托生とはこのことです。事態がどの様に展開しようと、植民地政府は将軍様と心中するしかありません。世界一の対米債権国であるお隣さんとは対照的。



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