遊蕩爺の漂浪メモ

『翻訳家 山岡朋子ファンクラブ初代会長の日記』 より移行

気になる記事: アメリカ様下院での 子供連れ去りによる日本非難・対策要求決議

カネで動くアメリカ様議会なぞ●● (2文字伏字) 喰らえですが、最近の決議で気になる点が;



http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100930-00000037-jij-int
  子供連れ去りで日本非難=対策求め決議採択―米下院]
  時事通信 9月30日(木)9時24分配信
  −−− 決議は、日本への子供の連れ去りが人権侵害で米国内法や国際法違反に当たると指摘。日本政府に対し、米政府と協力してこれまでに連れ去られた子供の居場所を割り出すとともに、事例解決のための取り決めを結ぶよう求めた。


LEGISLATIVE DIGEST: H.Res.1326
  United States House of Representatives (アメリカ下院公式ホームページ)

  EXECUTIVE SUMMARY より抜粋:

  •“Calls on the Government of Japan to include Japan's Ministry of Justice in work with the Government of the United States to facilitate the identification and location of all United States minor citizen children alleged to have been wrongfully removed to or retained in Japan and for the immediate establishment of a protocol for the resolution of existing cases of abduction, interference with parental access to children, and violations of United States court orders;


  [http://www.usfl.com/Daily/News/10/05/0506_010.asp
    子供連れ去りで決議案提出 米下院、日本に対応要求
    更新2010年05月06日 10:59米国東部時間, U.S. FrontLine



昨年のことですが、こんな事件がありましたっけ;



母は子を連れて帰国、奪い返そうとした父は逮捕 日米の視点――JAPANなニュース
  2009年9月30日(水)11:35, goo ニュース

   ただしニュース中でも明記されている通りこのアメリカ人男性は4年前日本に帰化 *1 して日米二重国籍となった様ですから、相当捻じれたケース。コトの顛末は後述の 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約 - Wikipedia にも記載されています。こんなアホなアメリカ人とアメリカの仕組みに愛想が尽きたのでしょうが、アメリカ裁判所での取り決めを無視したのがまずかった。


Father Arrested in Japan Underscores Need for Reforms
  Washington, Sep 30, 2009, Chris Smith

この議員さんによって上掲決議案が提出され、今回採択に至ったワケで;

Rep. Chris Smith, Introduction of Japan Resolution
  Press Conference May 5, 2010



日本に対して 「ハーグ条約*2 の批准および国内関連法規の整備を求めるなど、まあ順当な決議かなぁと思えますが、先日紹介した山崎淑子さんのケース *3 を思い出すと 『言われるがままの犯罪者狩り』 の危険性は無いのかが心配。杞憂かも知れませんが、子どもの居所調査とは必然的にその親の調査でもありますし、居所が判明したとしてもハイそうですか、と解決はしないでしょうから;

Tweetまとめ 平和を訴えた日米両国の勇敢な女性二人 – Web Iwakami


蛇足ながらこの中に、


『三ヶ月の拘置のあと、彼女 (注:山崎淑子さん) は米国の官憲に引き渡され、米国製の手錠、米国製の腰縄をつけられて、米国に護送された。犯罪人引き渡し条約により、米国で訴追された日本国民は、日本政府に守られることなく、米国へ送られてしまう。その逆はない。日米地位協定という不平等条約のためである。』


とあります。念の為再確認しますと、山崎さんがアメリカに送られたのは日米犯罪人引き渡し条約 (下記) によってであり、 日米地位協定 - Wikipedia *4 はあくまでアメリカの軍関係者 (正確には合衆国の軍法に服するすべての者) にしか適用されない筈。従って、理論的に 「その逆はない」 とは断言出来ないのでは?


日本国内でも、配偶者が子どもを連れて出て行ってしまった・協議離婚したものの親権者 *5 が子どもに会わせてくれないケースは少なく無い筈。日本でだってこの様なケースは確かに誘拐にはならないまでも違法と思いますが、裁判まで持ち込まれることが少ないのか? これが国境をまたいだのが今回問題となっているケースでしょう。保護に値しない 『未成年者奪取者』 もいるのでしょうが、中には、例えば性的虐待を含むDV被害に遭ったものの合衆国内での裁判に不慣れ・金銭的な問題・コトバの問題など不利な要素が多く、逃げるように子どもを連れて帰国したケースもあるでしょう。合衆国内で然るべき手続を踏んでいない負い目はあるものの、それを責めるのは酷な気がします。


参考まで、インターポールの指名手配者検索画面 Internet / Home - INTERPOL から検索してみますと、条件の指定が難しいのですが;


条件1: Offence (List): Abduction Of Minor By Parent (リストから選択)
    Arrest Warrant Issued by: United States
    他: 全て (Default)
    結果: 該当無し

条件2: Offence (List): Kidnapping Of Children (リストから選択)
    Arrest Warrant Issued by: United States
    他: 全て (Default)
    結果: 該当無し

条件3: Offence (List): Children (Free Word)
    Arrest Warrant Issued by: United States
    他: 全て (Default)
    結果: 94名

条件4: Nationality: Japan
    Offence (List): Children (Free Word)
    Arrest Warrant Issued by: United States
    他: 全て (Default)
    結果: 2人

条件5:Nationality: Japan
    Offence (List): Children (Free Word)
    Arrest Warrant Issued by: United States
    他: 全て (Default)
    結果: 4人 (上掲2人を含む)

条件6:Nationality: Japan
    Arrest Warrant Issued by: United States
    他: 全て (Default)
    結果: 12人 (上掲4人を含む)

条件7:Arrest Warrant Issued by: Japan
    他: 全て (Default)
    結果: 該当無し (日本の警察は利用していない?)


人身交通事故加害者 −−− 平たく言えばひき逃げ犯 −−− が国外へ逃亡してしまい、日本が犯人の居住国に対して代理処罰を求めたことはありますね。判決までは確認出来たものの実際に服役しているかは疑問ですが。 米下院が問題視している 「日本人による子ども連れ去り」 の大半は、有罪判決・逮捕状が出ていないケースでしょうか。誘拐の成立要件は調べていませんが、それが成立していれば、山崎淑子さんを引っ張った日米犯罪人引き渡し条約で引き渡しを請求出来ると思われますが。上掲 母は子を連れて帰国、奪い返そうとした父は逮捕 日米の視点――JAPANなニュース のケースなど、どう決着するのでしょうか?




犯罪人引渡し条約 - Wikipedia

  −−−2007年現在、日本が犯罪人引渡し条約を結んでいる国はアメリカ(日米犯罪人引渡し条約、1980年発効)と韓国(2002年発効)の2ヶ国だけ−−−


日米犯罪人引渡し条約 - Wikipedia
  条文:
  日本国とアメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約


  概要

  日本とアメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約は、犯罪の抑圧のため、両締約国の法令により死刑又は無期若しくは長期一年を超える拘禁刑に処するものについて外交ルートを通じて行われる。 (中略) 実際の引き渡し手続きは逃亡犯罪人引渡法によりなされる。また、逃亡犯罪人引渡法において条約により決定される事項は日米の間では、この条約による。

  引き渡される犯罪 (抜粋)

  略取、誘拐又は不法な逮捕若しくは監禁に関する罪

  問題点

  引渡しは、引渡しを求められている者が被請求国の法令上引渡しの請求に係る犯罪を行つたと疑うに足りる相当な理由があること、又はその者が請求国の裁判所により有罪の判決を受けた者であることを証明する十分な証拠がある場合に限り行われるとされるが、それに対して引渡しを要求された者が防御する時間も十分ではなく 、国内の審査も引渡しの要求に対して一度限りでかつ十分な審査が為されない為、無辜の者が有無を言わさず引き渡される場合があるとされる。

  被請求国の行政当局は、引渡しを求められている者の引渡請求の裏付けとして提出された資料がこの条約の要求するところを満たすのに十分でないと認める場合には、自国の裁判所に当該引渡請求を付託するかどうかを決定する前に請求国が追加の資料を提出することができるようにするため、請求国に対しその旨を通知することができるが、日本国においてはその資料が十分か否かを審査する該行政当局には、その機関がないとの批判がある

  条文: 第五条

  被請求国は、自国民を引き渡す義務を負わない。ただし、被請求国は、その裁量により自国民を引き渡すことができる。


[逃亡犯罪人引渡法 - Wikipedia
  条文:
  http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=4&H_NAME=&H_NAME_YOMI=%82%a0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=S28HO068&H_RYAKU=1&H_CTG=11&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1



わかりにくい法律ですが、山崎淑子さんのケースは生きた教材でありかつよい教訓です。今回の米下院決議で要求されているハーグ条約は来年批准される見込みですから、周辺関連法規も併せて見直されるでしょうが、事実関係が十分確認出来ない状態でアメリカ様から言われるがままに国民を売り飛ばす様なマネは繰り返されてはならない。従って、問題の多い日米犯罪人引渡し条約・日米地位協定もセットで見直すべきであるし、国際養子縁組に関するハーグ条約の批准も検討されるべき。また子どものことを考えるのであれば、親による子に対する虐待に対処する法制度も、親権まで遡って真剣に考える時期ですね。 「親」 と云う肩書きを持つだけの犯罪者・配偶者からの 「しつけです」 「反省しています」 「これ以上介入しないで下さい」 の言葉だけでみすみす犯罪をエスカレートさせ、最悪の事態を招くまで何も出来ない今の仕組みは、どう考えてもおかしい。


(とりあえずこの状態でアップしますが、どうあがいてもこの件スッキリまとまりません−−−)

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